🙄

Arduino Uno R4 Minima のハードウェアレビュー

2023/07/01に公開
3


2023年の6月に発売されたArduino UNO R4 MINIMAは、搭載マイコンを一新し回路内容も結構変わっています。R3の発売は2011年なので、12年ぶりのメジャーバージョンアップといったところです。
大きな違いは搭載マイコンがAtmel(現microchip)のATmega328Pから、ルネサスの車載用などに使われているRA4M1シリーズになりました。

R3→R4 MINIMA変更点

  • マイコンがATmega328PからR7FA4M1AB3CFM#AA0になった。
  • USB端子が、USB-BからUSB Type-Cになった。
  • USB接続がマイコン直結になった。
  • DC入力が12Vから24Vまで対応になった。
  • デバッグインタフェースのSWDが追加
  • シールド接続用のピンソケットにBOOTという線が増えた
  • 水晶振動子はパターンのみで、実装は無し。マイコン内蔵クロックで動いている

変更がない部分

  • DCジャック・ICSP・シールドピンソケット・リセットボタンの位置
  • マイコン電源が5V、信号線も5V
  • シールドピンソケットの並びもR3と同じ。機能的にも最大限互換性がある感じ。例えばA4/A5はSDA/SCLと共通ピンや、D13/D12/D11にはSCK/MISO/MOSIが割り当てられているところ

マイコン比較

ATmega328P R7FA4M1AB3CFM#AA0
プログラム メモリ サイズ 32 KB 256 KB
データ RAM サイズ 2 KB 32 KB
データ ROM サイズ 1 KB 8 KB
クロックスピード 16 MHz 48 MHz

スペック的には、すべてアップしています。IoTやらネット接続をやろうとするとATmega328Pだとすぐにメモリ不足になってしまうので、嬉しいところではあります。しかしESP32に比べると貧弱な感じは否めませんね。。。

SWDって何?


R4から追加になったSWDと書かれた1㎜ピッチの10ピン端子ですが、JTAGと言われる規格のデバッガーが繋がります。
ルネサスの資料を見ると、各社からツールが出されているようです。

引用:ルネサス
RZシリーズの説明ですが、RAシリーズでも同じでしょう。とりあえずルネサス純正の統合開発環境をそろえたいので、SEGGER社製 J-Linkを購入しようとしたのですが7万円と高い!
互換品があるだろうと探したらあったので、とりあえず互換品を購入しました(自己責任で)。ICE本体とArduinoにつなげる変換ケーブルもそれっぽいものを購入しました。
e² studio自体は、登録すれば無償でダウンロードできるようです。統合開発環境 e² studio

Arduinoプラットフォーム上で開発する限りこの装備は必要ないのですが、デバッガーがあると実行中に変数の中身を見れたりするらしいので試してみたいところです。

回路図をよく見る

R3と比べると、部品点数が少なくなっているので、非常にすっきりとした回路図になっています。
引用:arduino.cc
ぱっと見、ノイズ対策に気を使っている感じがしました。

アナログ入力電源にフィルター&コンデンサ

マイコン電源にコンデンサ、コンデンサ、コンデンサ。ピンごとにコンデンサを配置

USB電源と信号線にサージ対策

DC-DCコンバーターにコンデンサ、コンデンサ、コンデンサ、コンデンサ、コンデンサ

分圧抵抗で3.3Vを入れているUSB_VBUS。USB接続検出に使われています

汎用入出力端子に分圧抵抗で約0.6Vが入っている。なんだこれ分からん

5.1kΩでプルアップ。この回路の設計者は5.1kΩの抵抗を多用しています。部品共通化かな

ICSP端子はR3ではICEを接続してマイコンのブートローダーの書き換えなどに使っていたので、この端子形状のICEを使わないR4では不要に思えますが、汎用の入出力端子として使うシールドがあるので、残したんだと思われます。

実装が無い水晶振動子。いちおうパターンはあるようです。

基板をよく見る

良く見ると、回路図にはあるが実装されていない部品がある事に気が付きました。

水晶振動子とコンデンサ。内部クロックでは精度が不満な時には外付けもできる余地なのでしょう。

![](

R4 5.1k抵抗。AREFがADCの基準電圧なので接続しないと電圧レベルが暴れるのですが、ソフトで基準をINTERNALにしてれば問題なし

SCL/SDAのプルアップ。A4/A5ピンと共通なので、抵抗をつけちゃうとアナログインプットとして使えないからでしょう。I2C端子として使いたい場合は、内蔵プルアップをすればこと足りそうです。

DC-DCコンバーターまわり。R12は0ΩなのでVCCに接続するなら実装。データシートによると内部で5MΩでプルダウンされているので、外せばLOWです。R19 C22 C23とR20は排他的につかう事で、VCCを入れるか、コンデンサを通してGNDにつなげるかを選択するようになっているのでしょう。

基板にある+と-の表示は、飾りかと思いきや本当に5VとGNDと繋がっています。テスター当てて5Vあるのかを確かめられますね。オシャレだなあ。

DC-DCコンバーター見る

24V DC入力を可能にしているDC-DCコンバーター(降圧型)は、ルネサス製のISL854102です。3~40Vと幅広い入力電圧と、最大1.2Aまで大電流の出力が可能、出力電圧はコンデンサと抵抗で変更可能です。お値段はちょっとしますが、産業用に使う回路を設計する時に使いやすそうなチップです。

引用:ルネサス
このリファレンス回路に比べ、Arduino UNO R4の電源関係にコンデンサを付けまくっているのが分かります。

このコンデンサの数は、設計する時に再現した方がいいのかな。。。。??いつかノイズ比較します。。。

まとめ

24VDC入力やノイズ対策などを見ると、プロトタイピング用マイコンボードが工場などのIoT分野で使われる事が多くなった事を反映したというところでしょう。
市場での実績がある(これからですが)リファレンスボードだと考えると、非常にありがたい存在です。

ルネサスマイコンの採用は、ルネサスがArduinoに出資したことが関係しているようですが、Arduino UNOの立ち位置が入門機ですので、マイコンとしては小~中規模マイコンの採用という事だと思います。
その割にマイコンの価格が結構高い(Digi-Keyで1000円弱・2023年7月現在)のが気になりますが、UNOに採用されたことで、今後、秋月電子などで安価に販売される事を期待します。

ただ、このポジションにはESP32がM5Stackとともにいるので、Arduinoブランドだけでは結構苦しいのではないかと思っています。M5Stackは日本ではだいぶメジャーになったのでそう思えるのかもしれませんが、世界的にはどうなんでしょうね。。。

Arduino UNO R4の価値は変えない事、R3のプログラムやシールドをほぼそのまま活かせる事にあるように思えます。そういう意味でもライフサイクルが長めの産業用とは相性が良いのかもしれません。

また、日本では技適の関係で販売がもう少し先のArduino UNO R4 WiFiはルネサスマイコンとESP32が搭載されているなど、使い分けに一考が必要な感じです。ルネサスマイコンには5V系シールドとのやり取りを行って、IoT処理はESP32で行うみたいな事もできるかもしれないですね。

では、おやすみなさい。

関連記事

自作Arduino UNO R4 MINIMAにブートローダーを書き込む

Discussion

Kenta IDAKenta IDA

まとめありがとうございます。
SWDはSWD (SerialWire Debug) であってJTAGではないですというツッコミをしておきますw
J-Link以外でもプロトコル上はCMSIS-DAPとかでいけますが、まだOpenOCDにはRA4M1のドライバが実装されてなさそうなので、今後に期待ですかね。

keykey

纏め有難うございます。
実装されていない水晶振動子とコンデンサの件について、動作クロック精度を要求する用途に使いたくて追加で手実装することを考えて調べました。
どうやら動作クロックに使うには回路図に書かれている16MHzは使えないようです。
まず外付け水晶振動子の周波数の制限が「1MHz~20MHz(最大5.5V), 1MHz~8MHz(最大2.4V)」となっており、16MHzは5Vで使う分にはこの制限は問題ないでしょう。
次にPLLで48MHzを作る必要がありますが、PLLの入力周波数の制限が「4MHz~12.5MHz」となっており、16MHzそのままではNGになります。水晶振動子で発振するメインクロック発振器の出力はPLLの入力に直結されており分周もできません。
多分この辺を見誤って回路設計してしまい実装できなかったのではないでしょうか。
因みにPLLで設定できる分周比は出力周波数に対して「24MHz~64MHz(出力分周比:2), 24MHz~32MHz(出力分周比:4)」とあるので48MHzを作るには2固定となり、逓倍比は「8~31逓倍から選択可能(1ステップ単位)」とあるので12MHzの水晶振動子で8逓倍か8MHzの水晶振動子で12逓倍あたりの選択でしょうか。切りの良い周波数だと6MHzで16逓倍, 4MHzで24逓倍も可能です。
当然動作クロック以外も何をクロックソースに使うかのセレクタ選択によっては影響を受けるので、クロックの用途・必要な周波数・精度(外部発振器を使いたいか否か)によってはどの水晶振動子を選ぶかが限定されます。
精度を求めさえしなければ、元のクロックソースセレクタ設定のまま使えば現行の内部発振器を使うので影響を受けませんけどね。

keykey

因みに調べてみたら、Renesasが出している評価ボードEK-RA4M1では12MHzの水晶振動子を搭載し、分周比2、逓倍比8で48MHzを作って動作周波数に使っていました。
私も12MHzの水晶振動子を発注済みで搭載してみるつもりです。