Atom搭載のWindowsタブレットにLinuxを入れて動くようにした
経緯
以前MacBookProをメイン機としていた時に、どうしてもWindows機が必要になりました。
そこで秋葉原を歩き回った結果、数千円で販売されていたAtom搭載のWindowsタブレットを購入ました。
しばらく当初の目的の用途で使っていましたが、その後Windows機がメインとなりお役御免となっていました。
インストールされているWindows10が今年の10月にサポート終了になるということで、
Linuxを入れて今後も使えるようにできないかと試行錯誤することにしました。
忙しい人向け
なんやかんやで本家Ubuntuに落ち着きました。
デフォルトでは動画再生が止まることがありましたが、設定を変えることで問題なく再生できるようになります。
Windowsタブレットについて
富士通のArrowsTab Q507/REという機種です。
教育現場で導入されていたタブレットのようです。
今でも秋葉原などで販売されることがあるかと思います。
CPU がAtom x5-Z8550、メモリが4GBという貧弱なスペックです。
購入したタブレットのストレージは128GBでした。
Wacomのペンがついているのがウリのようですが、残念ながら私が購入したものにはついていませんでした。
目標
以下の項目が満たせるように試行錯誤しました。
Youtubeの動画やライブ配信が見れる
ディスプレイが10.1で大きめなので動画再生にちょうどいいのかなと思いました。
ただCPUがCPUなので720pや480pで止まることなく再生できれば御の字としました。
オンスクリーンキーボードで日本語入力ができる
タブレットにはUSB端子もありますし、ドックもついてきたのでキーボードやマウスを接続することも可能です。
ただデスクの空いたスペースに配置したり、
ゴロゴロしながら動画やWeb閲覧をしたいなと思ったのでタッチ入力で日本語入力ができるようにしたいと考えました。
傾きによる画面のスムーズな自動回転
軽量といわれるLinuxデスクトップを入れることで上記2点を満たすことはできたのですが、
そのLinuxデスクトップでは画面回転がスムーズではなく、体験としてあまりいいものではありませんでした。
この点を捨てれば、この記事で紹介するものより軽量な選択肢が増えるかと思います。
選択した Linux
色々インストールを繰り返した結果、現状は本家Ubuntu 25.04を採用しています。
昔にUbuntu系のデスクトップを利用していて馴染みがあったため本家やその派生を試しました。
本家Ubuntuで使われているGnome3はディスプレイプロトコルとしてWaylandを採用しています。
Waylandは旧来のX11を置き換える新しいディスプレイプロトコルです。
詳しくはWikipedia などをご覧ください。
新しく実装されているため、タッチ操作や画面の回転などがX11と比較してスムーズで、
今回の目標と合致していたためです。
ただWayLandに対応したデスクトップ環境は現状は主にGnomeかKDEとなっており、
軽量デスクトップ環境と言われるものと比較すると重さは否めません。
Zorin OS Core も Gnome3 を採用していますが、感覚的に本家Ubuntuの方が動作が軽く感じられました。
つまづきポイント
動画再生
しばらくすると再生が止まり「びーっ!」となり続ける
こちらはALSAの設定を修正することで解決しました。
/etc/modprobe.d/alsa-base.conf
の最後の行に以下を追加します
options snd-intel-dspcfg dsp_driver=2
どうやら新しいドライバを使う設定だと不具合が起きるらしく、
古いドライバを使うよう指定しているとのことです。
しばらく再生していると、最後の数秒を無限ループする
FireFoxでYoutubeの動画の再生やライブ配信を見ていると最後の数秒の再生を無限ループすることがありました。
こちらは設定からハードウェアアクセラレーションを無効にすることで解消しました。
Firefoxではなくmpvなどの再生アプリケーションを使う際にもハードウェアアクセラレーションを無効にする設定をするとよさそうです
しばらく再生していると、音声は再生されるけど画面が動かず操作を受け付けない
Youtubeのエンコードが負荷の高いものになっているようです。
強制的にH.264に変更する拡張を入れます
720pのYoutubeライブ配信がガタガタする
ディスプレイでスケーリングをしていると負荷が高まるようです。
100%表示にするか、アイコンなどが小さいと感じる場合には解像度を下げてみてください
イヤホンジャックから音がでない
/etc/modprobe.d/alsa-base.conf
の最後の行に以下を追加します
options snd-hda-intel model=dell-handset-multi
再起動すると音声の出力デバイスに「Atom/Celeron/Pentium Processor ~~~」というのが出てくると思うのでそちらを選択します。
オンスクリーンキーボードがうまくいかない
試行錯誤の末、最終的にGnomeの標準のオンスクリーンキーボードを使うというところに落ち着きました。
物理キーボードと同じくCtrl+Spaceで日英切り替えをしたかったのですが、標準のオンスクリーンキーボードでは修飾キーがありません。
こちらについてはインプットメソッドを英語とmozcを用意しておき、オンスクリーンキーボードからそれを切り替えることにしました。
起動直後はmozcの入力モードを変えておく必要がありますが、目をつむりました。
標準のオンスクリーンキーボードでは右下にある歯車キーをタップするとインプットメソッドを選択できます。
Onboardの動作が不安定
Linuxのオンスクリーンキーボードとして有名なものにOnboardというものがあります。
こちらのキーボードにはCtrlなどの修飾キーがあったので日英の切り替えに使いたかったのですが、
画面下に固定させようとしてもなぜか画面上に張り付いてしまったり、
入力欄を選択すると自動表示する設定にすると、Gnome標準のオンスクリーンキーボードも表示されてしまうなどがありました。
どうやらOnboardはX11向けに実装されていてWaylandとは相性がよくないようです。
fcitx5とオンスクリーンキーボードが相性がよくない
最近はインプットメソッドとしては ibus よりも fcitx5 というものがよく採用されているらしいです。
Kubuntuや KDE neonは fcitx5 を採用していました。
fcitx5を利用するためには日本語を含めたCJKの変換のために仮想キーボードにfcitx5を選択する必要があるようで、
オンスクリーンキーボードを表示することができませんでした。
こちらの解決方法をご存じの方はご教示いただけると幸いです。
サスペンドからの復帰が遅い
省電力機能のパネルセルフリフレッシュ (PSR) が原因のようです。
無効にするためGrubの設定を編集します。
/etc/default/grub
の
GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="quiet splash"
の末尾に i915.enable_psr=0"
を追加します
GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="quiet splash i915.enable_psr=0"
最後に
現状は上に記載した目標は達成できています。
快適とまではいかないまでもタッチ操作には不満はなく、動画再生も低画質ではありますができています。
「スムーズな自動回転は必要ない。タッチ操作もそこそこできればよい。軽量さを重視する」
という場合には選択肢が広がると思います。
試した中ではLinux Mint Xfceや Zorin OS Liteなどがよさそうでした。
2025/6の時点ではWayland対応がされていないフレーバーの中には対応を進めているものもあります。
例えばLubuntuは25.10ではWayland対応を予定しているとのことです。
軽量なフレーバーでWayland対応のものが増えてくれば、より軽量でタブレットに適した操作ができる環境が構築できるかと思います。
以上です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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