EUの規制でiOS/iPadOSブラウザのWebKit縛りが撤廃され将来WebXR Device APIが動作するようになるかもしれないお話
Bloomberg 2022-12-14 04:02 JST 付の「Apple to Allow Outside App Stores in Overhaul Spurred by EU Laws」という記事で、EU の規制によって iOS/iPadOS ブラウザの WebKit 縛りが撤廃されるかもしれない話が取り上げられていました。
いくつかの日本語メディアで Bloomberg を一次ソースとした記事が公開されています。
WebKit 系の Safari と Blink 系の Chrome
iPhone/iPad には Apple 標準ブラウザとなる Safari が搭載され、そのレンダリングエンジンは WebKit です。
この WebKit は 2022-12-18 JST 現在、WebXR Device API に対応していません。正確には設定を変更することで WebXR Device API のフラグは立ちますが、immersive-vr
も immersive-ar
も動作しません。
対して Android 系には標準ブラウザとして Chrome が搭載され、そのレンダリングエンジンは Blink です。この Blink は WebKit から派生したレンダリングエンジンですが、WebKit に対して思うところがあって派生したこともあり、機能の実装が早いです。WebXR Device API にも対応しています。
iOS/iPadOS ブラウザの WebKit 縛りとはなにか?
iOS/iPadOS と Android 系で標準搭載されているレンダリングエンジンが異なっている他、iOS/iPadOS の場合、『ブラウザのレンダリングエンジンは WebKit を使わなければならない』というルールがあります。
iOS/iPadOS の Apple Store を覗くと、Google Chrome や Mozilla の Firefox がインストールできますが、これらのアプリに使われているレンダリングエンジンは WebKit です。
Android 版の Chrome (Blink) や Firefox (Quantum) であれば、一定の条件はあれどスマートフォンで WebXR Device API を使った WebXR コンテンツを動作させられますが、iOS/iPadOS では叶いません。
EU の規制で iOS/iPadOS ブラウザの WebKit 縛りが撤廃される?
EU と US の IT 企業はこれまでにも色々とやりあっていて、その結果が「Digital Services Package」であり、例えば Apple に対しては Lightning を撤廃して USB-C に統一する法案を成立させています。従わなければ EU 圏内で iPhone を販売できなくなるため、従わざるを得ません。
そして規制の対象は USB-C への統一だけではなく、ブラウザの WebKit 縛りにも及ぶため、もしかすると将来 Blink を搭載した “本当の” Chrome や、Quantum を搭載した “本当の” Firefox がリリースされるかもしれない、というお話です。
Blink を搭載した iOS/iPadOS 版 Chrome が登場することと、iOS/iPadOS で WebXR Device API が使えるということは同等なのか?
同等ではないと考えています。ユーザーに設定変更やアプリのインストールを求めるのは、よっぽどの強い理由がない限り離脱の要因となるため、仮に iOS/iPadOS で Blink 搭載の Chrome が使えるようになったとしても、WebXR Device API を使った WebXR コンテンツを展開するのは難しいのではないでしょうか。
今後、レンダリングエンジンの WebKit 縛りをきっかけにして WebKit への WebXR Device API 実装が加速してくれると嬉しいですが、ともすれば『レンダリングエンジンを自由にしたのだから WebKit でできないことは別のレンダリングエンジンでやってください』のようなメッセージングもできてしまうので、『Apple さん、頼む』という気持ちでいっぱいです。
現場からは以上です!
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