スマホからサーバー上でClineライクなステップ処理を走らせてgithubにプルリク送れるAI Webサービスをリリースした
リモートワークが一般化するなか、日々PCの前に張り付く働き方に限界を感じるエンジニアは多いのではないでしょうか?
筆者自身も、38歳を迎えたことで長時間椅子に座っているのがつらくなってきました。
また、今後子どもが生まれたら家でじっくり集中して開発するのが難しくなる予感がしています。
さらに、AIがこれほど進化しているのであればエンジニアであっても経営者のように会食やSNSをしたりしつつスマホで指示をするだけで仕事をできる環境を構築できるのではないか? とも思うようになりました。
こうした動機から、本記事で紹介する「スマホからClineライクなステップ処理を走らせてGitHubにプルリク送れるサービス」 AInalyze(アイナライズ) を開発し、リリースすることにした。
本サービスが実現するのは、“PCに張り付くことなく、いつでもどこでも開発を進められる仕組み” です。特にモバイル向けに最適化し、移動中やリビング、あるいは外出先のちょっとした時間でも、AIをフル活用して効率的にコードを書き換えたりレビューしたりできるようにしています。
以下では、サービスの概要と具体的な利用方法、そして今後の展望について解説します。
AInalyzeでできること
1. プロジェクトをアップロードしスマホからでもコード開発ができる
AInalyzeの利用はフォルダのアップロードかgithubからの取得でプロジェクトのファイルをまるごとサーバーに登録することからはじまります。
プロジェクトの作成後、ユーザーはプロジェクトのページの中に入り、そこからチャットUIでAIを選択し、プロジェクト内のファイルの内容を参照させつつ返答をさせることができます。
AInalyzeはデータをWebサーバーに保存し、スマートフォンに完全に対応したUIからアクセスできるため、PCを開けない場面でもスマホさえあれば大量のファイルを参照させつつコード修正やレビューを行うことができます。
わずかな空き時間でも 「プロジェクトの内容をまとめてマニュアルを作れ」 や 「買い物かご機能をつけろ」 や **「プロジェクトのセキュリティホールをチェックしリストアップしろ」**といった一言の指示で高度な作業を依頼可能です。
2. タスク登録機能と並列処理
AInalyzeはユーザーから受け取った質問をタスクとして登録して永続化し、ユーザーがページを閉じたり別のアプリを開いたりしても処理を実行し続けるタスク登録機能を実装しています。
通常スマートフォンのOSはユーザーが集中してみているアプリの処理を最優先するため、アプリから離れたのちのバックグラウンドでの動作やセッションの維持を保証しておらず、たとえばAIとコミュニケーションをしている最中に電話がかかってきたりした際に処理が中断されてしまうことがあります。
AInalyzeのタスク登録機能を使うことで、AIに質問を投げた後にSNSアプリやゲームアプリを開いて時間を潰したり、 一つのプトジェクトに対して同時に複数の質問を投げることができます。
3. Clineライクなステップ処理
ClineやCursorのようなステップ機能つきのAIコーディング支援ツールを使用したことがある方であれば、ステップを積み重ねながら大胆に実装を進めていくあの手軽さを想像できると思います。
本サービスではAIがバックエンドでコードベースを解析し、複数ステップでの読み込みと書き出しによって一問一答式のチャットでは不可能な大がかりな機能追加を行うことができます。
githubと連携しているプロジェクトであれば、複数の改修内容を一個のプルリクエストとしてワンクリックで出力することができます。
利用方法のフロー
ここからは、実際にサービスを使う流れをステップごとに示します。
1. ログイン
AInalyzeはGitHubアカウントとGoogleアカウントによるOAuth認証を提供しています。
2. サブスクリプション
新規登録時にサブスクリプションに登録することで1週間無料でサービスのフルの機能を利用することができます。
3. GitHubからプロジェクトをインポート
AInalyzeはローカルからのフォルダのアップロードとgithubからのダウンロードによって複数のファイルをプトジェクトとして登録することができます。
プロジェクトの作成に成功するとそれぞれのページに遷移して解析を開始することができます。
4. 指示出し
プロジェクト詳細ページでは新たに行うチャットのスレッドをイシューとして切り出し、それぞれで参照するファイルや出力方法を指定することができます。
ページは以下の要素で構成されています。
①イシュー
新しいチャットを行うたびにスレッドがイシューとして切り出され、URLが付与されます。
②ファイルセレクタ
プロジェクトに含まれるファイルとフォルダの一覧から、AIに読み込ませるファイルを指定することができます。また、すべてのフォルダの中からユーザーの質問に関係するファイルを自動的にピックアップして答える「スマートスキャン」や、ユーザーの命令を解釈して複数ステップで答えを出力する「ステップ処理」などの返答方法を変更することもできます。
③テキストエリア
文言を入力することができます
④送信ボタン
一般的なチャットアプリの送信ボタンです。
同期的なストリーミングチャットを開始します。
⑤タスク登録
AIへの質問をタスクとして登録します。
タスクはユーザーがページを離れたのちもバックエンド環境で実行され続け、再びアクセスした際に結果が返されます。
今後の展望
AInalyzeは「モバイル環境から高度な開発指示をAIに投げられるシステムをつくる」という当初の目的を達成したのちにリリースしましたが、生成AIの技術分野の進歩は早く、当サービスも複数のアップデートを視野に入れています。
1. ビルドの実装
Clineが提供しているような「ビルドしたファイルを実際に動作させ、エラーのフィードバックを得る」という機能をサーバー上で実現することで、より精度の高い改修をスマートフォンから行えます。
2. 自前サーバーによる格安提供
巨大なコンテキストやステップ機能は大量の計算資源を消費するため、モデルを自力で動かし推論を行うサーバーを自前で持つことでコストを抑えつつDeepseekなどのより多様なモデルを安全に提供することができます。
3. 汎用性の獲得
現在ステップファンクション機能には小説や脚本などのクリエイティブな文書出力のオプションがあります。
プロジェクト読み込みとステップファンクションにはコーディング以外にも様々な可能性があります。これからはエンジニア以外にも科学者やクリエイター、ビジネス用途からのフィードバックを参考に様々な分野のユーザーへ質の高いアウトプットをモバイルUIから提供してきます。
まとめ
本サービスは、「PCの前に張り付いていないと開発が進まない」という限界を突破し、スマホやタブレットなどモバイル環境でも充実した開発フローを実現するためのプラットフォームです。
また、今後はビルド結果の反映や安価な推論の提供など、さらなるアップデートを続々とリリースする予定です。モバイルファーストな開発環境を求めるエンジニアにとって、このサービスが新たな選択肢となることを期待しています。
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