HLSストリーミングをreact-playerで実装する
この記事はアドベントカレンダー4日目の記事です🎄🎅
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はじめに
こんにちは。HRBrainで学習管理サービス「HRBrain ラーニング」を開発している渡邉です。
最近、動画コンテンツの配信機能をHLS(HTTP Live Streaming)で実装しました。「ライブラリを使えばすぐできるだろう」と思っていたら、Cookie認証が効かなかったり、状態管理で詰まったり。この記事では、そんな試行錯誤の末にたどり着いた「react-player」を使ったHLS動画プレーヤーの実装方法を紹介します。
なお、この記事ではReactのフロントエンド実装だけを扱います。HLS動画ファイルの生成方法やサーバー側の配信設定については触れません。
執筆時点(2025/12/4)での最新バージョン: react-player@3.4.0
HLSとは
HLS(HTTP Live Streaming)は、動画配信の仕組みのひとつです。
通常、動画ファイルを配信しようとすると、ファイルサイズが大きく読み込みに時間がかかります。HLSは動画を数秒単位の小さなファイル(セグメント)に分割し、視聴者が見ている部分から順番に配信します。これにより、最初の読み込みを待たずに再生を始められます。
さらにHLSは、ネットワークの速度に合わせて自動で画質を変えてくれる点も便利です。電車などで動画を観ている時に、動画が自動的に低画質に切り替わった経験があるかと思います。
この機能のおかげで、WiFiでも4G回線でも、それぞれの環境で快適に視聴できます。YouTubeやNetflixなどの動画プラットフォームでも、HLSや類似した技術(DASH)が使われています。
ちなみに、react-playerにはデモサイトが用意されているので、「HLS」を選択して再生することで、HLSストリーミングを動かしてみることができます。

react-playerを選んだ理由
HLS動画を実装する際、使用できそうなライブラリを調査したところ、以下の3つが候補に上がりました。
- hls.js: HLS再生の本格的なライブラリ。GitHubスター数も多く、細かい制御が可能
- react-player: hls.jsをラップし、ReactコンポーネントとしてHLS機能を提供している
- video.js: 老舗の動画プレーヤー。npmダウンロード数も多く、プラグインが豊富
npm trendsで人気を比較すると、人気傾向は以下のようになっています。

どれも人気があって実績のあるライブラリですが、最終的にreact-playerを選んだのは、次の3つの理由からです。
必要とする機能が揃っていた
私たちのプロジェクトで動画プレーヤーに求める機能が、react-playerにはすべて揃っていました。
- 再生・停止・スキップなどの基本機能
- 速度調整
- 音量調整
- 全画面表示
- ピクチャ・イン・ピクチャ
react-playerは内部でHTMLの<video>要素を使用しており、playbackRate、volume、mutedといった標準的なプロパティを同名でそのまま使えます。
例えば、再生速度を変更したい場合はplaybackRateプロパティに値を渡すだけです。ブラウザ標準の<video>要素と同じプロパティ名なので、学習コストがほとんどかかりません。
ReactコンポーネントとしてHLSが使える
react-playerは内部でhls.jsを使用していますが、それをReactで使いやすい形にラップしています。もしhls.jsを直接使おうとすると、Reactのライフサイクルに合わせた実装を自分で書く必要があり、面倒です。
react-playerを使えば、こうした統合処理をすべて任せることができ、開発者は動画プレーヤーのUI/UXや機能実装に集中できます。
高頻度でメンテナンスが行われている
react-playerは更新頻度も高く、適切にメンテナンスされているライブラリです。issueへの対応も比較的早く、実績も十分だと判断しました。
react-playerを動かす
ここからは、react-playerの具体的な使い方を見ていきます。まずはインストールから。
npm install react-player
# または
yarn add react-player
一番シンプルな実装例は以下のようになります。
import ReactPlayer from 'react-player'
type Props = {
src: string
}
export const VideoPlayer = (props: Props) => {
return (
<ReactPlayer
src={props.src} // 動画ファイルを渡す
width="100%"
height="100%"
controls={true} // コントロール系のUIを有効化
/>
)
}
controls={true}を設定すると、ブラウザ標準のvideo要素のコントロールUIがそのまま表示されます。

HLSの再生の仕組み
srcプロパティには、HLSのマニフェストファイル(.m3u8)のURLを指定します。
マニフェストファイルには以下のような情報が記載されています。
- 分割された動画セグメントファイル(
.ts)のリスト - それぞれのセグメントの再生時間
- 利用可能な画質の情報
react-playerは、このマニフェストファイルを読み込んだ後、記載されているセグメントファイルを順番に取得していきます。「HLSとは」のセクションで説明したように、セグメントファイルが連続的にダウンロードされることで、動画がストリーミング再生される仕組みです。
Networkタブで通信を可視化すると、.ts拡張子のファイル(セグメントファイル)が順番にダウンロードされていることが分かります。

再生設定を管理する
react-playerでは、再生速度やボリュームなどの状態を親コンポーネント側で管理し、それをプロパティとして渡します。プレーヤーコンポーネント自体は内部で状態を保持せず、外部から渡された値に従って動作します。
以下は、再生速度とボリュームを状態管理する実装例です。
import { useState } from 'react'
import ReactPlayer from 'react-player'
type Props = {
src: string
}
export const VideoPlayer = (props: Props) => {
// 再生設定をReactPlayerコンポーネント外で管理して渡す
const [settings, setSettings] = useState({
playbackRate: 1.0, // 再生速度
volume: 1.0, // ボリューム
muted: false // ミュート
})
// 再生速度変更ハンドラー
const handleRateChange = (event: React.SyntheticEvent<HTMLVideoElement>) => {
setSettings(prev => ({
...prev,
playbackRate: event.currentTarget.playbackRate
}))
}
// ボリューム変更ハンドラー
const handleVolumeChange = (event: React.SyntheticEvent<HTMLVideoElement>) => {
setSettings(prev => ({
...prev,
muted: event.currentTarget.muted, // ミュートのON・OFFを切り替える
volume: event.currentTarget.volume // 音量の大きさを切り替える
}))
}
return (
<ReactPlayer
src={props.src}
width="100%"
height="100%"
controls={true}
playbackRate={settings.playbackRate}
volume={settings.volume}
muted={settings.muted}
onRateChange={handleRateChange}
onVolumeChange={handleVolumeChange}
/>
)
}
なお、react-playerはv3系が最新版ですが、v2からv3への移行では、プロパティ名の変更やコールバック関数の仕様変更など、多くの破壊的変更があります。既存のプロジェクトでv2を使用している場合は、公式のMigration Guideを必ず確認してください。
動画の再生タイミングで処理を実行する
動画の再生や一時停止、終了などのタイミングで処理を実行したい場合には、react-playerに用意されているイベントを使用します。
onStart(再生開始)、onPause(一時停止)、onEnded(再生終了)などさまざまなイベントが用意されているため、イベントを組み合わせて拡張的な実装を行いたいケースでは重宝します。例えば、視聴時間を計測したり、特定の地点まで視聴した場合の処理などを実装する際に、こうしたイベントハンドラーの活用が有効です。
<ReactPlayer
src={src}
width="100%"
height="100%"
controls={true}
onStart={() => {
console.log('再生開始')
}}
onPlay={() => {
console.log('再生中')
}}
onPause={() => {
console.log('一時停止')
}}
onEnded={() => {
console.log('再生終了')
}}
onSeeking={() => {
console.log('シーク中')
}}
onSeeked={() => {
console.log('シーク完了')
}}
/>
react-playerに用意されたイベントについても、「ReactPlayer Demo」のコンソールで確認することができます。

Cookie認証を有効にする設定
動画データの取得にCookie認証が必要な場合、そのままでは認証が通らず、動画ファイルを取得できませんでした。
HLSプレーヤーが動画ファイルを取得するとき、デフォルトではXMLHttpRequestのwithCredentialsがfalseになっています。つまり、Cookieが送られないため、認証エラーになるというわけです。
リクエストでCookieを送るには、config.hls.xhrSetupというオプション内でwithCredentials = trueを設定することで解決できました。
<ReactPlayer
src={src}
width="100%"
height="100%"
controls={true}
config={{
hls: {
xhrSetup: (xhr: XMLHttpRequest, url: string) => {
// Cookieを送信するように設定
xhr.withCredentials = true
}
}
}}
/>
これで、マニフェストファイル(.m3u8)もセグメントファイル(.ts)も、Cookieが送られるようになります。
また、クライアントでwithCredentials = trueに設定した場合、サーバー側もCORSの設定が必要です。こちらも併せて対応しましょう。
Access-Control-Allow-Origin: https://your-domain.com
Access-Control-Allow-Credentials: true
withCredentialsを使う場合、Access-Control-Allow-Originにワイルドカード(*)は使えません。適切にドメインを指定してください。
まとめ
react-playerを使ったHLS動画プレーヤーの実装について、HLSの基本的な仕組みからライブラリの実装方法について紹介しました。ReactでHLS動画を実装するときの参考になれば嬉しいです。
- HLSは動画を小さな単位に分割して順次配信することで、素早い再生開始とネットワーク状況に応じた適応的な画質切り替えを実現する動画配信方式
- react-playerはReactコンポーネントでHLSを簡単に扱えて便利
- ReactPlayerコンポーネント外で状態を管理し、状態とハンドラーをprops経由で渡す
- Cookie認証を使うなら
xhr.withCredentials = true設定が必要
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