ウォーターフォール20年から踏み出す、アジャイル開発の第一歩
この投稿は、2025年JINSのアドベントカレンダー6日目の記事です。
1. はじめに
2025年9月にJINSに入社したITデジタル部の小野寺です。
鉄道系の情報システム会社から外資系のSIerを2社経験して、JINSで4社目になります。
オンプレのインフラ開発、運用がキャリアの9割を占めていて、前職はシステム運用の経験をベースにITILに準拠したITSMプロセス導入のコンサルティングをしていました。
今までのインフラ開発のキャリアではウォーターフォール開発しか経験しておらず、JINSに入ってから、初めてアジャイル開発に携わることになったため、3か月弱ですが、振り返りを踏まえ、取得したてのCSM 認定スクラムマスターとして、ウォーターフォールとアジャイル開発について、記事にまとめます。
2. 20年間ウォーターフォールで働いて感じたこと
私が長年携わってきた鉄道システムのインフラ開発では、社会インフラであるため、最初に予算を確定し、計画を綿密に立てて進め、1つのプロジェクトが5〜6年に及ぶことが一般的でした。また、インフラはオンプレ中心で、サーバー構成やネットワークの設計をあらかじめ固める必要があり、途中で柔軟に変えることは非常に難しい状況でした。こうした背景もあり、ウォーターフォールでは、
- 要件を最初に決め切ることが前提
- 途中変更は極力避ける
- 計画通りに進めることが最優先
といった進め方が自然と定着していました。しかし、5〜6年続く長期プロジェクトでは、時間の経過とともに当初の前提と実際の状況が徐々にズレていくということが常に起こっていました。
そんな中、インフラ構成の見直しがしたくても、オンプレでは大掛かりになり、現場のニーズが変わっても、計画通りに進めることが優先されるため、「計画を守ること」と「現場に適したシステムにすること」のバランスをどう取るか、というのが、長年ウォーターフォール開発に携わってきた私が直面し続けてきたテーマでした。
3. アジャイルを体系的に学ぶ
アジャイルはこれまで、独学で学んできましたが、長くウォーターフォールでキャリアを積んできたこともあり、まずはスクラムの原則や価値観を正しく理解する必要があると考えました。転職したばかりで、プロジェクトに深く関わる前の時間があったので、すぐに研修を受けることを決めました。まずは、「守破離」の“守”を身につけること、最初から我流で取り組むと習得に時間がかかるため、まずはフレームワークとなる土台をしっかり学ぶことが上達への近道だと考えています。
研修はいくつかある中から Agile Business Institute を選びました。検索して最初に見つかった研修のホームページを確認し、内容が良さそうだったことと、スケジュールが合っていたことが理由です。結果、この研修を選んで、多くの学びを得られたので満足しています。
研修の中で、独学の範囲では得られなかった新たな気づきもありました。特に以下の3点は印象に残っています。
- クロスファンクショナル(機能横断型)なチームを作ること
メンバー同士がスキルや知識を教え合い、いずれは1人で複数の役割を担える状態を目指す - 少人数でチームを組み、調整を減らして責任を明確にすること
人数が少ないほどコミュニケーション経路が減り、意思決定が早くなる - 1つの作業に集中する「シングルタスク」で進めること
1つのことに集中することで作業効率と品質を高める
これらの点をまとめると、アジャイル開発は自律的で、コミュニケーションコストが低く、集中して価値を生み続けられるチーム構造をつくることを目指していると理解しました。
無駄を減らし、最短ルートで成果物を届けることを考え抜かれた仕組みであり、とても理にかなっていると感じています。
4. (所感)ウォーターフォールとアジャイルの違い
計画を守るか、変化に対応するか
ウォーターフォールは、
- 最初に要件を全部決める
- 設計も構成も前もって固める
- 予定どおり進めることが最優先
という考え方で進んでいきます。とくに鉄道システムのような社会インフラでは、途中で変えるのが難しいのでこの進め方が合っていました。
アジャイルは、
「変化は必ず起きるもの」という前提で動きます。仕様変更は悪いことではなく、価値を最大化するための自然なこととして扱われます。
一度に全部進めるか、小さく回し続けるか
実はウォーターフォールもアジャイルも工程は同じです。
- 要件 → 設計 → 開発 → テスト
違うのはその回すスピードです。
| 手法 | 進め方の違い |
|---|---|
| ウォーターフォール | 大きな工程で一気に進めるため、改善は遅れがち |
| アジャイル(スクラム) | 1〜4週間の短いスプリントで繰り返すため、早く改善できる |
つまりアジャイルは
- こまめに軌道修正できる
- こまめに認識合わせができる
というのが大きな強みです。
コミュニケーション量が違う
ウォーターフォールでは、
- 必要なときだけ関係者が集まる
- 役割ごとに担当が分かれて動く
という形が一般的で、情報共有が少ない期間もあります。
アジャイル(スクラム)では、
- 毎日の短い共有(デイリースクラム)
- スプリントの振り返り(レトロスペクティブ)
などの場が最初から仕組みとして組み込まれています。
さらに重要なのは、心理的安全性がある状態で話しやすいチームをつくることです。
- 役割に関係なく発言できる
- 批判ではなく事実ベースで議論する
この環境が、アジャイルの「密なコミュニケーション」を支えています。
チームの形と働き方が違う
ウォーターフォールは、
- 役割が明確に分かれている(要件→設計→開発→テスト)
- 各工程を別のチームが担当する
- 自分の工程が終われば、次の工程へ渡す
といったリレー方式で進みます。そのため専門性は高い一方で、工程間の調整が増え、認識のズレが起きやすくなります。
アジャイルは、
- 1つのチームが複数の役割を持ち寄る(クロスファンクショナル)
- 一緒に同じゴールへ向かう
- 優先順位を理解しながら進む
というワンチーム方式が基本です。必要な会話がすぐできるため、課題をその場で解決しながら進むことができます。つまり、
「役割ごとに分かれるチーム」 vs 「役割をまたいで協力するチーム」
という違いが、働き方にも大きく影響します。
5. まとめ
ウォーターフォールもアジャイルも、どちらが正しいというわけではなく、それぞれに得意な場面があります。ウォーターフォールは長期で大きな開発を計画どおりに進めるのに向いており、アジャイルは変化が多い中でも、価値の高いものを早く届けることができます。
大切なのは、状況に応じてどちらを選ぶか、または、組み合わせていくことが大切と感じています。お客様が本当に必要としているサービスを、より良い形で届けるために、手法は柔軟であるべきだと思います。これからも、その目的に向かって最適な進め方を選んでいきたいと考えています。
明日は王さんの「n8n で映画データ分析AI Agentを作った話」の記事です。
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