時系列データ予測モデル【Prophet】とは。
時系列予測の新定番?Prophet(プロフェット)とは何か
近年、ビジネス現場でもよく耳にするようになった「時系列予測」。売上やアクセス数、在庫、広告のクリック数など、時間に沿って変化するデータを予測する手法です。その中で注目を集めているのが、Facebook(現在のMeta)が開発した時系列予測ライブラリ「Prophet(プロフェット)」です。
本記事では、機械学習初学者でもわかるように Prophet の基本的な特徴や仕組みを初学者の私なりに、分かりやすく解説し、他の時系列予測手法との比較を交えながら、AI 学習における Prophet の位置づけを見ていきたいと思います。
Prophet とは?
Prophet は Facebook のデータサイエンスチームによって開発された時系列予測のためのツールです。2017年にオープンソース化され、Python と R の両方で利用できます。少ないコードで手軽に予測ができるよう設計されており、専門的な統計知識がなくても扱えることから、初心者にも優しいライブラリです。
このライブラリの最大の特徴は「加法モデル」によって時系列データを、
- トレンド(長期的な上昇や下降)
- 季節性(年次・週次・日次の周期的な変動)
- 祝日などの特別なイベント
の3つの要素に分解し、それぞれを組み合わせて未来の値を予測するという仕組みにあります。
また、祝日リストを組み込める機能や、トレンドの変化点を自動で検出する機能も備えており、実務的なニーズに合った予測が可能です。外れ値や欠損値にも比較的強く、多少データが乱れていても予測の精度を大きく損なわないのもポイントです。
他の時系列予測モデルとの比較
Prophet はその手軽さで一部から注目を集めていますが、他のモデルと比べてどうなのでしょうか?以下に代表的な時系列予測手法と Prophet の違いをまとめます。
以下に、ARIMA・Prophet・LSTMの3つの代表的な時系列予測アルゴリズムの要点を整理して比較した表とあわせて、簡潔でバランスの取れたまとめを提示します。
🔍 時系列予測アルゴリズムの比較まとめ
ARIMA(自己回帰和分移動平均)
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長所:
- 統計理論に基づいた信頼性の高いモデル
- 株価データなど、定常性のある時系列に対して非常に強い
-
短所:
- データ前処理やハイパーパラメータ選定が難しい
- 複雑な季節性やイベント要因への対応が弱い
Prophet(プロフェット)
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長所:
- ビジネス用途に適した設計(祝日や季節性を簡単に組み込める)
- ハイパーパラメータの調整が直感的で、可視化しやすい
- 少ないデータでも動作しやすい
-
短所:
- 季節性やカレンダー的周期が存在しない時系列には弱い
- 一部の非典型的な時系列データでは予測が困難
LSTM(長短期記憶ネットワーク)
-
長所:
- 非線形かつ複雑なパターンを高精度で学習可能
- データの定常性やカレンダー依存なしで対応できる
-
短所:
- 学習に大量のデータと計算資源が必要
- 解釈性に乏しく、ブラックボックス的
- ハイパーパラメータ調整が難しい
Prophet の長所と短所
長所
-
手軽に使える:
Prophet()
を呼び出して学習と予測を行うだけ。非常に簡単です。 - 欠損値・外れ値に強い:現実のデータは完璧ではありません。Prophet はその前提で作られています。
- 祝日やイベントを考慮できる:ビジネスでは重要な変動要因。これを組み込めるのは大きなメリット。
- 可視化しやすい:トレンドや季節性がグラフでわかりやすく表示されます。
短所
- 細かい変動には弱い:日々のちょっとした動きには LSTM などの方が強いです。
- 大量データだと学習に時間がかかる:内部で Stan を使っているため、超高速とはいきません。
- 特殊な周期には対応が難しい:基本は年次・週次・日次。他の周期はカスタマイズが必要です。
AI を学ぶうえで Prophet を使う意味
Prophet はいわゆる「機械学習モデル」というより、統計モデルに近い存在です。ただし、予測タスクにおいて「トレンドとは何か」「季節性とはどう扱うか」「予測結果をどう解釈するか」といった、AI・機械学習の基礎的な考え方を学ぶのに適していると思います。
ブラックボックスになりがちな深層学習とは異なり、出力されるパラメータやグラフが直感的に理解できるため、AI 学習の入り口として優れた教材といえるかなと思います。
まとめ
Prophet は「簡単にそこそこの予測ができる」という点で、時系列予測の最初の一歩にぴったりなツールです。Python や R で数行のコードから始められ、祝日や季節性など実務でよくある要素も考慮できるため、初心者が「予測ってこういうことか」と実感しやすい設計になっています。
本格的な深層学習や ARIMA などの手法に進む前に、まずは Prophet を使って時系列データの扱い方に慣れてみると良いと思います。
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