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SSE Framework, SET, CAEP, RISC

2022/08/14に公開

Shared Signals and Events

Shared Signals and Events – A Secure Webhooks Framework では、

  • SAML とか OIDC での ID のフェデレーションだとアクセスの妥当性をログイン時に評価される
  • なんだけど、セッションは長時間続くことがあるのでセッションが確立してる間にユーザーの属性が変わることがある
  • ので、ログイン時の古い情報を基にアクセス制御をするとセキュリティ上よくない

といった文脈でステータスの変更を通知するのに CAEP が出てきたり、

  • ユーザーは同じメールアドレスを複数サービスに登録したりする
  • 攻撃者はこれを利用して、1 つの脆弱なポイントからアカウント乗っ取りを連鎖したりする
    • メールアカウントが乗っ取られたら別サービスのパスワードリカバリ情報がそのメールアカウントに送られる、みたいなケース

といった文脈で RISC について記載があります。

ざっくりまとめると、各ユーザーやサービス、その他色々のセキュリティに関連するイベントをリアルタイムにやりとりして評価したいけどどうやる?のための仕様がいろいろある、といった感じです。

これらを実現するためにいくつかのプロトコルが出てくるのですが、本記事では各プロトコルにどのような仕様が定義されているのかをざっくり解説します。

ちなみに CAEP と RISC の立ち位置の差はよくわかってないので、それについては特に何も書いてないです。

どのようなシーケンスになるのか

送信者や受信者、イベントの対象が実際に誰になるのかは仕様上特に決まっていないのですが、ここでは例として具体的に

  • RP がイベントを受信する側(rp.example.com)
  • IdP がイベントを送信する側(idp.example.com)
  • イベントが通知される対象のユーザーアカウントの Subject は inaba@example.com

とします。

設定

SSE Framework に定義されているエンドポイントから事前に設定を行います。

RP が IdP にイベントの通知方法や対象ユーザーを指定するシーケンス

3 の設定

RP は IdP に以下のようなリクエストをします。

POST /sse/stream HTTP/1.1
Host: idp.example.com
Authorization: Bearer eyJ0b2tlbiI6ImV4YW1wbGUifQo=

{
  "iss": "idp.example.com",
  "aud": ["rp.example.com"],
  "delivery": {
    "delivery_method":
      "https://schemas.openid.net/secevent/risc/delivery-method/poll",
      "url": "https://idp.example.com/events"
  },
  "events_requested": [
    "https://schemas.openid.net/secevent/caep/event-type/assurance-level-change"
  ]
}

delivery_method で polling によるイベント通知を望んでいること、event_requested で CAEP の AAL 変更イベントの通知を望んでいることを指定しています。

5 の Subject 追加

RP は IdP に以下のようなリクエストをします。

POST /sse/subjects:add HTTP/1.1
Host: transmitter.example.com
Authorization: Bearer eyJ0b2tlbiI6ImV4YW1wbGUifQo=

{
    "subject": {
        "format": "iss_sub",
        "iss": "idp.example.com",
        "sub": "inaba@example.com"
    },
    "verified": true
}

これによりこのストリームで inaba@example.com についてのイベントが通知されるようになります。

ユーザーの操作により AAL が変わる

これがイベントが発生するきっかけになります。このシーケンス自体は仕様とは無関係です。

エンドユーザーが認証器を解除して再ログインした結果 AAL が変わるシーケンス

AAL 変更イベントを通知

RP が IdP にポーリングして AAL 変更イベントを取得

配信されたイベントは以下のようになります。(実際には JWT)

{
    "iss": "idp.example.com",
    "jti": "07efd930f0977e4fcc1149a733ce7f78",
    "iat": 1615305159,
    "aud": "rp.example.net",
    "events": {
        "https://schemas.openid.net/secevent/caep/event-type/assurance-level-change": {
            "subject": {
                "format": "iss_sub",
                "iss": "idp.example.com",
                "sub": "inaba@example.com"
            },
            "current_level": "nist-aal1",
            "previous_level": "nist-aal2",
            "change_direction": "decrease",
            "initiating_entity": "user",
            "event_timestamp": 1615304991643
        }
    }
}

各仕様ざっくり

OpenID Shared Signals and Events Framework Specification 1.0 - draft 01

この文章では Receiver(受信者) と Transmitter(送信者) 間でストリームを通じてイベントをやり取りするための仕様が定義されています。

大雑把に SSE Framework によるやりとりの流れをまとめると以下のようになります。

  1. Receiver は Transmitter の情報を取得
    1. 各エンドポイントの情報が返ってくる
  2. Receiver は Transmitter に設定を送る
    1. イベントをどのように通知して欲しいか、など
  3. Receiver は Transmitter に Subject の追加リクエストを送る
    1. 例えばユーザー A についてのイベントを通知してくれ、など
  4. 指定した Subject のイベントが Transmitter から Receiver に通知される

Subject とは

SSE Framework では、イベントがに対するイベントなのかを表すものとして Subject という概念があります。例えば「ユーザーがパスワードを変更した」というイベントであれば Subject がユーザーだったり、「セッションが無効化された」イベントであれば Subject はセッションそのものだったりします。

Receiver はある Subject についてのイベント通知を受け取りたい場合、API を通じて Transmitter に Subject の追加リクエストを送ります。

Subject の表現には Simple Subject Member と Complex Subject Member があり、仕様には以下のような例が記載されています。

Simple Subject Member の例。

"transferer": {
  "format": "email",
  "email": "foo@example.com"
}

Complex Subject Member の例。

"transferee": {
  "user" : {
    "format": "email",
    "email": "bar@example.com"
  },
  "tenant" : {
    "format": "iss_sub",
    "iss" : "http://example.com/idp1",
    "sub" : "1234"
  }
}

SET の例

いくつか例が紹介されています。

{
  "iss": "https://idp.example.com/",
  "jti": "756E69717565206964656E746966696572",
  "iat": 1520364019,
  "aud": "636C69656E745F6964",
  "events": {
    "https://schemas.openid.net/secevent/risc/event-type/account-enabled": {
      "subject": {
        "format": "email",
        "email": "foo@example.com"
      }
    }
  }
}

events フィールドのキーになっている https://schemas.openid.net/secevent/risc/event-type/account-enabled は event type を指します。この event type や type ごとのフィールドが後述の RISC や CAEP で定義されています。

この例では foo@example.com というメールアドレスで表される Subject のアカウントが有効化されたことを https://idp.example.com/636C69656E745F6964 に通知しています。

定義されている API

前述の Subject 追加などに利用する API がいくつか定義されています。

ディスカバリ

ディスカバリのための API が定義されています。この API から他の各 API のエンドポイントなどを取得できます。

仕様では以下のようなリクエストの例が記載されています。

リクエスト

GET /.well-known/sse-configuration HTTP/1.1
Host: tr.example.com

レスポンス

各エンドポイントや、サポートしているイベントの通知方法などが返ってきます。

HTTP/1.1 200 OK
Content-Type: application/json

{
  "issuer":
    "https://tr.example.com",
  "jwks_uri":
    "https://tr.example.com/jwks.json",
  "delivery_methods_supported": [
    "https://schemas.openid.net/secevent/risc/delivery-method/push",
    "https://schemas.openid.net/secevent/risc/delivery-method/poll"],
  "configuration_endpoint":
    "https://tr.example.com/sse/mgmt/stream",
  "status_endpoint":
    "https://tr.example.com/sse/mgmt/status",
  "add_subject_endpoint":
    "https://tr.example.com/sse/mgmt/subject:add",
  "remove_subject_endpoint":
    "https://tr.example.com/sse/mgmt/subject:remove",
  "verification_endpoint":
    "https://tr.example.com/sse/mgmt/verification",
  "critical_subject_members": [ "tenant", "user" ]
}

Status Endpoint

ステータスという概念があり、

  • enabled(イベントを送信する)
  • paused(イベントの送信をしないが、その間保持したイベントを enabled になったら送信する)
  • disabled(イベントを送信しない)

が定義されています。これを参照、更新するための API があります。
ストリームに対するステータスの更新だけではなく、ストリームの特定の Subject を指定した操作も定義されています。

Configuration Endpoint

利用するイベントの通知方法や、対象とするイベントの種類などのストリームの設定を取得、更新、削除ができます。

Add Subject Endpoint/Remove Subject Endpoint

前述の Subject をストリームに追加するための API が定義されています。

Verification Endpoint

イベントストリームを流れるイベントは非常に少ない場合があるため、実際にイベントが通知された場合の挙動を検証するための Verification Event が定義されています。これを送信するために Verification Endpoint が定義されています。

認証について

Transmitter の API 呼び出しには OAuth 2.0 のアクセストークンを使った認可を行うべき、とあります。

Security Event Token (SET)

SET はデータ構造で、Subject に対するイベントを表現します。JWT なので署名や暗号化が可能です。

SET を受信したら受信者は何らかのアクションを行うことができますが、送信者が受信者に何か操作を命令するものではなく、受信してどうするか、はあくまで受信者側の操作となります。
SET の配送方法やイベントの構造は別の仕様があります。

SET の構造

SET はいくつかのクレームが定義された JWT となります。

  • events
    • イベントそのものを格納するクレーム
  • txn
    • 関連のある JWT が複数発行される場合の紐付けに使う
  • toe
    • イベントの発生日時

Push-Based Security Event Token (SET) Delivery Using HTTP

SET の配送方法として push と poll があります。こちらは push の仕様となります。この仕様では transmitter が recipient がホストするエンドポイントに SET を POST することで通知を行います。

transmitter が recipient に POST でイベントを送信

recipient が SET をパースできるかとか issuer とか audience が想定通りかとか署名検証できるかとかそういう検証をしようね、みたいな話とか、エラー時はこういうレスポンスをしようね、みたいな話が書いてあります。

recipient への POST として以下の例が記載されています。

POST /Events HTTP/1.1
Host: notify.rp.example.com
Accept: application/json
Accept-Language: en-US, en;q=0.5
Content-Type: application/secevent+jwt

eyJ0eXAiOiJzZWNldmVudCtqd3QiLCJhbGciOiJIUzI1NiJ9Cg
.
eyJpc3MiOiJodHRwczovL2lkcC5leGFtcGxlLmNvbS8iLCJqdGkiOiI3NTZFNjk
3MTc1NjUyMDY5NjQ2NTZFNzQ2OTY2Njk2NTcyIiwiaWF0IjoxNTA4MTg0ODQ1LC
JhdWQiOiI2MzZDNjk2NTZFNzQ1RjY5NjQiLCJldmVudHMiOnsiaHR0cHM6Ly9zY
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iIiwiaXNzIjoiaHR0cHM6Ly9pZHAuZXhhbXBsZS5jb20vIiwic3ViIjoiNzM3NT
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.
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Poll-Based Security Event Token (SET) Delivery Using HTTP

こちらはポーリングで SET を配送する仕様です。
recipient が transmitter に POST リクエストをすることでイベントを取得します。
イベントの取得だけではなく ack の概念があり、POST リクエストで transmitter に受信が完了したイベントを通知できます。transmitter は ack されたイベントを保持する必要がなくなります。

recipient が transmitter にイベントを取りに行く

イベントをリクエストしつつ ack もするケースで以下のようなリクエスト例が記載されています。

POST /Events HTTP/1.1
Host: notify.idp.example.com
Content-Type: application/json

{
"ack": [
    "4d3559ec67504aaba65d40b0363faad8",
    "3d0c3cf797584bd193bd0fb1bd4e7d30"
],
"returnImmediately": false
}

ack に指定しているのは SET の jti となります。

レスポンス例は以下のようになります。

HTTP/1.1 200 OK
Content-Type: application/json

{
"sets": {
    "4d3559ec67504aaba65d40b0363faad8":
        "eyJhbGciOiJub25lIn0.
        eyJqdGkiOiI0ZDM1NTllYzY3NTA0YWFiYTY1ZDQwYjAzNjNmYWFkOCIsImlhdCI6MTQ
        1ODQ5NjQwNCwiaXNzIjoiaHR0cHM6Ly9zY2ltLmV4YW1wbGUuY29tIiwiYXVkIjpbIm
        h0dHBzOi8vc2NpbS5leGFtcGxlLmNvbS9GZWVkcy85OGQ1MjQ2MWZhNWJiYzg3OTU5M
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        "eyJhbGciOiJub25lIn0.
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    }
}

sets フィールドの各キーが jti になります。

OpenID RISC Profile Specification 1.0 - draft 02

RISC では以下のイベントが定義されています。

  • クレデンシャルの変更が必要になった
  • アカウントが削除された
  • アカウントが無効化された
  • アカウントが有効化された
  • Identifier が変わった
  • Identifier が再利用され新しいユーザーに紐付いた
  • クレデンシャルが漏洩した
  • リカバリのフローが有効化した
  • リカバリの情報が変わった
  • セッションが無効化された
    • deprecated
    • CAEP の session-revoked を使うこと

ユーザーがイベントの送信をオプトイン/オプトアウトできるようにすべきだという記載があり、これに関連するイベントも定義されています。

  • オプトインした
  • オプトアウトを開始した
  • オプトアウトがキャンセルされた
  • オプトアウトした

OpenID Continuous Access Evaluation Profile 1.0 - draft 02

CAEP では以下のイベントが定義されています。

  • セッションが無効化された
  • トークンの Claims が変わった
  • クレデンシャルが変わった
  • AAL が変わった
  • デバイスの適格/不適格が変わった

参考資料

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