社内でAIハッカソン(AI開発合宿)を開催した話
2025年9月に、HOKUTOの開発メンバー(エンジニア・QAエンジニア・デザイナー)で開発合宿を行ってきました。
HOKUTOではフルリモートでの働き方となっており、メンバーでオフラインで集まって何かを行うというのは実は珍しかったりします。
開発合宿では毎年テーマを決めて取り組む形にしています。今年は 「生成AIを活用して普段の開発・作業を楽にしてくれるかもしれないツールを作る」というテーマ のもと、いわゆる「AIハッカソン」を行いました。
今回の開発合宿は以下の目的のもと開催しました:
- 最新のAI技術トレンドと応用事例についての知識を深める
- 参加者同士の情報共有を促進し、生成AI関連ツールの理解度を高める
- 普段の開発のボトルネックを見つめ直し、それを解消するツールをチームで作ることで、AI活用の具体的なノウハウを習得する
これらの目的とテーマの元、1日ハッカソンを行った結果、組織として学べたこと、実際に作ったものなどを紹介しようと思います。
開発の様子
HOKUTOでは2025年6月から開発に携わる正社員全員にClaude CodeのMaxプラン($200/mo)を配っていたため、ほとんどのメンバーはそれを使ってvibe-coding的に進めていました。
最初の開発環境構築のタイミングで、ざっくりCLAUDE.md、カスタムコマンドなどを登録してそれぞれ作業分担して行っていたようです。
チームによってはこんな感じで普段の業務で使っているコマンドを持ち寄ってガンガン開発を進めていたようです。

plan-generate , plan-question , plan-resolve 、この3つのコマンドは、 plan-generate -> plan-question -> plan-resolve の順で使用し、与えられた要件を基に開発計画を立て、実装をさせるというものになっています。
いわゆる簡易的なSDD(Spec-Driven-Developent)を実現するようなものになっていて、 HOKUTOで働いている morizyun さんが考案してくださったものになります。これを結構愛用しているメンバーも多いです。
(自分はこれを更に自分好みにカスタマイズして使っていたりします)
あとは、VOICEVOXを使ってClaudeが助けを求めているとき、作業が終わったとき、作業の途中進捗を報告するときなどに音声読み上げで通知させている人もいて、時折ずんだもんの声が流れてきたりもしていました.
対面で一緒にvibe-codingできる良さ
普段はフルリモートということもあり、他のメンバーがどのように生成AIを実際に活用しているのかが見えづらい&若干質問や相談がしづらいというのがあります。
今回オフラインで集まってハッカソン形式で作業をすることで、チームメンバーや周りがどのようにAIに指示を出しているのか、どんなコマンドを作って活用しているのか、どんなMCPを使っているのか...、普段なかなか聞きづらいことも、対面でお互いに情報共有しながら知見を吸収できるのはとても貴重な体験になったのではないかなと思います。
中には、context7 MCPやserena MCP、Figma MCPをまだ使ったことがないメンバーもいて、セットアップ方法や実際に使われている様子を見て「これすごくいいね!」みたいになっていたので、対面形式のハッカソンにしてよかったなと思います。
開発組織の中で「人によって生成AIの活用度合いが異なる」「生成AIに関連する情報のキャッチアップが大変」という課題が生じていたのですが、今回の開発合宿でこうした課題もある程度解消できたのではないかなと思います。
使われた技術、ツールなど
ハッカソンで各チームが用いた技術、ツール、サービスで代表的なものをいくつかリストアップしました。
- 生成AI関連
Claude, Claude CodeChat GPT, codexGemini- MCP
context7serenanotionsequential-thinkingvoicevox
Google CloudFirebaseTypeScriptbiomelefthookmiseNode.jsmastraClaude Code SDK(現:Claude Agent SDK)Next.jsReact.jsTailwind CSSgoogle/genai
HOKUTOではTypeScript/Next.js/Google Cloudが主要な技術スタックになっているのもあり、このあたりを選択したチームが多かったようです。
また、tailwindなど生成AIがよく学習しているものを選んでUIなどの構築に時間をかけなくてすむようにしていたのもありそうです。
少し脱線しますが、Open AIが出していたCookbookの「GPT-5 prompting guide」などを読んでいる感じでは、フロントエンド開発においてはNext.js, TypeScript, Tailwind CSSあたりを使うと生成AIを使ってい開発するうえでは良さそうですね。
また、今回はmastra、Claude Code SDK(現:Claude Agent SDK)を使うチームもありました。生成AI関連の機能を開発するならLangChain(.js) がよく名前が挙がりますが、新しいものに挑戦してみたチームもあったようです。
結果発表
約6時間の開発を終え、各チームの成果物の発表を行いました。
テーマとしては「生成AIを活用して普段の開発・作業を楽にしてくれるかもしれないツールを作る」だったため、作成するツール自体に生成AIを用いた機能が含まれているかどうかは指定していなかったのですが、結果としてはいずれのチームも生成AIを用いた機能を提供するツールを作成していました。
Aチーム
- プロジェクト、要件から詳細仕様書+テストケースの自動生成

プロジェクトの基本情報(目標、スコープ、要件、動作条件など)を入力すると、AIが書かれた情報をもとにGitHub, Figma, Notionから並列で情報を取得し、フォーマットに沿って仕様書を作成。
作成された仕様書を元にQAの観点からテストケースを自動作成し、更にそのままスプレッドシートにアップロードする、というものになっています。
チームメンバーのQAエンジニアの方が「与えられた要件から情報を収集して仕様書を良い精度で作成したい」「仕様書からテストケースを起こす、起こしたものをスプレッドシートにコピペするという作業を自動化したい」という課題を持っていることに着目して作成されました。
FigmaのURLを生成時の情報に含めることで、Figma MCPを介して情報を収集し、UIからどういう動作が期待されるのかなどの情報も取得したうえで仕様書が作れるようになっていたので、これをチューニングしていければそれなりの精度で仕様書の初稿が作れたり、その後のテストケースの作成も自動化していけそうです.
Bチーム
- ASCII(コンテキスト付きコードQ&A

リポジトリ横断の検索に加え、GitHub MCPを使って関連情報を束ね、Claude Code SDKを使ってソースコードや仕様に関して質問に対する回答を行うアプリです。

「誰に聞けばいいかわからない」を解決する形で、過去Excelに存在していた某動物をなぞらえて「ask(尋ねる) x キャラクター」として、アスキーくんというキャラクターもデザインしたようです。
Cチーム
- クイズくん(Notion→理解テストの自動化)

Notionのドキュメントの内容を生成AIが読み取り、ランダムにクイズを生成してくれます。
HOKUTOではあらゆる情報を基本的にはNotionにストックしていることと、ガイドラインやルールみたいなものも盛んに作成・更新され周知されるため、社内周知向けに作った重要なドキュメントがちゃんと読み込まれて理解されているか?を測るときにすごく活用できそうだと思っています。
読まれたかを判定したい側も問題を手作業で作る必要はないので、運用の負荷も下げられそうです。
Dチーム
- 採用業務オペレーション効率化アプリ
Dチームからは、採用業務に係る作業を行う人間の負担を軽減する、支援型のアプリが発表されました。
個人情報等に配慮した形で、採用にかかる意思決定などに対してAIからのコメント、アドバイスを受けられるようなものになっています。
(※テスト時、発表時はダミーデータを用いて行いました)
開催後の反応、アンケート結果
合宿終了後に参加者には事後アンケートを実施しました。
満足度

開催に関する満足度としては 「とても良かった」「良かった」合計で9割超 でした。普段フルリモートかつ、こうして短時間で何かを作るという機会があまりなかったのもあり、満足度が高かったようです。
短時間で1つのテーマに向かってチームで作るという密度と、オフラインで直接話しながら、相互に画面を見せたりペアプロ的な形で作業できたという体験を享受できたのが大きそうです。
ツール内訳

使用ツールの内訳は、 Claude(Claude Code含む)が88.2% で突出し、ChatGPT 52.9%、Cursor 41.2%、 Google Gemini 29.4% が続きました。
スキル向上

スキルの自己評価では、「大幅に」「ある程度」「少し」向上の合計が82.4%。
実際に他の人がどのようにAIに指示を出してコーディングさせているのか、どんなMCP使っているのか、実際に生成AIをプロダクトに組み込むときの作り方などを短時間で学習することができ、スキル向上にはつながったようです。
開催後、それから
実際にハッカソンで作ったもののうちいくつかは、既に実用化に向けてサイドプロジェクト的に動き始めていたりします。このまま御蔵入りにしてしまうのは非常に勿体ないですしね...!
おわりに
今回開発合宿を開催したことによって、
- 生成AIを開発(コーディング等)に活用するためのノウハウも蓄積された
- また生成AIをプロダクトに活用するための方法も学ぶことができた
- 日々の業務オペレーションを見つめ直し、ボトルネックや改善できる点を洗い出すことができた
といった大きな成果を組織として得ることができ、有意義な時間になったと思います。
もちろん、限られた時間で開発したものでプロトタイプ、実践投入レベルかというと難しいものはありますが、少なくともこれまでこうした開発をしてこなかったメンバーにとってはとても良い経験になったのかなと思います。
そして、まだまだ我々の業務自体もオペレーション自体を改善したり、生成AIによって業務効率改善を図れる部分がたくさんあるので、日々の開発業務と合わせてこれらにも積極的に取り組みたいなと思います。
来年、生成AIを取り巻く環境がどうなっているのか予想ができないですが、来年も生成AIにちなんだ開発合宿をまた開催したいなと思います。
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