Chapter 03無料公開

境界

jeyei
jeyei
2021.03.01に更新

アウトプット(output)の原義

それではアウトプットという言葉の意味からあらためて考えていきましょう。

英語で書くと「output」。「out」と「put」という2つの文節から成る言葉です。直訳は「生産」「生産品」「生産高」など。入出力の「出力」でもあります。

outputの対義語はinput。直訳は「材料」「資金」など。入出力の「入力」ですね。

言葉の意味はさておき「out」という文節に注目してみましょう。

「out」は「外」ですね。じゃあ 「外」ってどこを指すの? って話なんですよ。

自分自身を「内」と定義するならば自分自身ではないスコープは全て「外」ですよね。

自分を中心とした相対的な「場所」を例に取ると、家の中が「内」であれば、家から一歩出た瞬間の自分が住んでいる町内も「外」になりますし、電車で10分かけて行ける隣町も「外」になりますし、電車で1時間かけて行ける隣の県も「外」になりますし、飛行機で5時間かけて行ける隣の国も「外」(=外国)になりますし、とにかく「外」ってすごい広いんですよ。

そこで、アウトプットの大切な概念として一番初めのチャプターとして説明するのが「境界」という概念です。

外が指す範囲

あらためて「output」の文節を見ます。あくまでイメージですが「out(外)」に「put(置く)」ですから「外」のどこかに「置く」というシーンを例にとりましょう。

今日ゴミの日だから、ゴミを外に置いてきて

母親にそう言われた子供の貴方は外のどこにゴミを置きますか?外は外だろ!って反抗期丸出しでベランダだったり自分の玄関の前だったりにゴミを置きますか?誰か持ってってくれるだろうと悪知恵を働かせて他人の家の玄関の前にゴミを置きますか?

違いますね。素直な貴方はきっと町内で決められたゴミ捨て場にゴミを置くはずです。

外に置く「output」という代物は外だからといって、どこにでも置いていいものではないのです。

「外」の然るべき場所に置く行為もしくは置く物、それが「アウトプット」です。

事例:印刷をよろしく

もう少し、現実に即した例を挙げてみましょう。「output」は「入出力」の「出力」という意味を持っていましたね。「機械的」な「出力」というイメージで「プリンタ」を想像してみましょう。

Aさん(仮名)が働くオフィスは地上50階建て、全ての階に異なる部署の人員が配置され、そしてすべての階に社内ネットワークに繋がれたプリンタがあるとします。Aさんのデスクは2階にあります。

今やってもらっている資料が出来たら、A4の紙に印刷しておいて。10部ね。

上司にそう言われたAさん は資料を仕上げ、いざ印刷しようとプリンタのダイアログを開きました。プリンタのダイアログには、出力先として無数のネットワークプリンタが並んでいます。どこに出力すればよいかわからなかったAさんは適当にプリンタを選択して印刷ボタンを押しました。
と、同時に50階にある社長室のプリンタが鈍い音を立てて、ものすごい勢いで紙を刷り始めました。

意気揚々と上司に報告したAさん。2階のプリンタの前で怪訝な顔をしている上司。上司はAさんに聞きます。

どこに出したの?

この後、Aさんがこっぴどく怒られたのは言うまでもありません。

事例:メールを出しておいて

しばしば「会話」や「メール」のシーンにおける問いかけや発信もまた「人」の「出力」の一例として挙げられます。こんな例はいかがでしょうか。

Bさん(仮名)は上司にこんな依頼をされました。

〇〇課のXさんと□□課のYさん、▽▽課のZさんにそれぞれ例の案件のお伺い立てておいて。メールでいいから。

Bさんはそれぞれに似たようなメールを出すのを億劫に感じました。また、個別の宛先ではなく、あろうことか全社員が含まれるメーリングリスト宛にメールを書く事にしました。

宛先のアドレスは全社員メーリングリストでいいだろ。んーと、宛名はどうしようかな?

宛先だけではなく宛名の記載に煩わしさを感じたBさんはおよそ考えられ得る限り最悪の手段に出ました。

各位
お疲れ様です。Bです。
例の案件、いかがでしょうか。お返事ください。

こうして悪魔のようなメールが全社員、数百名に発信されることになりました。そのメールを見た誰もが思いました。

このメールは誰宛に書かれたメールなの?

その後、Bさんを見た人はいませんでした…

「何を」ではなく「どこに」

上の例は極端としても、何となくどこにというポイントを意識する必要があるというのは
ご理解いただけますでしょうか。

アウトプットの「アウト」とはその名の通り「外」ですが「外ならどこでも(anywhere)」というわけではありません。アウトプットにおける境界は「内」と「外」だけではなく、「外」にはアウトプットにおいて然るべき「アウトプットすべき場所」つまり「アウトプット先」というポイントがあるのです。

例えば、日本語が全く通じない外人の方に

おはよう。今日はいい天気だね。調子はどう?

と挨拶しても通じませんよね。

また、プロジェクトの内容も知らない、プログラム言語にも明るくない、何なら会社とは無関係の人間に設計書やソースコードのレビューをお願いするでしょうか?
もしくは、Java言語のコミュニティに対してPHP言語の質問をしますか?

自分がアウトプットする際にまず考えなくてはいけないのは
何をではなく
どこにです。

最初に考えるべくは、話す内容ではなく、誰に話すかなのです。資料の内容ではなく、その資料を誰に見せるかなのです。むしろ、「内容」なんてアウトプットの取っ掛かりとしてはどうでもいいんです。

これがアウトプットのキホンのキ、「境界」 です。アウトプットにおいては必ず「内」と「外」という概念があって、「外」のどの範囲・どのポイントを出力先とするのかという事です。

もし貴方が何かしらアウトプットする事を初めて考える時には、アウトプットする内容をいきなり考えるのではなく、どこに(誰に)アウトプットするのかをまず考えましょう。
内容は二の次です。