生成AIの“使い方”以前の話~“世界に問いを向ける権利”を、放棄してないか?~
※この文章は、「生成AIの前で、どんな質問を立てるか」をめぐる静かな記録です。
生成AIに対する質問方法を見つめなおし始めている方に読んでいただけたらと思います。
1. 「使い方がわからない」の、その奥に
ChatGPTに、Gemini、Copilot、Claude。
多くの生成AIを前にして、悩んでいる人がいる。
「会社で使えと言われるんだけど、どう使ったらいいのかわからないんですよね。」
「生成AIって、間違えるじゃないですか。質問間違えるとうまく答えてくれないし。」
職場の同僚、業務委託のパートナー、飲み会の時の友人などから、そんな声をよく聞く。
生成AIへの質問の仕方には慣れが必要だ。 だからこそ、「うまく使うプロンプト入門」といった記事や書籍が数多く出回っている。
ただ、その“慣れ”以前に、もっと根本的な観点があると思う。
2. 生成AIは「質問のインフラ」である
ChatGPTに限らず、GeminiやCopilotなど、生成AIは「答えを出す機械」ではない。それよりも、「質問の設計に応じて振る舞う存在」だ。
だから、「どう聞けばいいのかわからない」という不安そのものを、投げかけていい。
「こういうことをしたいんだけど、どう頼めばいい?」
「何を聞けばいいのか、わからないんだけど、それも含めて相談していい?」
そういう“メタな困り方”にすら応答してくれる。それが、これらのAIの、いちばん静かで強い特性かもしれない。
つまり、これは単なる道具ではない。 わたしにとっては、思考の相棒だ。
3. 質問を取り戻すということ
「使いこなす」より前に、「質問を持つ」という営みがある。インターネットの普及により、その質問を言語化する力が、すこしずつ失われている気がしてならない。生成AIによって、それはさらに加速するだろう。
知らないことを調べるのではなく、知らないことを「どう質問すればよいか」を組み立てること。
生成AIは、質問に応じる存在だ。ならば、わたしたちに必要なのは、「質問の技術」なのではないか。
AIに頼ることが悪いのではない。質問の仕方すら考えず、思考を停止すること。それこそが、ほんとうに危うい。
🧩 おまけ:生成AIとの“質問”の始め方
💡 困ったら、そのまま書いてみる:
「こういうことをやりたいけど、どう聞けばいいかわからない」
——その一文から、対話は始まる。
🧠 もう少し深く掘り下げたいなら
このテーマは、教育や哲学の世界でも繰り返し論じられてきた問題でもある。
「質問を立てること」と「思考を止めないこと」は、時代を超えて残り続ける課題かもしれない。
以下のような人物たちも、似たようなテーマを扱っている:
-
ハンナ・アーレント(政治哲学者)
思考停止が倫理的判断を鈍らせる危険について語った。 -
マルティン・ハイデガー(哲学者)
「人間とは質問を立てる存在である」という観点から、技術と存在の関係を問うた。 -
パウロ・フレイレ(教育思想家)
対話と質問を中心に据えた教育を通じて、自由と主体性を回復しようとした。
どれも、「生成AIにどう質問を投げかけるか?」を考える上で、背景として気になるテーマです。
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