Go の 構造体定義から Functional Options Pattern のコードを自動生成する CLI ツールを作った
Go でオプション引数を実現したいときによく Functional Options Pattern が使われるかと思います。このデザインパターンは便利な一方、構造体の中でオプション引数を用意したい全てのフィールドに対して、オプション引数用の関数を実装する必要があり、記述すべきコードが多くなりがちです。
この問題を解決すべく、Functional Options Pattern を実現するためのコードを自動生成する CLI ツール 「foggo」を作りました。
Functional Options Pattern とは
Go はそのシンプルな言語仕様から、オプション引数を提供していません。
オプション引数はデフォルト引数やオプションパラメータとも呼ばれ、Python だと可変長引数である *args
や *kargs
のことを指します。
通常の関数であれば特に問題ないのですが、構造体の初期化用の関数やライブラリを提供する際に、このような省略可能な引数が欲しくなる場合があります。
この省略可能な引数を Go で実現するために使われるのが Functional Options Pattern (FOP) です。
FOP は uber の Go Style Guide や go-patterns でも紹介されています。
以下に go-patterns で提示されている FOP の例を示します。
FOP では以下のようにオプションを定義する構造体、オプションのパラメータに値を代入する関数を返す高階関数、高階関数を可変長引数とする初期化用の関数を定義します。
利用者は初期化用の関数をオプション用の関数を引数に指定して実行します。
// Options
package file
type Options struct {
UID int
GID int
Flags int
Contents string
Permissions os.FileMode
}
type Option func(*Options)
func UID(userID int) Option {
return func(args *Options) {
args.UID = userID
}
}
func GID(groupID int) Option {
return func(args *Options) {
args.GID = groupID
}
}
// Contents, Permissions については省略
// Constructor
func New(filepath string, setters ...Option) error {
// Default Options
args := &Options{
UID: os.Getuid(),
GID: os.Getgid(),
Contents: "",
Permissions: 0666,
Flags: os.O_CREATE | os.O_EXCL | os.O_WRONLY,
}
for _, setter := range setters {
setter(args)
}
f, err := os.OpenFile(filepath, args.Flags, args.Permissions)
if err != nil {
return err
} else {
defer f.Close()
}
if _, err := f.WriteString(args.Contents); err != nil {
return err
}
return f.Chown(args.UID, args.GID)
}
// Usage
// emptyFile, err := file.New("/tmp/empty.txt")
// fillerFile, err := file.New("/tmp/file.txt", file.UID(1000), file.Contents("Lorem Ipsum Dolor Amet"))
また、上記のような FOP の実現方法では、オプション引数を関数で定義しているため、モックを使ったテストができないという問題があります。
以下の記事ではこの問題を解決するような FOP のパターンも提案されています。
(問題点については以下の記事をご参照ください)
これらの記事ではオプション引数を「オプション用のパラメータと apply
関数を持った構造体」として定義する方法が紹介されています。
package file
type Options struct {
UID int
GID int
Flags int
Contents string
Permissions os.FileMode
}
type Option interface {
apply(*Options)
}
type UIDOption struct {
UID int
}
func (o UIDOption) apply(s *Options) {
s.UID = o.UID
}
type GIDOption struct {
GID int
}
func (o GIDOption) apply(s *Options) {
s.GID = o.GID
}
// (Contents, Permissions については省略)
func New(filepath string, setters ...Option) error {
// 重複箇所については省略
...
for _, setter := range setters {
setter.apply(args)
}
...
return f.Chown(args.UID, args.GID)
}
Functional Options Pattern の実装に関する課題
FOP はオプションの数だけ「パラメータを代入する高階関数」や「オプション用の構造体 + apply
関数」を実装する必要があるため、オプションが多いとその分実装も膨れ上がります。
また、オプション引数は高階関数 または 構造体のパラメータを関数の引数のパラメータに代入する関数(apply
)で定義されており、初見だと若干理解しづらいと思います。
理解できるまでは導入に躊躇ってしまうかもしれません。
この冗長さ・導入までのハードルを解消するため、FOP を構造体定義から自動生成する CLI ツールを作りました。
foggo の紹介
foggo は Go の構造体定義から FOP を自動生成することができます。
go install
を使って以下のように導入します。
# foggo では自動生成したコードの整形に goimports を利用するため、先にインストールしてください
$ go install golang.org/x/tools/cmd/goimports@latest
$ go install github.com/s14t284/foggo@latest
foggo は fop と afop という2つのサブコマンドを提供しています。
fop は FOP の紹介で最初に触れたパターンのコードを自動生成することができます。
afop は apply
関数を実装する FOP のコードを自動生成できます。こちらの記事 で apply
関数を実装する FOP を Applicable Functional Options Pattern と命名されていたため、略称として afop としています。
使い方
foggo ではコマンドラインによる FOP の自動生成と go:generate
による自動生成の2つをサポートしています。
ここでは go:generate
による FOP の自動生成の方法を紹介します。
まず、オプションパラメータを用意したい構造体を以下のように定義します。
構造体を自動生成したい関数を定義しているファイルに go:generate foggo fop --struct {構造体名}
を記述してください。
package file
//go:generate foggo fop --struct Options
type Options struct {
UID int
GID int
// オプションを作成したくないパラメータには `foggo:"-"` タグを付与してください
Flags int `foggo:"-"`
Contents string
Permissions os.FileMode
}
その後、go generate
コマンドを実行します。
$ go generate ./...
実行後、file/options_gen.go
に以下のようなコードが自動生成されていると思います。
// Code generated by foggo; DO NOT EDIT.
package file
import "os"
type OptionsOption func(*Options)
func NewOptions(options ...OptionsOption) *Options {
s := &Options{}
for _, option := range options {
option(s)
}
return s
}
func WithUID(UID int) OptionsOption {
return func(args *Options) {
args.UID = UID
}
}
func WithGID(GID int) OptionsOption {
return func(args *Options) {
args.GID = GID
}
}
func WithPermissions(Permissions os.FileMode) OptionsOption {
return func(args *Options) {
args.Permissions = Permissions
}
}
あとは必要に応じて、自動生成された初期化用の関数とオプションを使って実装してください。
go-patterns のFOPの実装例を再現しようとすると、オプションの初期化用の関数に加え、オプションを使ってファイルオープン・ファイル書き込みを実施する関数を実装する必要があります。
package file
func NewFile(filepath string, options *Options) error {
flags := os.O_CREATE | os.O_EXCL | os.O_WRONLY
f, err := os.OpenFile(filepath, flags, options.Permissions)
if err != nil {
return err
} else {
defer f.Close()
}
if _, err := f.WriteString(options.Contents); err != nil {
return err
}
return f.Chown(options.UID, options.GID)
}
// 以下のように必要に応じてオプションを絞って構造体を初期化する関数を用意すると良い
func NewFileWithContentAndPermissions(filepath, content string, permissions os.FileMode) error {
options := NewOptions(
WithUID(os.Getuid()),
WithGID(os.Getgid()),
WithContents(content),
WithPermissions(permissions),
)
return NewFile(filepath, options)
}
afop
コマンドでの実行例は README を確認いただければと思います。
注意点
コード自動生成の都合から、以下のような課題があります。
- 可変長引数のみを持った関数を自動生成するため、オプション引数以外の引数を持った関数が必要な場合、別途、関数を実装する必要があります。
- デフォルト値をオプションを初期化する関数内で定義できないため、どれがデフォルト値か分かりづらい
それでも、FOPの実現のために記述すべきコードが減ることは有意義かと思います。
解決策がある方いらしたら意見をいただけますと幸いです。
終わりに
FOP を自動生成する CLI ツール foggo の紹介でした!
foggo を使って FOP を実現するための単純作業から解放される方が1人でもいらしたら幸いです。
改善案などありましたら、PR や Issue もぜひお願いします。
参考
- エキスパートたちのGo言語 (FOPやコードの自動生成はこの本で知りました)
- gonstructor (コンストラクタを自動生成するCLI。このCLIツールからfoggoの着想を得ました)
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