Enterprise APIs for visionOS 概要
visionOS アプリでは、 Enterprise APIs for visionOS と呼ばれる、特別な権限で利用できるAPI群があります。
例えば、Apple Vision Pro の前面カメラの画像を取得、バーコードやQRコードの認識ができます。カメラ画像の取得に関連する機能はプライバシーの観点から一般には利用できませんが、Enterprise API を使用すると取得可能になります。また、Apple Vision Pro に搭載されている機械学習モデルを活用するためのプロセッサである Apple Neural Engine へのアクセスも可能になります。
前面カメラ画像の取得
QRコード認識
ここではEnterprise APIs for visionOSで解放される機能や、使い方、制約などについて解説します。
公式ドキュメント
ドキュメント
WWDC 2024 での解説動画
Enterprise APIs for visionOS の主な機能
Enterprise APIs for visionOSでは下記の機能が解放されます。いくつかの個別機能は別記事にて個別に解説します。
- メインカメラアクセス
- 前方メインカメラから入力データをキャプチャします。
- バーコードとQRコードのスキャン
- バーコードや QR コードをスキャンして、内容をデコードし、空間位置を特定します。
- UVC デバイスアクセス
- 開発者用ストラップに接続された USB UVC(USB Video Class) デバイスをストリーミングします。
- オブジェクトトラッキングパラメータの調整
- オブジェクトトラッキングが可能になるオブジェクトの数を増やします。
- スクリーンキャプチャ時のパススルー
- Apple Vision Pro の装着者が見ているもの (物理的な世界とデジタル コンテンツ) の複合フィードにアクセスします。
- Apple Neural Engine へのアクセス
- iOS と同様に、機械学習タスク向けに Apple Neural Engine (ANE) を利用可能にします。ただし、アプリからは制御できず、OS側の制御に委ねます。
- パフォーマンスの向上
- 高い計算能力が必要な場合にCPU と GPU のパワーを維持します。通常はファンの回転やCPU、GPUクロックの低下などで発熱量を調整します。ただし、詳細な制御はアプリからはできず、OS側の制御に委ねます。
Enterprise APIs for visionOS の利用手順
Enterprise APIs for visionOS を利用するためには「Enterprise.license」というライセンスファイルが必要です。
Enterprise.license は Apple Developer Program または Apple Developer Enterprise Program のアカウント所有者が、下記URLよりエンタイトルメントリクエストを送ります。
- ライセンスファイルは組織で共有して利用しますので、一度申請すればOKです。
- しばらくすると Enterprise.license が添付されたメールが届きます。
- ライセンスファイルには有効期限が設定されているので注意してください。
Enterprise.license が来たらXcodeに追加し、プロジェクト設定の「Signing & Capabilities」より「+ Capability 」ボタンを押して利用する機能を追加します。
Enterprise APIs for visionOS の制約
Enterprise APIs for visionOS の機能を入れたアプリは、一般のApp Storeでの配信ができません。
アプリをリリースする場合には、カスタムアプリとしてApple Business Manager経由でMDMより配信します。
この手順については、別記事にて解説します。
まとめ
Enterprise APIs for visionOS を利用すると、一般向けには解放されていない機能を活用できます。
一方で、配信方法などの制約があるため、社内向けの用途に限定されますが、多くの企業にとって大きなメリットとなるでしょう。
下記項目は別記事にて個別に解説します。
- メインカメラアクセス
- バーコードとQRコードのスキャン
- UVC デバイスアクセス
- オブジェクトトラッキングパラメータの調整
- カスタムアプリとして配信する方法
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