📑

OpenMetadata入門編 - なぜ今、データカタログが重要なのか?

に公開

1. はじめに:なぜ今、データカタログが重要なのか?

現代のビジネス環境において、データは石油に例えられるほど重要な資産となりました。しかし、そのデータも適切に管理・活用されなければ、その価値を十分に発揮することはできません。

多くの企業では、データソースの爆発的な増加とデータスタックの複雑化に伴い、データがサイロ化し、必要なデータがどこにあるのか、それが信頼できるものなのかを把握することが困難になっています。このような状況は、迅速な意思決定を妨げ、ビジネスのアジリティを低下させる要因となります。

ここで重要となるのが、「データのDNA」という考え方です。

これは、データそのものではなく、データに付随する定義や属性情報、つまりメタデータを指します。「データのDNA」が把握できていないと、以下のような問題が発生します。

  • 誤った判断や無駄な作業が増える:データの「説明書」がないため、どのデータをどのように扱うべきかが分からず、誤った判断を下したり、価値の薄い施策に時間を費やしてしまったりします。
  • チーム間の連携ミスが発生する:各部署やチームが同じ「データのDNA」を共通認識として持てないと、同じデータに対する解釈がバラバラになり、組織全体として正しい判断ができなくなります。
  • 問題発生時の原因特定が困難:データの正確な「設計図」がなければ、データ関連の問題が発生した際に原因を追及することが非常に難しくなり、開発スピードも鈍化してしまいます。

これらの課題を解決する手段として注目されているのが「データカタログ」です。データカタログは、組織内に散在するデータ資産を網羅的に集約し、検索可能にすることで、データの発見、理解、信頼性の向上を支援するツールです。

データカタログを導入することで、データディスカバリの改善、データガバナンスの強化、データに対する信頼性の向上、そしてチーム間のコラボレーション促進といった多くのメリットが期待できます。

本連載では、インキュデータ株式会社(以下、インキュデータ)が注目し、検証を進めているオープンソースのデータカタログソリューション「OpenMetadata」について、3回にわたり詳しく解説していきます。

2. OpenMetadataとは?

OpenMetadataは、データディスカバリ、データリネージ、データ品質、コラボレーション、ガバナンスといったメタデータ管理に関する包括的な機能を提供する、オープンソースのプラットフォームです。

その起源は、Uber社におけるメタデータ基盤の運用から得られた教訓にあり、組織内のあらゆるメタデータを一元的に管理し、データを見つけやすく、理解しやすく、信頼できるものにすることを目的としています。

出典:OpenMetadata「Announcing OpenMetadata

OpenMetadataは、スキーマファーストおよびAPIファーストのアプローチで設計されています。スキーマファーストとは、データの構造や仕様を形式的に定義する「スキーマ(仕様書)」を先に定義し、その仕様に基づいてAPIを実装する開発手法です。

そのためOpenMetadataは柔軟性と拡張性の高さが特徴です。これにより、多様なデータソースとの連携や、組織固有のニーズに合わせたカスタマイズが可能です。

インキュデータがOpenMetadataに注目する理由は、そのオープンソースとしての性質、包括的な機能群、活発なコミュニティ、そして何よりも、顧客企業がデータ活用を自律的に推進できるよう支援するという当社の方針と親和性が高いためです。

OpenMetadataを活用することで、企業はデータという資産の「DNA」を深く理解し、データに基づいた的確な意思決定とアクションを自ら実行できるようになると考えています。

3. OpenMetadataの主な特徴とアーキテクチャ概要

OpenMetadataは、現代のデータ環境における多様なニーズに応えるための豊富な機能を備えています。主な機能領域としては、以下の5つが挙げられます。

  • データディスカバリ:Elasticsearchを活用した強力な全文検索機能により、テーブル、ダッシュボード、パイプラインなど、さまざまなデータ資産を容易に発見できます。
  • データリネージ:データの流れをカラムレベルまで可視化し、データの発生源から最終的な利用箇所までを追跡できます。これにより、影響範囲の分析や問題発生時の原因究明が容易になります。
  • データ品質とプロファイリング:ノーコードでのデータ品質テストやプロファイリング機能を提供し、データの信頼性維持を支援します。
  • コラボレーション:データ資産に関する会話スレッドやタスク作成、イベント通知といった機能を通じて、データ利用者間のコミュニケーションを促進します。
  • ガバナンス:メタデータのバージョン管理、タグ付け、オーナーシップ割り当てといった機能により、データガバナンスポリシーの遵守を支援します。

OpenMetadataのアーキテクチャは、比較的シンプルに構成されている点も特筆すべきです。公式情報によれば、システムは主に4つのコンポーネントで構成されており、これによりデプロイメントや運用、アップグレードがほかのソリューションと比較して容易であるとされています。この構成を図で示します。


図1 アーキテクチャ図

出典:OpenMetadata「Architecture

また、OpenMetadataの大きな強みの一つが、その広範なコネクタサポートです。膨大なデータソースに対応しており、データベース、データウェアハウス、パイプライン、ダッシュボードなど、現代の多様なデータスタックからメタデータを効率的に収集できます。

例えば、Treasure Data、BigQuery、Snowflakeといった主要なデータプラットフォームや、各種リレーショナルデータベース、BIツールなどとの連携が可能です。

具体的な接続先は公式ドキュメントをご確認ください。
出典:OpenMetadata「Connections

4. まとめ

本稿では、データ活用の重要性が増す現代において、なぜデータカタログが必要とされるのか、そしてその有力な選択肢としてOpenMetadataがどのようなツールであるのか、その概要と主な特徴について解説しました。

OpenMetadataは、「データのDNA」を理解し、データドリブンな意思決定を推進するための強力なツールとなり得ます。

次回は、OpenMetadataの主要機能をより具体的に掘り下げ、メタデータ管理、データリネージ、データ品質といった各機能が実際にどのように役立つのか、インキュデータ社内での評価も交えながら詳しくご紹介します。さらに、ほかの類似サービスとの比較を通じて、OpenMetadataの優位性や特徴を明らかにしていきます。

INCUDATA TechBlog

Discussion