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VSCode + LaTeX Workshop + GitHub + GitHub Copilotで論文執筆を快適にする

に公開

1. はじめに

論文執筆には VSCode + LaTeX の組み合わせが最適です。WordよりもLaTeXが優秀で、さらにVSCode環境により従来のLaTeX執筆の課題を解決できます。

Word vs LaTeX+Copilot比較

項目 Word LaTeX + Copilot
数式入力 煩雑 AI補完で効率化
参考文献管理 手動 BibTeX自動管理
バージョン管理 困難 Git統合
フォーマット 不安定 一貫性+リアルタイムプレビュー
執筆支援 なし AI による自動補完

本記事で構築する環境:

  • ✅ リアルタイムLaTeXプレビュー
  • ✅ AI による執筆支援(GitHub Copilot)
  • ✅ Git による確実なバージョン管理

公式サイト: https://code.visualstudio.com/


2. 必要なツール

インストールするもの

🛠️ 基本ツール

  1. Visual Studio Code - メインエディタ
  2. GitHub Desktop - GUI バージョン管理(任意)

📦 VSCode拡張機能

  1. LaTeX Workshop - LaTeX統合環境(LaTeX自動インストール対応)
  2. GitHub Copilot - AI執筆支援(拡張機能のインストールとサインインが必要)

3. VSCodeの基本セットアップ

VSCodeのインストール

VSCode公式サイト からダウンロードしてインストールします。

基本設定

1. 日本語化(任意)

  1. Ctrl+Shift+P でコマンドパレットを開く
  2. 「Configure Display Language」→「ja(日本語)」を選択
  3. VSCodeを再起動

2. GitHub連携の設定

GitHub CLI をインストールしてログインします:

# GitHub CLI のインストール
# Windows (winget)
winget install GitHub.cli

# macOS (Homebrew)
brew install gh

# Ubuntu/Debian
sudo apt install gh

# ログイン
gh auth login

4. LaTeX Workshop設定

拡張機能のインストール

VSCodeで Ctrl+Shift+X を押して「LaTeX Workshop」を検索・インストールします。

LaTeX環境のインストール

Windows

# MiKTeX(推奨)
winget install MiKTeX.MiKTeX

macOS

# MacTeX
brew install --cask mactex

Linux

# TeX Live
sudo apt install texlive-full    # Ubuntu/Debian
sudo dnf install texlive-scheme-full  # Fedora

基本設定

VSCode設定(Ctrl+,)で「latex-workshop」を検索し、以下を設定:

{
    "latex-workshop.latex.autoBuild.run": "onFileChange",
    "latex-workshop.latex.autoClean.run": "onBuilt",
    "latex-workshop.view.pdf.viewer": "tab",
    "latex-workshop.latex.recipes": [
        {
            "name": "ptex2pdf",
            "tools": ["ptex2pdf"]
        }
    ],
    "latex-workshop.latex.tools": [
        {
            "name": "ptex2pdf",
            "command": "ptex2pdf",
            "args": [
                "-interaction=nonstopmode",
                "-l",
                "-ot",
                "-kanji=utf8",
                "-synctex=1",
                "%DOC%"
            ]
        }
    ]
}

便利なショートカット:

  • Ctrl+Alt+B: ビルド実行
  • Ctrl+Alt+V: PDFプレビュー表示

5. GitHub連携の設定

リポジトリの作成・初期化

方法1: GitHub CLI を使用(推奨)

# 新しいプロジェクトフォルダを作成
mkdir my-paper && cd my-paper

# GitHubリポジトリを作成(プライベート)
gh repo create my-paper --private --clone

# LaTeXファイルを用意

# 初期コミット
git add .
git commit -m "Initial commit"
git push

方法2: VSCodeのGit機能を使用

  1. 新しいフォルダを作成して VSCode で開く
  2. main.tex ファイルを作成
  3. Ctrl+Shift+G でソース管理パネルを開く
  4. 「リポジトリを初期化」をクリック
  5. 「GitHubに公開」をクリックしてリポジトリ作成

VSCodeでのGit操作

VSCodeの統合Git機能で簡単に管理:

  1. Ctrl+Shift+G でソース管理パネルを開く
  2. 変更ファイルの「+」でステージング
  3. コミットメッセージを入力して「✓」でコミット
  4. 「同期」ボタンでプッシュ

バックアップとバージョン管理のベストプラクティス

定期的なコミット習慣

# 毎日の作業終了時
git add .
git commit -m "日付: 作業内容の簡単な説明"
git push

# 重要な節目での タグ付け
git tag -a v0.1 -m "初稿完成"
git push --tags

.gitignore の設定

プロジェクトルートに .gitignore ファイルを作成:

# LaTeX 中間ファイル
*.aux
*.bbl
*.blg
*.log
*.out
*.toc
*.synctex.gz
*.fdb_latexmk
*.fls

# PDF ファイル(必要に応じて)
*.pdf

# OS 固有ファイル
.DS_Store
Thumbs.db

# VSCode 設定(共有したくない場合)
.vscode/settings.json

6. GitHub Copilot学生プランの活用

学生プランの申請方法

GitHub Copilot は学生・教育者は無料で利用可能です:

  1. GitHub Education にアクセス
  2. 「Get benefits」をクリック
  3. 学生証明書類をアップロード(学生証、在学証明書等)
  4. 承認後、GitHub Copilot が無料で利用可能

申請ページ: https://education.github.com/discount_requests/application

注意: 申請から承認まで数日〜数週間かかる場合があります。学期開始直後は審査が混み合う傾向があるため、早めの申請を推奨します。承認待ちの間は、個人向けプランや体験版(提供状況により異なる)の利用を検討してください。

VSCode での Copilot 設定

  1. VSCode で GitHub Copilot 拡張機能をインストール
  2. Ctrl+Shift+P → 「GitHub Copilot: Sign in」
  3. ブラウザで GitHub にサインイン
  4. 認証完了後、VSCode で利用開始

⚠️ 重要な注意事項

データのオプトアウト設定

GitHub Copilotは学習データ改善のため、コードを収集する場合があります。学術研究や機密情報を扱う場合は、以下の設定を推奨:

  1. GitHub設定 にアクセス
  2. 「Allow GitHub to use my code snippets for product improvements」を 無効化

学術利用での注意点

  • 研究内容の機密性: 未発表の研究データや手法は慎重に扱う
  • 著作権への配慮: 生成されたコードや文章の権利関係を確認
  • 指導教員との相談: Copilot使用について事前に相談することを推奨

7. 推奨拡張機能とトラブルシューティング

追加で役立つ拡張機能

よくある問題と解決方法

LaTeX コンパイルエラー

問題: Package not found エラー

# MiKTeX の場合
mpm --install=パッケージ名

# TeX Live の場合
tlmgr install パッケージ名

問題: 日本語が表示されない、または文字化けする
解決法:

  1. 本記事で設定したptex2pdfを使用している場合、以下を確認:
    • ファイルの文字コードがUTF-8になっているか(VSCode右下で確認)
    • LaTeX Workshopの設定で-kanji=utf8オプションが含まれているか
  2. pLaTeX/upLaTeX用のドキュメントクラスを使用:
    \documentclass{jsarticle}  % 日本語論文用
    % または
    \documentclass{jlreq}      % 日本語組版の要件に準拠
    
  3. 必要に応じて日本語フォント設定を追加:
    \usepackage[T1]{fontenc}
    \usepackage[utf8]{inputenc}
    

GitHub Copilot の問題

問題: 補完が表示されない
解決法:

  1. GitHub Copilot の認証状態確認
  2. ファイル形式が LaTeX として認識されているか確認
  3. 拡張機能の再読み込み


8. まとめ

本記事では、VSCode + LaTeX Workshop + GitHub + GitHub Copilot を組み合わせた論文執筆環境の構築方法を解説しました。

構築した環境で実現できること:

  • ✅ リアルタイムLaTeXプレビュー
  • ✅ AI による執筆支援
  • ✅ Git によるバージョン管理
  • ✅ 共同執筆・レビューの効率化

参考リンク:

GitHubで編集を提案

Discussion