Windows 10のHyper-V クイック作成、事実上の終了を迎える
linux-vm-toolsのリポジトリがアーカイブに
1月29日にMicrosoftが管理するlinux-vm-toolsのリポジトリがアーカイブになりました。それまで登録されていたissueはすべて強制的に終了し、Pull requestは有用かつ即適用できるものがあるにも関わらずすべて放置となりました。
これは一体何を意味するのでしょうか。
Hyper-Vクイック作成
Windows 10 Pro以上のエディションではハイパーバイザーであるところのHyper-Vが使用できます。さらに「Hyper-Vクイック作成」という仮想マシンのテンプレート選択する機能もあり、随時更新されていってました(たぶん過去形)。
Hyper-Vクイック作成の画像
Windows 10があるのは当然として、Ubuntuもあります。サポートが終了している19.10があるのはMicrosoft流のギャグなんでしょうか。未だにWindows 7を使い続けている人もいるのだから、サポートが終わっているバージョンも必要やろ、みたいな。
Hyper-Vの拡張セッション
Hyper-Vには拡張セッションという機能があり、これを有効にするとホストOSとゲストOSをシームレスに使用することができます。VirtualBoxではGuest Addtionsを、VMwareではVMware Toolsをインストールするとできるあの機能みたいなものです。
Hyper-Vにはこれらのツールに準じるものは存在せず、Ubuntuではxrdpをインストールすることによって実現しています。またそのためにxrdpに対してMicrosoftが直接Pull Requestを出しています。こっちはcloseされているのが微笑ましいですが。そのコードは0.9.5でリリースされています。
xrdpはさまざまなところで使われているため、Hyper-V向けに専用の設定をする必要があります。その設定を行うためのシェルスクリプト群が、linux-vm-toolsとなります。
linux-vm-tools
このように当初はHyper-Vクイック作成用のテンプレートに必要なスクリプトとして公開されましたが、要するにxrdp 0.9.5以降とこのスクリプトがあればどのLinuxディストリビューションでもHyper-Vの拡張セッションを有効にできるじゃないか、ということでArch Linuxのスクリプトが追加されているところが微笑ましいです。
linux-vm-toolsの問題点
Ubuntu 18.04 LTSや19.10のテンプレートであれば拡張セッションを有効にできていましたが、20.04 LTSではできていません。これを修正するPull Requestも提出され、確かに拡張セッションを有効にすることができていましたが(確認済)、結局マージされることなくアーカイブされました。
この問題はCanonicalでも認識しているようです。
イメージの作成元
ところでこの仮想マシンのイメージはどこが作成しているのでしょうか。作成スクリプトをどこかで見た覚えがありますが、忘れてしまいました。しかしイメージの配布元はpartner-images.canonical.comで、Canonicalであることが推測できます。
Microsoftの対応
Microsoftの対応はお世辞にも褒められたものではありません。
まず、極めて有用なPRが出ているにも関わらず放置してリポジトリをクローズしてしまったこと、しかもその理由がいつ使えるようになるのかわからないWSL2のGUIサポートであり、せめて正式なリリースを待ってからでもよかったのではないでしょうか。
xrdpの開発者である@metaleftyさんによると、xrdpでも
とのことで、メンテナンスする気がないコードを入れるというのはどうかなと思います。
Apache OpenOfficeをいいだけ食い物にし、さっさと捨てたIBMの所業を彷彿とさせますが(このあたりはgihyo.jpの記事をご覧ください)、明確に終わりであることがわかるようにしただけMicrosoftのほうがまだマシかも知れません。
ユーザーの対応
Hyper-Vクイック作成のUbuntu 20.04 LTSを使用する場合は、拡張セッションが動作しないので自分でがんばりましょう。というか、将来性がないので使用しないほうがいいかも知れません。
参考
Ubuntu Weekly Recipe 第549回 Windows 10 のHyper-VにUbuntu 18.04 LTSをインストールする
Ubuntu Weekly Recipe 第621回 Ubuntu 20.04 LTSでxrdpを使用する
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