エンジニアである僕が自炊をするときに意識していること
昨日は@shirasud_twさんの心理的安全性を正しく機能させるためにやっていること - shirasud devでした。
モチベーション
筆者は自炊が好きです。生活を営むために必要なタスク(家事)の中でも、クリエイティビティを発揮する余地が比較的多いこと、知的好奇心を刺激する要素があること、そして家族が喜んでくれることが理由です。
本稿では筆者が普段、自炊をするときに意識していることを簡単に紹介します。
ペクチンの硬化と軟化
野菜や果物にはペクチンという物質が含まれています。
生の野菜や果物が固いのは、このペクチンが存在していることが理由です。
ペクチンはその特性から、セメントのようなもの
と表現されることが多いです。
植物の細胞壁に存在するペクチンは、水を多量に吸い、細胞をつなぎ合わせるセメントの役目を果たします。[1]
我々が料理をする際、野菜を加熱するのはペクチンを軟化させて食べやすくするためです。(生のじゃがいもは固くて食べられませんよね)
このペクチンですが、ある温度帯では軟化するのではなく硬化するという特徴があります。
多くの野菜は50〜80℃、特に60〜70℃に加熱すると、酵素の働きなどで細胞壁を構成しているペクチン質が変性して硬くなります。これを「ペクチン質が硬化した」と呼んでいるわけです[2]
加えて、加熱時に軟化と硬化に影響をあたえる要素があります。1つは塩分です。
2つ目がphです。
酢を加えることにより、ペクチンの分解を遅らせることができます。ちなみに酢の濃度を30%まであげ、水のphを4に調整すると100度でかなり長い時間加熱してもシャキシャキになるそうです。[3]
このように、野菜を加熱した際にどのように食感が変化していくのかというメカニズムを意識することで、野菜炒めなどのシンプルな料理でもぐっとクオリティを上げることができます。
たんぱく質の減菌と変性温度
野菜は柔くするために加熱調理を行いますが、肉や魚には別の理由があります。
肉や魚(加熱用として販売されているもの)は寄生虫、病原菌、バクテリアによって汚染されているため、パスチャライゼーション(減菌処理)を施す必要があります[4]。
扱う食材の種類によって注意しなければならないリスクは異なり、例えば牛肉を汚染している可能性のあるリスク要因は以下です[5]。
- セレウス菌
- ウェルシュ菌
- ボツリヌス菌
- サルモネラ
- リステリア・モノサイトゲネス
- 黄色ブドウ球菌
- 腸管出血性大腸菌
- エルシニア・エンテロコリチカ
- カンピロバクター
- マンソン裂頭条虫
- ブタ回虫(& ネコ回虫、イヌ回虫)
- 無鉤条虫
- 住肉胞子虫(サルコシスティス)
しかし、たんぱく質は加熱することによって変性し食感が固くなってしまいます。
料理をする際に関係のあるたんぱく質(ミオシン、アクチン)の変性温度は以下のように分布しています[6]。
パスチャライゼーションによる減菌とたんぱく質の熱変性による食感の変化を両方考慮することで、安全かつおいしい料理を提供できるのです。
うまみ成分の種類と組合せ
うまみ成分というのは、食品中に含まれる特定のアミノ酸のことを指します。
具体的には下記のものがあります[7]。
うまみ成分 | 代表的な食材 |
---|---|
グルタミン酸 | トマト、昆布出汁 |
イノシン酸 | 鶏肉、かつお出汁 |
グアニル酸 | きのこ類 |
うまみ成分には相乗効果があり、2種類以上をかけあわせることでおいしさが増すことが知られています。
例えば、鶏肉を使った親子丼には昆布だしを用いることで、グルタミン酸とイノシン酸の相乗効果が期待できます。
このように、うまみ成分の組み合わせを意識することで普段の料理のクオリティをぐっと高めることができます。
メイラード反応
最後はメイラード反応です。
メイラード反応とは、加熱により糖とアミノ酸などの間で褐色物質の「メラノイジン」などができる反応です。 これにより食品が褐色で香ばしい風味になります。メイラード反応の特徴は、加熱温度や糖とアミノ酸の組み合わせによりさまざまな香りができることです[8]。
たまねぎをじっくりと炒めると飴色になるのもメイラード反応による変化です。
このように、糖とアミノ酸が反応し、どのような変化がおきるのかを意識することで普段の料理のクオリティをぐっと高めることができます。
まとめ
筆者が普段自炊をするときに意識していることを紹介しました。
- ペクチンの硬化と軟化
- たんぱく質の減菌と変性温度
- うまみ成分の種類と組合せ
- メイラード反応
みなさんも、自炊をする際は食材がどのように変化しているのかを意識して、料理のクオリティをぐっと高めていきましょう。
明日は@isanasan_さんの「開発生産性は企業にとって競争力そのものであるという話」です。お楽しみに!!
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野菜でもサルモネラ菌やボツリヌス菌などで汚染されている可能性がありますがその話をしはじめるとややこしくなるので割愛します ↩︎
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参考 Cooking for Geeks 第2版 ―料理の科学と実践レシピ (Make: Japan Books) | Jeff Potter, 水原 文 |本 | 通販 | Amazon ↩︎
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