
レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置を使いこなす
本書は、初めてレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置を使用される皆様が、この装置で何が出来て、何が出来ないのかを正確に理解して頂くことで、装置を十分に活用して成果を出して頂けるようにと書きました。この装置は、サンプル粒子群にレーザー光を照射したとき、どの方向にどれだけの強さの光が散乱されるかを測定することによって、サンプル粒子群の粒子径分布を「推測」する装置です。したがって、装置から得られるのは、あくまで「推測値」であり、その値が100%正しい保証は、有りません。そういった意味では、「測定装置」というより「モニター」と言った方が正確かも知れません。にもかかわらず、装置の価格は安いものでも数百万円、高いものは1000万円以上します。初めてこの装置を知った方の中には、「正確に測れる保証もない装置に、なぜそんな大金を払うのか?」と疑問に思われる方も多いと思います。その理由は、「再現性」と「簡便さ」です。他の分析装置と違い、粒子径分布測定においては、測らなければならない対象(粒子)の数が多すぎます。統計的に再現性のあるデータを得るには、粒子径分布にもよりますが、多くの場合、数千個から数万個の粒子のサイズを測定しなければなりません。一つずつの粒子を個別に測定する方法を「カウンティング法」と呼び、画像解析や、電気抵抗、単一粒子からの散乱光を計測する方法がありますが、これらの方法で測定するには、非常に長い時間を要します。その点、レーザー回折のように、多くの粒子を一度に測定できる方法(「アンサンブル法」と呼びます)では、数秒から1分程度で、非常に再現性の良いデータを得ることが出来ます。粉体を扱う工業においては、その粉体の正確な粒子径が何μmであるかよりも、「いつもと同じものが出来ているのか」「粗大粒子が含まれていないか」などを簡便かつ確実にチェックできる方法が必要とされる場面が多々あり、そのような場面で、この装置は必要とされています。 本書では、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置の原理、使い方、注意点、データ解釈に至るまで、少しでも広い範囲を網羅できるように書きました。通常のメーカー発信の情報のように、装置の長所のみでなく、欠点も包み隠さず記述しました。ややこしい数式は極力排除し、誰にでも理解して頂けるよう、書きました。装置活用の手助けになれば幸いです。
第1章 レーザー回折・散乱法の基礎事項
第2章 測定装置の構成
第3章 測定の注意点と最適な測定手法の決定
第4章 粒子径分布データにおける各種定義
第5章 測定データの解釈とその運用
第6章 特殊なサンプリング方法による測定
第7章 プロセスでのインライン・オンライン測定
第8章 シミュレーションによるレーザー回折・散乱法の理解

レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置の開発を10年、同装置のマーケティングを12年やってきました。この装置について詳しい教科書が無いので、知っていることを書いておきたいと思います。よろしくお願いします!