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「ライト、ついてますか」の要約と感想
「ライト、ついてますか ―問題発見の人間学」という本を読んだので、ざっくり要点をまとめました。個人的な感想や考察には💡が付いています。
結論:本を読んで、私が研究をするときに気を付けようと思ったこと
研究テーマの選択
- 問題を吟味する。その問題は本質的で良い問題か?私はそれを本当に解きたいのか?
- 問題を定義する。この時、解決方法を問題の定義と取り違えないこと
- 自分が順応している事物を自覚し、それを取り除いたうえで問題を考える。他の多様な人に視点を切り替えて問題を考える
Ethics Statement
その問題を解くことで生じうる道徳的な問題を考える
サーベイ
- 現状(先行研究、データ、既存モデルの出力等)を確認する
- (先行研究の確認も重要だが、大抵の場合は提案手法との差分がどこかにあるはずなので、あまり気にしすぎず参考程度に留めても良いのかもしれない)
解決方法の模索
- 問題の本質に目を向ける
- 問題が何かを問い続ける
- 使う技術に固執しない
- 視野を広げて問題解決のヒントを見逃さない
- 問題文を変えてみる。その時に、解答がどう変わるかを考える
- モックを作って(トイモデルで検証して)、それに対して同僚と議論して…というサイクルを素早く回す
共同研究の依頼等
場合によっては、自分だけが問題を抱え込まない方が良い
本の要点まとめ
第1部 何が問題か?
-
問題とは、望まれた事柄と認識された事柄の間の相違である
- 認識と現実が乖離するかに注目せよ。乖離する場合(問題が「幻」である場合)、当初の問題は形を変えてより本質的な問題になる
- 本当に解くべき問題の解を見つけるために、まず問題定義をしよう
- 問題を抱えている人は誰か?
- その人にとって問題の本質は何か?
- ユーモアのセンスがない人のために問題を解こうとするな
- 💡文脈から読み取るに、「一見冗談のような解決案に、有用な解決方法のヒントがあるかも」ということかも
第2部 問題は何なのか?
- 問題の大きさ(複雑さ)の概算をしよう
-
クライアントが提示した解決案を、問題の定義と取り違えるな
- 提示された解決案が自分の得意とする解法だった場合、特に注意
- 💡この話を聞いて、下図を思い出した

- 図の出典:Alexander C. 著, 宮本雅明 訳. オレゴン大学の実験. 鹿島出版会, 1977. 図は https://xtech.nikkei.com/it/article/COLUMN/20080828/313626/ より取得(2025年9月30日閲覧).
- 💡問題の本質に目を向ければ、より良い本当の解が見つかるかも
- 💡そもそも、問題を吟味したい。他に解くべき本質的な問題があるかも。また、よい問題を解きたい。解いている途中でもやり遂げる必要が無い場合もある
- クライアントの問題を容易に解いてやると、本当の問題を解いてもらったと信じてもらえない
- 道徳的な問題は、技術的な問題に熱中してしまうと見落とされがち
-
技術者はどの技術をどう使うかに熱中しがち
- 💡そのせいでユーザ目線にならないがち
- 正しい問題定義が得られたという確信は決して得られないが、その確信を得ようとする努力はやめてはいけない
- 究極の問題定義・究極の解答は存在しないので、「問題は何か?」を問い続けろ
- 結論に飛びついてはいけないが、自分の第一印象は無視するな
- 💡結論:「本当の解が見つかった」という思い込み
- 💡自分の第一印象:直感(「本当の解はこれかも?」という思いつき)
- 💡第一印象:不適合(後述)に慣れる前に感じること
第3部 問題は本当のところ何か?
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問題を解いたら、別の問題が出てくる
- 問題の転嫁:問題を、より厄介でない問題に、意識的または無意識的に置換すること
- 例:「ある工具を立てて置くと危ない」という問題を、「ある工具を使う技師にとって、その工具を立てて置くと危ない」という問題に無意識的に置換する(問題の転嫁)。「その工具は寝かせて置く」という解を得ても、その問題と解を認識していない「技師以外にとっても危険」という問題は解決していない。
- つまり、不適合(その解決策と付き合わなければいけない人とうまく合わないような解決策)が発生する。そしてそれは大抵の場合容易に解ける。
- どんな問題定義でも、見落とされる恐れのある(新たな問題になり得る)要素は無数にある
- 問題を解いたら、新たな問題になり得る要素を少なくとも3つは考えよう
- 問題の転嫁:問題を、より厄介でない問題に、意識的または無意識的に置換すること
- そもそも問題を認識するのが難しいこともある
- 不適合への慣れによって認識が困難になった問題を捉え直すために、外国人や障がいのある方、子どもの視点で物事を見直してみよう
- 新しい視点は必ず不適合を生み出す
- どう解いたかを明らかにするために、「問題文をどう変えたら解答を変えられるか?」を考える
- 問題が言語化されたら、その意味が一意に定まるまで問題文を咀嚼しよう
第4部 それは誰の問題か?
- もしある人物が問題に関係があって、しかもその問題を抱えていないなら、何かをやってそれをその人物の問題にしてしまおう
- 💡自分だけが問題を抱え込もうとしないこと
- 「ライト、ついてますか?」:トンネルの出口付近の看板に書かれた文字
- 個々のケースに対して厳密に指示するより、それらケースの全体に対して共通の注意喚起をすることで、自発的に問題を解決してもらう(つまり「彼らの問題」にしてしまう)
- 個々のケースに対して厳密に指示:夜かつライトを点けていない人→点けるよう指示 / 朝かつライトを点けている人→消すよう指示 / etc.
- 💡対象がしっかりわかっている&各対象の前提条件も固まっているからこその文言か
- 個々のケースに対して厳密に指示するより、それらケースの全体に対して共通の注意喚起をすることで、自発的に問題を解決してもらう(つまり「彼らの問題」にしてしまう)
第5部 それはどこからきたか?
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問題が何に起因するかを考えよう
- 大抵の場合は、自分に起因する
- どこにも起因しない場合もある
- 試験では、問題の作者の意図を汲み取ろう
- 問題や作者へのバイアスを除去して、自明な解を考えることも大事
第6部 われわれはそれを本当に解きたいか?
- ただ問題の解決方法を楽しんでいるだけなのではないか?結論に飛びついた方が案外早く問題解決するのではないか?
- 💡線形回帰で解けるのに、何にでも機械学習を使いたがる、みたいな
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人々は欲しいと言ったものを出してあげるまでは、実は本当は何が欲しかったかを知らないものである
- 💡だから素早くモックを作って、それを使ってもらった反応を見て…と素早いサイクルを回すのがいいのかもしれない
- 後から調べてみれば、本当に問題を解いてほしかった人はそんなにいないものだ
- 本気で問題に手をつける前に、「私はそれを本当に解きたいか?」を考えよう
- 本当に欲しいかを考える暇はない。後悔する暇はいくらでもある
- 魚、水を見ず
- 人が問題について考える時、順応した事物は考慮から除外されやすい
- 解答が順応した要素を取り除いた時、初めて気づく
- 問題解決者は、最初に「水」を見る努力をしよう
- まず汝自らに対して真実なれ
- 問題や解答に近づいて感受性が鈍くなる前に、道徳的側面を考えるようにしよう
- 問題解決は道徳的に中立的な活動ではないから
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