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Webアクセシビリティの必要性を伝える材料になりそうな情報をまとめてみた

2022/12/20に公開約9,300字

初めに

こんにちは。

私はHOTAKEと申します。

私は今企業で主にサーバーサイドやインフラを構築するエンジニアとして働きながら、興味があるアクセシビリティに関して調べたり、勉強をおこなったりしています。

業務ではフロントエンド側はほとんど触れないのですが、個人的にはフロントエンド技術にとても興味があり、勉強しています。

特にアクセシビリティに興味があり、アクセシビリティを社内に広げるためにオーサリングプラクティスを用いた勉強会を開くなどしました。

勉強会の記事は以下になります。

主催した社内勉強会の課題でアクセシビリティ的に優れているTODOリストの課題を出した話

社内勉強会で出題した「アクセシビリティに考慮したツールバーとテキストボックス作成課題」の話

興味があれば是非見ていただければと思います。

今回はアドベントカレンダーに参加させていただきましたが、私自身アクセシビリティ初心者なのでお手柔らかにお願いいたします。

本記事を書くにあたって

アクセシビリティはとても重要であり、全てのプロダクトで取り入れられると良いものだと思っています。

しかし、残念ながら、企業として費用対効果が望めなければそんなものは必要ないと言われてしまう可能性も多い分野だと思います。

実際にTwitterの解雇ではアクセシビリティ関連の部署が真っ先に解雇されてしまっています。

Twitter’s Layoffs Are a Blow to Accessibility

これが企業の利益を考えてのことなのかは議論の余地がありますが、現状は必要がないと認識された可能性は捨てきれないと思っています。

そのため、今回この記事では、アクセシビリティを取り入れていく初めの段階で社内の周りの人を説得できる材料(データや事例)をまとめてみようと思っています。

ヒューマンケースとビジネスケース

GoogleのGoogle流 ダイバーシティ&インクルージョン インクルーシブな製品開発のための方法と実践という本があります。この本はインクルーシブなプロダクトを作成するにはどうすれば良いのかGoogle社内の事例などをもとにまとめたものになっております。

この本に記述されていたヒューマンケースとビジネスケースというものが非常に勉強になったため、今回はヒューマンケースとビジネスケースを作ることを前提として、使えそうな情報をこの二つのケースに分けて説明しようと考えています。

そのため、この章ではまず、ヒューマンケースとビジネスケースについて説明できればと思います。

ヒューマンケースとは

ヒューマンケースは本の中で以下のように述べられています。

一般的には、歴史的に見過ごされてきた消費者にとって、以下にプロダクトインクルージョンが重要かを説明するストーリー。

実際の消費者の体験をベースに説得を行うための物語を作るのがヒューマンケースの方法です。

本の中ではヒューマンケースの作成について以下の手順で行うと良いと記述されています。

  1. 現実の消費者の発している意見(希望、ニーズ、不満)を知る
  2. 集めた情報から傾向を見定める
  3. 現在提供されているプロダクトやサービスから排除されたり、無視されたりした経験に関するストーリーを少なくとも一人分作る

ビジネスケースとは

ビジネスケースは本の中で以下のように述べられています。

プロダクトインクルージョンのメリットを、ビジネスの観点から示す詳細な情報

ヒューマンケースとは違い、実際にビジネスに関係するデータなどをもとに利益などをベースに説得するための物語を作るのがビジネスケースになります。

本の中ではビジネスケースの作成について以下の手順で行うと良いと記述されています。

  1. 実際の消費者が希望、ニーズ、課題など何を語っているのかを見極める
  2. インクルージョンのビジネスケースを裏付けるデータを収集する
  3. データを整理して効果的なプレゼンテーションを行う。必要に応じて、よりインパクトを与えられるデータ可視化ツールを活用する。

どちらのケースも、本来であれば実際の消費者にアンケートを取るなどしてデータ収集をすることでケースを作っていくものです。
今回の記事ではあくまで社内でアクセシビリティについて何も浸透していない状態で周りの人を説得できるような材料を提示しようと考えているため、どちらのケースも汎用的に説明に使えると思えるものをいくつか書いていければと思います。

情報を紹介する前に話しておきたいことについて

本記事では今までウェブに関して除外されることが多かった人々に対してアクセシビリティがどのような利点があるのか説明するのに使用できる材料をピックアップしています。そのため、除外されがちな人々のデータや資料などを主に紹介します。

しかし、本来アクセシビリティはハンディキャップを抱えた人のみのためのものではなく、「全ての人のためのもの」であることをここで誤解のないように述べておきます。

ヒューマンケースを作るのに参考になる情報

W3Cの実際のweb利用談

Stories of Web Users

W3Cの上記資料では実際に障害のある方々がwebを利用する上でどのような困難に合うかといった利用談を知ることができます。
例えば、色覚障害を持っているリーさんの事例では、

赤と緑の色の組み合わせが使用される場合、リーはどちらも茶色に見えるため、2つを区別できません

という体験が話されこれに関して、

適切なコントラストを使用し、ブラウザでコントラスト設定を調整できるオンライン コンテンツとアプリを使用することで、より良いエクスペリエンスを得ることができます。

という実際の解決策が述べられます。

さまざまな事例が載っているため、とても参考になると思います。
今回、あまりヒューマンケースに当たるような事例があまり見つからなかったのですが、上記のサイトの情報だけでも十分ヒューマンケースを作ることができると思います。

高齢者のユーザビリティについて分析した研究

高齢者のユーザビリティ:課題と変化

上記の研究では実際に高齢者を被験者としてユーザビリティの研究を行い、どんなことに困ったかを分析しています。
実際に高齢者にアンケートをとった結果となっているため、課題感を紹介する資料として使用することができると思います。

ビジネスケースを作るのに参考になる情報

市場規模や利用率のデータ

高齢者の方

高齢者の数と市場規模

みずほコーポレート銀行 産業調査部 Ⅲ-3.高齢者向け市場(2012年)
資料では、高齢者向け事業の市場規模が分析されており、以下のように記述されています

高齢者向け市場を、「医療・医薬」「介護」「生活産業」の 3 つの事業分野における高齢
者(65 歳以上)の消費市場と定義した場合、2025 年の市場規模は高齢者人口の増加を
背景に 100 兆円規模に拡大する見通し。

この資料では高齢者の市場規模が大きく、アクセシビリティを取り入れて高齢者にも使いやすいシステムにする必要性を示せる可能性があります。

高齢者のインターネット利用率

高齢者のインターネット利用率:NICT

資料では高齢者のインターネットの利用率が掲載されており、令和3年度では以下のように記述があります。

国民全体の利用率82.9%に対して、65歳以上の利用率は53.4%、60~69歳でインターネットを利用している割合は84.4%と8割を超えている。

このデータと前述の市場規模のデータを組み合わせてビジネスへの重要性を示すことができる可能性があります。

障害者の方

障害を抱えた人々のインターネット利用率

障害者によるインターネットの利用率

上記の情報通信研究機構の記事では平成24年までの障害を抱えた人々のインターネット利用率のデータが載っています。
これによると約半数以上の障害者の方が平成24年の段階でインターネットを利用していることがわかります。

障害を持った人の割合

参考資料 障害者の状況
上記の資料では令和4年度の障害者の人口当たりの人数に関するデータが確認できます。
それによると、

これを人口千人当たりの人数でみると、身体障害者は34人、知的障害者は9人、精神障害者は
33人となる。複数の障害を併せ持つ者もいるため、単純な合計にはならないものの、国民のおよ
そ7.6%が何らかの障害を有していることになる。

直接的なデータとしては用いれないかもしれませんが上記のインターネット利用率と人口割合のデータはプロダクトにアクセシビリティを取り入れることでどれだけの人々に使ってもらえる可能性が増えるかといったことを示すことに使用できるように思います。

LGBTQの市場規模

電通、「LGBTQ+調査2020」を実施 - News(ニュース) - 電通ウェブサイト

上記の資料ではLGBTQの人々の市場規模が載っています。それによると、

LGBTQ+層の消費パワーをはかる19カテゴリーの市場規模は5.42兆円

とあります。こちらも他の情報と同じように、アクセシビリティを高めることで多くのユーザを取り込み、利益に影響する可能性を示せると思います。

W3Cのアクセシビリティ事例

The Business Case for Digital Accessibility

上記のW3Cの資料ではビジネスケースに用いることができる実際の企業の事例を知ることができます。

資料の中ではAppleやGoogleなどの企業が実際にアクセシフルなプロダクトを作成したことにより成功した事例が紹介されており、事業に取り入れた際の一例として良いモデルケースを示せる可能性があります。

SEO対策としてのアクセシビリティ

アクセシビリティを向上させることはマシンリーダビリティを上げることにも繋がります

このことからGoogle検索エンジンに内容を読んでもらい、よりSEOの高いサイトの作成ができると言われています。
アクセシビリティとは? - ウェブ開発を学ぶ - MDN Web Docs

• 意味論的 HTML (これはアクセシビリティを改良します) は SEO の改善にもなり、サイトがもっと発見しやすいものになります。

HTML: アクセシビリティの基礎 - ウェブ開発を学ぶ - MDN ...**

  1. SEO に関しても良好である——検索エンジンは、非意味的な <div> などに含まれるキーワードよりも、見出しやリンクなどの中のキーワードの方に重みを持たせているので、ドキュメントが顧客に見つけてもらいやすくなるでしょう。

ウェブにおいて検索結果に載ってくることは重要なことです。

SEOはサイトが検索結果に表示されるために不可欠であることはウェブの事業をおこなっている人は知っていることが多いと思います。

そのため、SEOの話題を出し、検索結果に反映されやすいといった話をすることも一つのビジネスケースになり得ると思います。

アクセシビリティに取り組めている企業割合

総務省の統計で見る日本企業のWebアクセシビリティの認知度

全体のデータとして、22.6%がWebアクセシビリティを知っていて何らかの取り組みをしている一方で、51.7%はWebアクセシビリティを知らないと回答しています。

Web関連企業従事者を対象にしたアンケートが2021年に公開されています。(freee・サイバーエージェント・サイボウズ、 Webアクセシビリティに関する調査結果を公開
) このアンケートによれば、Webアクセシビリティについて、「内容を知っている」と答えたのが38.0%、「知らない」と答えたのが29.3%という結果でした

内容自体が知られていないことが多く、始めることは一つの外部へのアピールとなると思います

また、他の会社がやっていない分、身体的な障碍を持った方々にサービスを使ってもらえることが考えられるため、このデータとハンディキャップを抱えた人々の数のデータなどから事業における利益規模などを実際に算出することで説得材料になるのではないでしょうか。

海外の訴訟件数など

Webアクセシビリティ提訴件数、米国では昨年の2.8倍に。法律で義務づけられる海外の現状[CSUNレポート](2019)
米国などでは法が整備されており、上記のような訴訟件数が増えているニュースがあります。
また、多くの国で法律の対応が始まっています。
年度別の法律のデータは以下にまとめています

年度別

2015年時点

Webアクセシビリティ海外の気になる動きと日本国内の最新動向(2015)

海外諸国で進む法律による義務化
- カナダ(オンタリオ州)
- オーストラリア
- ニュージーランド
- アメリカ
- 韓国 など

2017年時点

AccessU 2017: World Tour of Accessibility Policy and Standards

国内・海外のウェブアクセシビリティの状況

前述した法整備が進む北米はもとより、ヨーロッパやアフリカ、オーストラリア、アジア諸国でも法整備が高まっていることがわかる。訴訟が最も多いのは前述のとおり北米だが、フランスの例もあり、今後各国で具体的な罰則などが盛り込まれる可能性は十分にあり得る。

ちなみに上記のサイトでは以下のようにも述べられています。

現状の障害者差別解消法では公的機関は義務、民間企業に対しては努力義務としている。公的機関のウェブサイトに対しては、総務省が「みんなの公共サイトガイドライン」を策定し、達成期日を設けるなど2016年施行時から国の機関(府省庁)や都道府県、市区町村などの地方公共団体に対し指導し、ウェブアクセシビリティ対応の推進をしている。

上記の二つの資料を組み合わせることで今後日本でも法律が施行される可能性が高く、ビジネスとして早くから手を打っておくと良いということをデータで示せる可能性があります。

アクセシフルであることがビジネスに良い影響を与えることを示すデータ

Data from: Inclusive ads are affecting consumer behavior, according to new research**

上記はGoogleが多様性のある広告の効果を研究した結果になります。

これによると、多様性を取り入れた広告はその広告で宣伝されているプロダクトに対して全ての人々がアクションを起こしやすくなる効果があるという結果が示されています。

例えばこのデータを示して、プロダクトを多様性のある人々にも使ってもらえるように作成し、それを強みとして宣伝を打つことで、消費者にプロダクトへのアクションをとってもらいやすくなるといったことが考えられます。

まとめ

今回の記事ではアクセシビリティの重要性を周りに伝えるための説得材料として使用できそうなウェブ上の資料を紹介しました。

この他にも探せば色々と資料はあると思いますので、追記などできたらなと思っています。

また、他に有用な資料を知っている方がいらっしゃったら、ぜひコメントなどに書いていただければと思います。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

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