エージェント型AI(Agentic AI)の最新動向 - 2025年9月第1週まとめ
エージェント型AI(Agentic AI)の最新動向まとめ
2025年9月1日〜7日の重要な発表・開発
1. 主要発表・リリース
DeepSeek社の新エージェント開発
中国のAIスタートアップDeepSeek社が、OpenAIに対抗する高度なAIエージェント機能を持つモデルを2025年末までにリリース予定と発表。このシステムは、最小限の指示でマルチステップタスクを自律的に実行し、過去の行動から学習・改善する設計となっている。
Anthropic社のChromeエクステンション
Anthropic社がClaude AIエージェント用のChromeエクステンションを発表。ブラウザ内で直接Webページを操作し、コンテンツを取得、タスクを自動化する機能を提供。これは同社初のリアルタイムWeb制御機能を持つエージェント型AIへの参入。
Mira Murati氏の新ベンチャー
元OpenAI CTO Mira Murati氏の新会社「Thinking Machines Lab」が、100億ドル評価額で20億ドルの資金調達を完了。推論、計画、自律性に特化したエージェント型AIシステム開発に焦点を当てている。
2. 重要研究論文・技術革新
包括的レビュー論文の発表
9月4日、「The Rise of Agentic AI: A Review of Definitions, Frameworks, Architectures, Applications, Evaluation Metrics, and Challenges」が発表。143の主要研究を分析し、その90%以上が2024-2025年に発表されたもの。
ReMAフレームワーク
多エージェント強化学習(MARL)を活用した新しい「Reinforced Meta-thinking Agents(ReMA)」フレームワークが発表。LLMのメタ思考能力を向上させる画期的手法。
手続き記憶アーキテクチャ
AIエージェントが段階的に学習、保存、再利用できる新しい手続き記憶アーキテクチャを研究者が発表。長期的なパフォーマンス向上と再訓練コストの削減を実現。
3. 産業動向・パートナーシップ
企業導入状況
IBMとMorning Consultの調査によると、企業向けAIアプリケーションを構築する開発者の99%がAIエージェントの探索または開発を行っている。
AWS投資拡大
Amazon Web Servicesが、エージェント型AI開発・展開促進のため、AWS生成AI革新センターに追加で1億ドルの投資を発表。
Gartnerの予測
- 2028年までに企業ソフトウェアの33%がエージェント型AIを含むようになる(2024年は1%未満)
- 2028年までに日常業務判断の15%がエージェント型AIによって自律的に行われる(2024年は0%)
- しかし、コスト増大、不明確なビジネス価値、不十分なリスク管理により、2027年末までにエージェント型AIプロジェクトの40%以上がキャンセルされる
4. 注目すべき活用事例・実装
9つのエージェント型ワークフローパターン
2025年のスケーラブルで堅牢なAIエージェントを実現する9つのワークフローパターンが特定された。マルチステップ、並列、ルーティング、自己改善ワークフローなど。
建設業界での多エージェント応用
建設ロボットの協調作業向上のための多エージェント強化学習フレームワークが発表。複雑な建設タスクにおける効率的な作業実行を実現。
研究支援システム
AnthropicやAutoGen、CrewAIなどのプラットフォームが、専門化された役割を持つ複数エージェント(検索、要約、統合、引用格式化)を中央オーケストレーターの下で連携させるシステムを展開。
5. 規制・政策動向
EU AI法の適用開始
2025年8月2日より、EU AI法のガバナンス規則と汎用AIモデルの義務が適用開始。しかし、エージェント型AIシステムに特化した明確な定義や規制は不足。
米国の新政策方針
大統領令「アメリカのAIリーダーシップ障壁除去」により、180日以内にアメリカのAI支配力維持・強化計画の策定を指示。
ガバナンス課題
- 人間の監視と自律性の両立という本質的な矛盾
- 既存のAIガバナンスフレームワークでは対応できない新しいリスク分類の必要性
- 消費者向けAIエージェント使用の開示規制の整備が急務
安全性のベストプラクティス
エージェントタスクの適合性評価、行動空間の制約、人間承認の要求、最も破壊的でないデフォルト動作の設定などが推奨されている。
まとめ
この1週間の動向は、エージェント型AIが2025年の主要技術トレンドとして急速に発展している一方で、規制や安全性の課題も浮き彫りになっていることを示している。企業の99%が開発に取り組むほど注目度が高い一方で、Gartnerが予測するように40%以上のプロジェクトがキャンセルされるリスクもあり、慎重な導入と十分な検討が必要な段階にある。
技術的には、多エージェント強化学習や手続き記憶アーキテクチャなどの革新的なアプローチが登場し、より高度で実用的なエージェント型AIシステムの実現に向けて着実に進歩していることが確認できる。
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