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UE5のIK Retargeterはどこまで自動で直してくれるのか

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はじめに

モーション制作やゲーム開発において、スケルトンの差は避けて通れない問題です。
体格違いのキャラクター追加や、仕様変更による骨構造の修正が発生した場合、
既存アニメーションをどこまで流用できるかは常に悩みどころになります。

UE5のIK Retargeter は、この問題に対する強力な解決手段の一つですが、
「どこまで自動で補正してくれるのか」については感覚的にしか把握していませんでした。

この記事では、骨の長さ・骨の数・階層・デフォルトポーズといった違いが
リターゲット精度にどのような影響を与えるのかを、
実際の検証結果をもとに整理します。

検証方法

この記事での検証は、UE5標準のマネキンスケルトンをベースに行いました。
すべての検証は同一構造のスケルトンから差分を作成し、
検証を行う特定の要素のみを変更したモデル同士でリターゲットしています。

UEのバージョンは5.7を使用し、
IK Retargeter はアニメーションシーケンスの右クリックメニューから
「アニメーションをリターゲット」で行える自動リターゲット機能を使っています、
細かい手動調整は行っていません。
この記事の結果は「特別なチューニングを行わない場合に、
どこまで自動補正が効くか」を確認することを目的としています。

検証1.骨の長さ

まずはボーンの長さを変更した場合の影響を確認しました。

足と腕、身体のボーン長を約 ±20% 変更し、
歩行や待機といった基本的なモーションをリターゲットしたところ、
見た目上は大きな破綻は確認できませんでした。

接地やバランスには多少の差が見られるものの、
実用上問題になるレベルではなく、
ボーン長の違いは IK によって比較的うまく吸収されることが分かりました。

検証2.骨の数・階層

次に、骨数や階層を変更した場合を検証しました。

身体や首の本数を減らしたケースでは、
大きく動いているアニメーションほど差分が発生しました。

大きな破綻こそ見られなかったものの随所で影響が散見され、
ボーン数や親子関係の変更は、補正が難しい要素であることが確認できました。

身体の本数を減らしたことで、折り曲げ具合が弱くなってしまった

検証3.骨の軸

骨の軸を意図的に大きく変更した検証も行いました。

進行方向にどの軸も向いていない状態

結果として、骨の軸を崩してもリターゲット結果の見た目は一致しました。

IK Retargeter は骨の軸の影響は想像以上に小さく、
多くのケースで自動的に吸収されることが分かりました。

検証4.デフォルトポーズ

最後に、デフォルトポーズの違いによる影響を検証しました。

T ポーズであればIK Retargeterが作成された段階で
リターゲティングポーズによって修正され、ポーズが一致していました。
この程度であれば自動で補正してくれるようです。


試しに左右非対称で全身を使ったポーズをデフォルトポーズに設定してみましたが、
さすがにこれは自動補正しきれず、ポーズのズレが発生しました。


腕などは同じようなポーズに修正してくれましたが、身体がねじれてしまい崩れています。

まとめ

今回の検証から、IK Retargeter を使う際に注意すべきポイントが見えてきました。

・骨の長さや軸の違いは比較的許容される
・骨の数や階層構造の違いは破綻しやすい
・デフォルトポーズは元スケルトンのポーズに近いほど安全

IK Retargeter は万能ではありませんが、
どこまで信頼できるかを理解した上で使えば、非常に便利なツールだと思います。

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