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DatadogのFrustration Signalsを使ってユーザーの不満を可視化

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はじめに

コンシューマー向けアプリの開発・運用に携わる中で、ユーザー体験の向上は常に重要なテーマです。
これまではUI/UXを改善するために、以下のような方法を取ってきました。

  • お客様からの問い合わせ内容の確認
  • アプリストアでのレビューの分析

上記の方法はサービスの大きな問題点や顕在化している課題を発見するには有効でしたが、ユーザーが感じる「小さなイライラ」や「無意識の不満」を見落としてしまうことがありました。

本記事では、Datadog Frustration Signalsを導入して、どのようにUI/UXを改善しコンシューマー向けサービスのユーザー体験向上に貢献したのか、その具体的な取り組みと成果をご紹介します。

Datadog Frustration Signals

DatadogのRUM(Real User Monitoring)機能の一部で、ユーザーがWebサイトやアプリケーションを利用する際にフラストレーションを感じている可能性のある行動を自動で検出・可視化する機能です。
具体的には以下の3つのシグナルが含まれます。

Rage Clicks

ユーザーが1秒以内に同じ要素を3回以上クリックする現象で、苛立ちのサインとされます。たとえば、反応しないリンクを何度も押すような行動です。これを検出することで、ユーザー離脱につながる問題箇所を特定できます。

Dead Clicks

クリックしても何の反応やアクションが起きない現象を指します。多くの場合、ユーザーが誤って期待した操作ができないときに発生します。原因としては、リンクのように見えるテキストや、ボタン風の要素が機能していないなど、誤解を招くUXデザインが挙げられます。

Error Clicks

クリック時にJavaScriptエラーが発生する現象を指します。ユーザーの操作が技術的な不具合によって失敗したことを示しており、Rage ClicksやDead Clicksと並ぶユーザーのフラストレーション指標とされています。

次に具体的な利用方法を紹介します。

シグナルの「発見」

  1. Datadogで「Frustration Signal」を検索すると、該当機能が表示されます。

  2. applicationNameにアプリ名を入れると、各シグナルの発生状況のサマリを見ることができます。

Datadogの標準ダッシュボード

サマリ以外にもDatadogでデフォルトのダッシュボードが用意されているので分析するのに大変便利です。

◾️Pages with highest frustration rate(フラストレーション率が最も高いページ)

どのページで、どのタイプのシグナル(dead_clickやerror_clickなど)がどれだけ発生し、フラストレーション率(発生したクリックのうち、フラストレーションと判断された割合)がどれだけ高いのかを確認できます。

◾️Most frustrating actions(最もフラストレーションを引き起こしているアクション)

どのアクション(例: "click on Continue", "click on JINS LOGO"など)がフラストレーションシグナルとして頻発しているのかを把握できます。

必要に応じて各シグナルの詳細分析も可能です。

カスタムダッシュボードの構築

私たちの場合、特にDead Clickが頻発していたため、これを重点的に分析できるよう @futonkimochii さんにカスタムダッシュボードを作成してもらいました。このダッシュボードでは、Dead Clickが発生している場所のランキングや、どのチャネル/ユーザー環境で発生しているかの比率を可視化しました。これにより、異常値やトレンドの変化を早期に察知し、どのページか、もしくはどの環境に起因する問題なのかを素早く特定できるようになりました。

問題の「特定」と「深掘り」

シグナルが検知されたら、その原因を深掘りし、具体的なUI/UX上の問題点を特定するのですが、問題の特定にかなり役立ったのがセッションリプレイ機能でした。
ユーザーがそのシグナルに至るまでにどのような操作を行い、何に困っていたのかを視覚的に把握できるので、Dead Clickした際にユーザーが何を期待していたか観察します。

改善策の「立案」と「実装」

特定した問題に基づいて具体的な改善策を検討し、UI/UXの改修を行いました。その結果、改修前と後でフラストレーションシグナルの割合を 9.32%→4.1% と大幅に削減することができました。

改修前

改修後

具体的な改善事例

Datadogのフラストレーションシグナルを活用してUI/UXを改善した事例を1つご紹介します。

対象サービス

US JINSアカウントマイページ

背景

今年4月、USの認証基盤リプレイスに伴いマイページも刷新。
そのため、新しいマイページの使い勝手を検証する必要がありました。

※添付はイメージです。

1.課題発見のきっかけ:Dead Clickの多発

リリース当初から「Dead Click」が多発していることに気づき、詳細を調査しました。

2.ユーザー行動の内訳を分析

Dead Clickの中で最も頻出していたのは「click on JINS Logo(=JINSロゴのクリック)」で、

利用環境を確認してみるとECサイトの利用ユーザーが多いことが判明しました。
※アプリ利用者の場合は、browser nameに「Webview」とつくようにしているので、ECサイトが主な利用環境となる。

3.セッションリプレイで実際の操作を確認

ユーザーの実際の操作をセッションリプレイで確認したところ、ヘッダーにBackボタンが表示されていない画面でJINSロゴが頻繁にクリックされていることが判明しました。
(Backボタンは特定の条件下でのみ表示される仕様になっていた。)

Backボタンが表示されないケースの一例として「パスワードリセット完了後の画面」があり、パスワードリセットしたユーザーは次に進む手段がなく行き止まりの状態でした。

4.仮説立案と改善

上記のことからJINSロゴが頻繁にクリックされているのは、ECサイトへ戻ろうとする意図の現れではないかと仮説を立て、JINSロゴにECサイトTOPへのリンクを埋め込むことを決定。

リリース後、該当箇所のDead Clickが減少したことに加えて、ユーザーからの問い合わせもないことから、迷子になっていたユーザーの導線確保に繋げることができたと思います。

まとめ

Datadogのフラストレーションシグナルは、従来のUI/UX改善では見えにくかったユーザーの不満を可視化し、客観的なデータに基づいて改善を行うための強力なツールです。この機能を活用することで、ユーザーが本当に求めているもの、どこでつまずいているのかを深く理解し、よりユーザーに寄り添ったプロダクト開発を進めることが出来ると考えています。

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