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SentryのAI - Seerの紹介

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🤖 Sentry Seer正式リリース──94.5%精度のAIデバッグエージェントが開発現場を変える

はじめに

みなさんは、実はSentryがAIの機能を出していることをご存知でしょうか?
最近、MCP(Model Context Protocol)が注目を集める中、SentryもMCPサーバーをリリースしました。しかし、それをさらに上回る包括的なAI機能を持つツールが登場しています。それが「Seer」です。

Microsoft Researchの最新研究によると、Claude 3.7 SonnetやOpenAIのo3-miniを含む最新のAIモデルでも、SWE-bench Liteベンチマークのソフトウェアデバッグタスクの半分以上を解決できないことが明らかになっています。研究者らは、この原因を「デバッグトレースなどの逐次意思決定行動を表現するデータの不足」と分析しています。

Sentry Seerが正式リリースされました。Seerは、本番環境で実際に発生する問題を、包括的なコンテキストとともに理解し、解決するAIデバッグエージェントです。

本記事では、Seerの技術的特徴と実際の効果について解説します。

結論:Seerの主要な特徴

Seerは94.5%の精度で根本原因を特定するAIデバッグエージェントで、以下の特徴があります:

  • 本番環境のエラーに対する根本原因分析(Root Cause Analysis)
  • コード修正案の提示(必要に応じてPR作成)
  • 問題の自動検出・自動修正(オプション設定)
  • 実際のエラーへの対処(仮定のバグではない)

なぜAIデバッグエージェントが必要なのか

従来のデバッグの課題

開発現場でよく発生する問題:

課題 詳細
根本原因特定の困難 スタックトレースだけでは文脈が不足
時間の消費 デバッグに大量の時間を要する
マルチサービス環境での複雑性 フロントエンド・バックエンド間での原因究明が困難
技術的負債の蓄積 小さなバグが放置され、システム全体に影響

Microsoft Researchの研究では、デバッグツールを利用できる環境でも、AIエージェントがSWE-bench Liteの300のデバッグタスクの半分以上を解決できないことが示されています。研究者らは「現在のLLMトレーニングコーパスには、逐次意思決定行動(デバッグトレースなど)を表現するデータが不足している」と指摘しています。

Seerの技術的革新性:包括的コンテキスト分析

従来ツールとの技術的差別化

項目 GitHub Copilot/Cursor Sentry Seer
分析対象 コードベースのみ 本番エラー + Sentryの全文脈
対象 静的コード解析 実際に発生した本番エラー
出力 コード補完・提案 根本原因 + 修正提案 + (オプションで)PR
主導 開発者の手動操作 エラー検出時に自動トリガー可能
スタック対応 単一リポジトリ中心 マルチリポジトリ・全体スタック分析
タイミング 開発時 本番環境での実際の問題発生時

Seerが分析する包括的なコンテキスト

Seerが分析に活用するデータソース:

従来のAIツールがコードファイルのみを参照するのに対し、Seerは本番環境で実際に動作しているアプリケーションから得られる豊富な実行時情報を活用します。これにより、「なぜそのエラーが発生したのか」という根本原因を、実際の動作環境を踏まえて特定できるのです。

公式ベンチマークによる効果測定

定量的な効果指標

精度と効率性

  • 根本原因特定精度: 94.5%(公式ベンチマーク)
  • 対応言語: Assembly〜Zig(Sentryサポート全スタック)
  • 利用組織: 130,000+(Sentry利用組織)

時間効率の改善

# 公式発表データ
Average Debug Time Reduction: 30 minutes per issue
Developer Time Liberation: 30-40% of debugging time
MTTR Improvement: Significant reduction
24/7 Operation: Automated issue resolution

実際のユースケース例

Step 1: 根本原因の自動分析

Sentryのイシューページで「Find Root Cause」ボタンをクリックすると、Seerが自動的に分析を開始します。スタックトレース、関連するトレーシングデータ、ログ、コミット履歴を総合的に解析し、94.5%の精度で根本原因を特定します。分析中も進捗がリアルタイムで表示されます。

Step 2: 修正コードの生成

根本原因が特定されると、「Code it up」ボタンが表示されます。これをクリックすると、Seerが特定した問題に対する具体的な修正コードを生成します。単なるコード提案ではなく、分析されたコンテキストに基づいた、実際に問題を解決する高品質なコードが提案されます。

Step 3: GitHub PRの自動作成

生成された修正コードを確認した後、「Draft PRs」ボタンをクリックすると、SentryからGitHubに直接プルリクエストが作成されます。PRには修正内容の説明、関連するイシューへのリンク、テストケースも含まれており、レビュワーが理解しやすい形で提示されます。

パフォーマンス問題の自動検出・修正

Seerは単純なエラー修正だけでなく、N+1クエリのようなパフォーマンス問題も検出・修正できます。これは、実行時のデータベースアクセスパターンやレスポンス時間を分析し、非効率なクエリパターンを特定できるためです。以下は実際の修正例です。

// 検出された問題: N+1クエリ
// Before: 非効率なクエリパターン
async function getUserProfiles(teamId: number) {
  const users = await User.findByTeam(teamId);
  const profiles = [];
  for (const user of users) {
    profiles.push(await Profile.findByUserId(user.id)); // N+1問題
  }
  return profiles;
}

// Seerの修正提案: 最適化されたクエリ
async function getUserProfiles(teamId: number) {
  const users = await User.findByTeam(teamId);
  const userIds = users.map(u => u.id);
  const profiles = await Profile.findByUserIds(userIds); // 1クエリに最適化
  return profiles;
}

技術仕様と導入要件

必須要件

# 導入に必要な要件
GitHub連携: ✅ 必須(GitLab、Bitbucket、Azure Reposは近日対応予定)
Source Maps: ✅ 推奨 (JavaScript/TypeScript)
Logs・Traces・Spans: ✅ Sentryに送信すること
Production Environment: ✅ 本番エラーでの利用を前提
Monorepo: ✅ 対応済み

MCP(Model Context Protocol)による拡張性

SeerはModel Context Protocolをサポートし、既存の開発環境との統合が可能です。最近では、VS CodeやGitHub Copilot、Cursorなど多くの開発ツールがMCP対応を進めており、開発者は様々なサービスからの情報を一元的に活用できるようになっています。
しかし、Seerが他のMCPサービスと決定的に異なるのは、テレメトリーデータへの直接アクセスです。DevinやCursorなどの一般的なAIコーディングツールでは、本番エラーを解析する際に、開発者がエラーログやスタックトレースを手動でコピー&ペーストする必要があります。これは非効率的で、重要なコンテキスト情報が漏れるリスクもあります。

一方、Seerは以下のテレメトリーデータに直接統合されているため、手動作業が不要です:

  • リアルタイムエラー分析:発生したばかりの本番エラーの詳細
  • 分散トレーシングデータ:マルチサービス間でのリクエスト追跡
  • パフォーマンスプロファイル:実際のボトルネック箇所の特定
  • 根本原因分析結果:94.5%精度での問題特定

つまり、他のツールが断片的な情報のコピー&ペーストに依存する中、Seerは包括的なテレメトリーデータに直接アクセスして、完全なコンテキストで問題を分析できるのです。これが、Seerの分析精度が94.5%という高い水準を実現できる理由の一つです。

{
  "mcpServers": {
    "Sentry": {
      "url": "https://mcp.sentry.dev/mcp"
    }
  }
}

よくある質問(公式FAQ)

🤔 「既存のAIツールとの使い分けは?」

回答

  • Seerは本番環境のエラーに対応し、仮想バグではない実際の問題を解決
  • Copilotは文脈を持たない静的解析、Seerはログ・スタックトレース・コードすべてを分析
  • 自動でバグを修正できるのはSeerの特徴

🔒 「セキュリティとプライバシー」

回答

  • Seerは生成AIのトレーニングに顧客データを使用しない
  • 使用するモデル(Gemini、Anthropicなど)はすべてGCPを通じて安全に制御
  • 出力は顧客自身のみが閲覧可能

🚫 「PR自動作成について」

回答

  • PR作成はオプション設定
  • 多くの開発者は提案を見て手動で修正
  • 根本原因分析だけでも価値がある

導入プロセス

セットアップ手順

# ステップ1: Sentry設定確認
1. Sentryアカウント(既存または新規作成)
2. GitHubリポジトリとの連携設定
3. Seer機能の有効化

# ステップ2: 運用開始
1. 本番エラーの監視開始
2. 分析結果の確認
3. 修正提案の検証・適用

ユーザーからのフィードバック

"It detected EXACTLY what was wrong, very nice feature."
「何が悪いのかを正確に検出してくれました。とても素晴らしい機能です。」

"One-shot fixed this error that I've spent the last 2 hours debugging"
「私が過去2時間もデバッグに費やしていたエラーを一発で修正してくれました。」

"Seer provided insights that led us to a fix within 30 minutes, for a bug that would have taken an engineer at least a day otherwise."
「本来なら少なくとも1日はかかったであろうバグを、Seerの洞察により30分で修正することができました。」

まとめ

SeerはAIデバッグの新しいパラダイムを示しています。従来ツールがコードのみを分析する中、Seerは本番環境のテレメトリーデータを活用し、94.5%の精度で根本原因を特定。推測ではなく事実に基づく分析により、開発者はより創造的な仕事に集中できるようになると確信しています。


参考リンク


本記事の内容は2025年6月時点の公式情報に基づいています。

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