AIツールでほぼ全て作った個人開発サービス「ミッケ」の開発振り返り
はじめに
AIで個人開発をしてみたら、想像以上に「人間のやること」が残っていました。
この記事では、私が実際にAIツールを活用して作ったサービス「ミッケ」の開発を振り返りながら、AI時代の個人開発のリアルをまとめます。
ミッケは、私個人が現在一人で開発しているサービスです。自身の行った場所やそこでの出来事をマップに記録しておけるサービスとして、2025年7月から開発を始めました。
技術スタック
- フロントエンド: Next.js + TypeScript + TailwindCSS + shadcn/ui
- データベース: NeonDB
- ホスティング: Vercel
- マップ表示: Mapbox
- 開発エディター: VS Code
- AIツール: ChatGPT + GitHub Copilot Pro Plus
- アナリティクス: PostHog
- 監視・アラート: Sentry
この記事は、AIツールを使った開発やサービスを作った経緯を振り返り、これから個人開発をする人に少しでも参考になればと思って書いています。
サービス概要
ミッケは、自身の行った場所やそこでの出来事をマップに記録しておけるサービスです。

主な機能
- 場所に紐づいた写真やメモの投稿
- おすすめ度、移動手段、同行者などの記録
- カテゴリ分類(食べ物、活動、風景、メモ)
- マップ上での記録の可視化
ブラウザーから使えますが、PWAとしてホーム画面に追加して使うのがおすすめです。
将来的にはネイティブアプリも作りたいと考えていますが、まずはPWAでどこまでできるかを試している段階です。
なぜGitHub Copilotを選んだのか
AIツールはいくつか試しましたが、最終的にGitHub Copilotをメインで使うことにしました。
GitHub Copilotを選んだ理由
- VS Codeとの相性の良さ
- 定額制でトークン消費を気にしなくていい
- Microsoftによる継続的な進化への信頼感
- Model Context Protocol(MCP)などの新機能対応
Devinなど他のAIツールも試しましたが、大量の小タスクを並行処理するには良い反面、一つ一つを丁寧に作るフェーズでは、Copilotの方が自分には合っていました。
また、個人開発では“新しいツールを次々試すよりも、使い慣れたツールで確実に進める”方が結果的に早いと感じました。
ほぼ全てAIで作った
今回のサービスは、ほぼ全てAIで作りました。エンジニア歴6年の私がAIに頼り切って開発した理由と、その結果について書きます。
なぜAIに頼ったのか
- コードを書くのが正直面倒になってきた
- 「形にすること」を最優先にしたかった
- 過去の個人開発では理想が高すぎて完成しなかった
- MVPを素早く作って改善する開発サイクルを試したかった
使用モデルと費用
使用モデルは GitHub Copilot Agent Mode(Claude Sonnet 4 or 4.5)。ChatGPTの方はGPT-5を主に使っていたかなと思います。
Claude Sonnetは、コード生成に強いなというのが普段の開発とかで使ってても思うのでそれを利用しました。それ以外のモデルをエージェントモードで使用して使うとかはしていません。
月額コストの目安:
- Vercel Proプラン: 20ドル
- NeonDB Launchプラン: 5ドル
- Mapbox: 無料枠内
- ドメイン代: 約15ドル/年
- ChatGPT Plus: 20ドル
- GitHub Copilot Pro+: 39ドル
→ 合計 約1万円/月(実質的にはドメイン代くらい)
実際のところ、現状のトラフィックであればVercelもNeonDBも無料枠で収まります。ChatGPTとCopilotは他でも使っているため、実質的にはドメイン代くらいしかかかっていません。
無料枠が充実しているおかげで、個人開発レベルではほとんどコストがかからないのは助かります。
最初は「写真共有SNS」として開発していた
2025年7月29日から開発を開始し、当初は「マップに写真を投稿して共有するSNS」として作っていました。
開発の背景
- フルリモートで外に出るきっかけが少なかった
- 散歩や遊び場所を探す時間が長かった
- 妻が「Instagramは映えを意識しないと投稿できない」と話していて、もっと気軽に使えるSNSを作りたかった
MVPとして意識したこと
過去の個人開発では、理想を高く持ちすぎて完成しませんでした。
そこで今回は「最小限でいいから動くものを作る」を徹底しました。
最初に実装したのは:
- 写真を撮る機能
- マップに表示する機能
- 位置情報を紐づける機能
それだけ。
ログイン機能もなく、最初はデバイスIDでユーザーを区別していました。
AIを使っていたこともあり、ここまではすぐ形になりました。
小さく作って、触って、直す。このサイクルが継続のコツでした。
方向転換に至った理由
2ヶ月ほど開発してみて、写真共有SNSの方向性には限界を感じました。
- 投稿のハードルが高い
- 初期ユーザーを集めづらい
- 「何が面白いのか分からない」と言われた
- 自分自身もSNSに興味が薄い
早期に違和感を見つけられたのは、小さく作ったおかげです。
方向転換:個人の記録ツールへ
写真共有SNSから「自分の行動を記録できるツール」へと方針を転換しました。
方針転換の理由
他人のニーズではなく、自分のニーズに焦点を当てました。
自分が欲しかったのは、以下のような情報を残せる仕組みでした。

投稿詳細(詳細情報を付与)
- 犬と一緒に入れるかどうか
- 子供が遊べるか、オムツ替えスペースがあるか
- ご飯屋さんのメモや映画の感想
Google Mapやブクログのような管理ツールは続かなかったので、もっと気軽に全てまとめてなんとなく記録できるものを目指しました。

投稿画面
方向転換してからは、自分が楽しいと思える機能を追加するようになりました。
最近はGoogle認証や「友達の記録を見る機能」も追加し、少しずつ形になってきています。
GitHub Copilot Agent Modeの使い方
ここからは、実際にAIをどう使っていたかの具体例です。
開発フロー
- ChatGPTでやりたいことを整理
- VS Code上でCopilot Agent Modeを起動
- タスクを伝えて実装してもらう
- 細かくコミットして進める
実装前の流れ
まずChatGPTでやりたいことを文章化 → 整理
その仕様をCopilotに読み込ませて実装を進める、という流れでした。
例:「Mapboxで現在地を取得してピンを立てたい」と頼むと、
useMapbox フックを作り、コンポーネントを生成してくれるような形です。
恥ずかしいですが、実際のやり取りはこんな感じでした。

Chatでのやりとり例
上半分は多分その時伝えたかったことを適当に渡して、下半分はChatGPTなどで要件を整理したのをそのままコピペしてます。
こんな会話で人間に頼んだら鬱陶しい認定される程の雑さですが、AI相手だと気にせず頼めるのが良いところですね。文章としてちゃんと整理するってよりかは、「伝わればOK」くらいの感覚で頼んでいるのがほとんどですね。いちいち文章考えたり既存の構造に合わせたりとかまで具体的な指示出すとかはしていません。
指示のポイント
- スマホファーストで作る
- shadcn/uiを指定パスから使う
- UIは具体的にではなく、体験ベースで伝える
- サーバー/クライアントコンポーネントの分離は任せる
小さく区切る重要性
大きな機能を一気に作らせると破綻するため、常に小さく分割。
動作確認と修正を繰り返すスタイルでした。
1チャット1機能が基本ルールです。
リファクタリングとテスト
最初からテストは書かせず、動いた後にテスト生成を指示。
TDDではなく、まずはMVPを動かすことを優先しました。
AIと開発の付き合い方
AIを使う上で意識していたのは、「自分でも読める範囲で任せる」こと。
複雑な実装は破綻しやすいので、シンプルな単位に分解して依頼しました。
最終的に、MVPを最速で動かすという目的は達成できました。
コードの品質は後から整えればいい。まずは動くことが正義です。
エンジニアとしての葛藤
「AIに任せすぎて、自分が成長していないのでは」と感じる時もあります。
でも、AIと一緒に作る楽しさを知ってから、エンジニアリングがまた面白くなりました。
今は「コードを書くこと」よりも、
「何を作るか」「どう体験を作るか」を考える時間を大切にしています。
今後の展望
分析ツールの活用
PostHogやSentryをもっと活用して、データ分析や改善に生かしていきたいです。
技術的な挑戦
Kubernetesなどのインフラにも興味があり、ログ監視を自分で構築する挑戦をしています。
ミッケを実験台にしながら、新しい技術を学べるのは楽しいです。
サービスの改善点
- 他ユーザーの記録閲覧(交流のきっかけ作り)
- Google Map連携で店舗情報の取得
- ネイティブアプリ化(PWAのUX改善)
Monorepo構成に変更したので、React Native対応にも挑戦予定です。
おわりに
AIによって、開発以外のことに目を向けられるようになりました。
コードを書くことの価値は相対的に下がったかもしれませんが、
設計、品質、分析など「考える開発」がより楽しくなっています。
これからも、自分のペースで改善しながら続けていきたいと思います。
良かったら「ミッケ」で記録してみてください。
まだ荒削りですが、動かしてみてのフィードバックをもらえると嬉しいです。
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