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フーリエ変換vol.1: どんな音も波のブロックに分解する変換(フーリエ変換)の基礎

2024/10/08に公開

1. はじめに:音楽と数学のつながり

私たちが普段聴いている音楽、例えばピアノやギターの音、あるいは自然の音である風の音や雷の音などは、すべて「」として捉えることができます。音は、空気の振動が私たちの耳に届いて感じ取られるもので、音の種類によって振動の速さ(周波数)や振幅(音の大きさ)が異なります。

では、どうしてこれが数学と関係しているのでしょうか?

実は、音は「」として数式で表現できます。そしてその波を「周波数」という指標を使って、どんな高さの音が含まれているかを数学的に分析することができるのです。この分析の方法がフーリエ変換です。

音の波と周波数

音を「波」として捉えると、音楽や日常の音を「周波数の成分」で表すことができます。音の高さ(音程)は周波数で決まっていて、周波数が高いほど音は「高く」、周波数が低いほど音は「低く」なります。

例えば、ピアノの高い音と低い音が混ざって聞こえるとき、フーリエ変換を使うと、それぞれの音の高さがどれくらい含まれているかが分かります。つまり、フーリエ変換は音を分解して分析する道具とも言えるのです。

2. 波とは何か?

フーリエ変換を理解するためには、まず「」がどういうものなのかをきちんと理解する必要があります。波は、音だけでなく光、電気、海の波など、私たちの周りの多くの現象を説明するのに使われます。

波の性質

波には、いくつかの重要な性質があります。ここでは、フーリエ変換を理解するために知っておくべき3つの性質について説明します。

振幅

振幅は、波の「高さ」のことです。例えば、海の波を想像してみてください。波が大きいときは振幅が大きく、小さい波は振幅が小さいです。音の場合、この振幅が大きいほど音が大きく聞こえます。たとえば、太鼓を強く叩くと大きな音が出るのは、この振幅が大きいためです。

周期

周期とは、波が1回の振動を完了するのにかかる時間です。もっと簡単に言うと、波が1回上下するのにかかる時間のことです。たとえば、ブランコが1往復するのにかかる時間を考えてみてください。ブランコが1回振り子のように振れるのにかかる時間が「周期」にあたります。

周期が短ければ、波が速く振動していることを意味し、周期が長ければ波はゆっくり振動しています。

周波数

周波数は、波が1秒間に何回振動するかを表す指標です。周波数が高いほど、波は速く振動し、周波数が低いほど、波はゆっくりと振動します。

音楽で言うと、周波数が高いと「高い音」、周波数が低いと「低い音」になります。ピアノの高音は周波数が高く、低音は周波数が低いのです。

波の重ね合わせ

波は一つだけで存在することはほとんどありません。たとえば、音楽では、高い音や低い音、いろいろな楽器の音が同時に鳴り響いています。これらの音は、実際にはたくさんの波が重ね合わさってできているのです。

たとえば、次のような音楽の波を想像してみてください。

  • ピアノの低い音:ゆっくり振動する大きな波
  • ギターの高い音:速く振動する小さな波

これらが一緒に鳴ると、私たちの耳には一つの音楽として聞こえますが、実はこれらは異なる周波数の波の重ね合わせによってできているのです。

このように、波は単独で存在することもあれば、他の波と重ね合わさって複雑な形を作り出すこともあります。この「重ね合わせ」が音楽や自然界の多くの現象を生み出しています。

3. フーリエ変換のアイデア

ここで登場するのがフーリエ変換です。フーリエ変換は、複雑に見える波を簡単な波に分解する方法です。たとえば、音楽の中には、いくつもの周波数の異なる音(波)が含まれていますが、それを一つ一つ分けて調べることができます。

複雑な波をシンプルにする

フーリエ変換の素晴らしいところは、どんなに複雑な波でも、実は 単純な波(正弦波) の組み合わせで表現できるという点です。正弦波というのは、私たちが「波」と聞いてイメージする最も基本的な形の波です。上下に滑らかに振動するこの波が、どのような波も作り出せる基本的なブロックになっているのです。

この考え方を利用して、フーリエ変換を行うと、たとえどんなに複雑な音や信号でも、それを構成するシンプルな波を見つけ出すことができます。こうして、複雑な波を一つ一つの成分に分けて、どんな周波数の波が含まれているのかがわかるのです。

フーリエ変換の応用

フーリエ変換が役に立つのは、音楽の分析だけではありません。たとえば、次のような場面でも使うことができます。

  • 音声の処理:音声をデジタルで録音する際、音の周波数を分析するためにフーリエ変換が使われます。これにより、雑音を除去したり、音声を圧縮することが可能です。
  • 画像処理:画像にもフーリエ変換を使って、細かいパターンや色の変化を分析できます。これにより、画像の圧縮やフィルタリングが行われます。
  • 地震の解析:地震波も波の一種です。フーリエ変換を使うと、地震の揺れの中に含まれる周波数成分を分析でき、地震のメカニズムをより深く理解できます。
  • 故障の発見 エンジンなどの機械の動作音をフーリエ解析して周波数成分の変化を検知することで故障やその予兆を発見することができます。

4. まとめ

ここまで、音と波の基本的な性質と、それを分解するためのフーリエ変換のアイデアを学びました。波には振幅周期周波数といった性質があり、それらが組み合わさって複雑な現象を作り出していることがわかりました。そしてフーリエ変換を使うことで、複雑な波をシンプルな波に分解できるという点を理解していただけたと思います。

次回は、実際にフーリエ変換の計算を行ってみます。具体的な例を使って、データがどのように波に分解されるのかを見てみましょう。そして、計算を手で行うとどれくらい大変なのか、その計算量の多さを実感したいと思います。

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