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組織文化を醸成するための正しい努力

2024/12/24に公開

この記事は、株式会社ispec Advent Calendar 2024の24日目として執筆しています!

二日前に39度超えの高熱を出してしまいましたが、このアドベントカレンダーに向けてギリギリ回復しました。

はじめに

組織文化の醸成が事業拡大において重要であるということは言うまでもありませんが、そのアプローチには非常に多くのものが提案されています。私が観測している限りで最もよく言われているアプローチは、「すでに行われている良い行動を言語化して浸透させる」というものです。すでに組織の中でパフォームしている人の行動様式を言語化して全体に浸透させていくというアプローチは、非常に納得感があるものです。

上記のアプローチは組織の中ですでに文化を体現できている人が一定数いるという前提になっていますが、醸成したい文化が組織の中であまり体現されてないようなケースもあるでしょう。そういったケースでは、文化を醸成することを諦めるしかないのでしょうか。

いいえ、そんなことはありません。

この記事では、ゼロから組織文化を醸成するためにどんな努力をするべきか、に関する私なりの考えと、ispecでの事例をしたいと思います。

インテグラル理論

自分が組織文化について考える時は、ケン・ウィルバーのインテグラル理論を必ず参照しています。 この理論はティール組織の書籍でも紹介されているため、見たことがある方は多いかもしれません。

簡単に説明をすると、「あらゆる事象は個別的/集団的の軸と、内面的/外面的の軸、合計4象限で説明できる」という考え方です。 組織という事象に当てはめて図に書くと、以下のようになります。

インテグラル理論

インテグラル理論では、特定の象限は他の複数の象限から強く影響を受けていると考えます。図の組織の例で考えると、「組織文化は人々の信念や行動、組織のシステムから強く影響を受けている」と考える訳です。

逆に言うと、ある象限を変えるためには他全ての象限のアプローチも変えなくてはならない、ということになります。組織文化の象限にアプローチするには、他の3象限から持続的・包括的にアプローチしていく必要がある、ということです。

ティール組織で紹介されている例を出すと、「感謝しあう文化」を作りたいのであれば、

  • 人々の信念と心の持ち方 ... どんな時に「感謝」の気持ちを持つかを探るワークショップを開く
  • 人々の行動 ... 社内の模範となるような人たちに、感謝を伝える機会を増やしてもらう
  • 組織のシステム ... 感謝を伝え合うミーティングを毎週開く

のように、3つの象限からアプローチをします。

つまり、冒頭の「組織文化を醸成する方法」とは、「隣接する3象限を徹底的に追求すること」になる、と考えられる訳です。

自分とは違う思考習慣を捉える

ちょっと余談ですが、このインテグラル理論を自分が重宝している理由は、「人はアイデアを生み出す時にどれか一つの象限に囚われやすく、この考え方はその囚われを緩めてくれる」からです。

何か問題が発生した時に、「個人のスタンス」を課題にする人もいれば、「組織のシステム」を課題にする人もいるでしょう(自分は割とシステム側が最初に浮かびます)。そして、「どの象限を中心に考えるか」は個人の成功体験や生い立ちに強く依存するものだと思っています。

ですが、どれか一つの象限だけ解決しても、他の象限が放置されたままだと最終的な解決に至りません。そういう時に、このインテグラル理論は「自分とは違う思考習慣の人が思いつきそうなこと」を考えるきっかけになると思っています。

「知見を貯める文化」を作る

さて、ここで実際にispecで取り組んだ例を紹介します。2ヶ月ほど前にエンジニアチーム全体で合計2時間くらいの振り返りをした際に「他のチームの開発で生まれた知見が他のチームに連携されず、活用されていない」という意見が複数上がりました。これに対する解決策はいろんなアプローチが考えられますが、ここでは一旦「得られた知見をストックして共有する文化」を作ることを解決策とし、上記のフレームワークに当てはめて考えて見ます。(このタイミングでCosenseを導入し、そこにどんどん知見をためていこう!という形で推進をしていきました。)

人々の信念と心の持ち方

最近どんなことを学んだか?を1on1で聞いていきます。特に、どんな課題と向き合っているか、その過程でどんなことを調べているかなどを深堀り、「それ、Cosenseに書いておくと良いね!」と声かけをします。

人々の行動

最初は誰かが率先してやるしかありません。自分だけではなく、今回のアドカレで3本もブログを書いてくれたhoriも全力でページを作ってくれました。(なんなら自分よりも多くページを作ってくれてるかもしれない。)

こういうときに自分以外にも率先してやってくれる他のメンバーがいることは本当に心強いですね。horiちゃんありがとう!

組織のシステム

ispecではホラクラシー組織というフレームワークを導入しています。その中でタクティカルミーティングという会議体があり、そのアジェンダの一つにチームの活動状況を示すメトリクスを共有するというアジェンダがあります。

そこで、全開発者が「先週、Consenseに新しく作ったページの数(と内容)」を共有するというメトリクスを追加しました。このメトリクスはKPIでもなければ、ページを作らなかったら怒られるとか評価が下がるとかもありません。ただ、周りがページを作っている中で「一ページも作っていません」と言い続けるのに耐えられる人は少ないでしょう。

上記のようなことをひたすら続けていくと、いろんな開発者がどんどん知識をストックしてくれるようになりました。結果として、Cosenseに11/26から12/2までで150ページほど作成されていました。この期間、開発者としてがっつり動いているメンバーは7名ほどだったので、1名あたり20ページ分の知見をためてくれたことになります。これは知見をストックする文化が醸成されてきていると言って良いでしょう。

いくつか作られたページをチラ見せします。

shadcn
hasura

ispecのみんな、たくさんページ作ったね、すごいぞ!

ispecの開発組織文化

上記の例は組織内での課題感も強かったため比較的スムーズに進みましたが、他にもADRの導入等を通じて「設計や実装の意図を言語化する文化」もかなり強まったように感じています。horiが実際に書いたADRをもとにした記事を書いてくれたので、こちらもぜひお読みください。(長期的な運用を見据えたリッチテキストエディタの選定)

最近は社内デザインシステムの"実装"にあたって意識したポイントを書いてくれたs.katoの中に私が現れ、「もっと言語化してみて」って言ってくるようになったそうです。これも良い点を言語化して議論するべきという価値観が組織の中で内面化できていると言うことなんだろうと思います。(なお、私は「言語化してみて?」なんて言ったことはありませんので安心してください。私が一番「良さそう」を使ってる気がします。)

slack

また、このアドベントカレンダーも「ispecの開発者が外部に情報発信をする文化を作りたい」という思いでEMのshinyaが率先してやってくれています。彼の締めのブログもお楽しみに。

終わりに

文化の醸成は1日してならずですが、「こういう文化を作りたいんだ!」という熱量を持ち、その熱を正しい方向の努力に持っていけば、必ず良い結果が出るはずです。

何より、開発組織メンバー全員で「去年と比べてこういうことができるようになったね」とポジティブに振り返れるのは何よりも幸せなことだと思います。

今後もispecは、医療DXを推進するために開発組織の文化を強化していこうと思っています!
ご興味を持っていただけたら、転職意欲に関わらずカジュアルにお話しましょう!

この後はピザを頼んで爆食いしようと思います。
メリークリスマス!

参考

ispec inc.

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