NFTのエコシステムについて
はじめに
昨年から大きな注目を集めるNFTですが、NFTにはさまざまな利用法があります。アート作品、音楽、チケット、さらにはDefiへの流動性の供給の証明書としてのNFT、Defiにおける担保としてのNFTなどがあります。このブログの読者の中にも、NFTに興味を持っている方、NFTを購入された方、独自コントラクトを書いて、NFTを発行された方などがいるはずです。今後NFTは、さらに身近な存在になっていくと考えられます。
現在、多くの人がスマートフォンを使って、インターネットを利用しています。しかし、多くの人がインターネットの背景にある技術を知りません。同様に、NFTを実際に購入したが、NFTの背景にある技術を知らないという人も多いのではないでしょうか?
そのため、今回はNFTのエコシステムについてみていきます。最初にエコシステムとは何かを考え、次にNFTのエコシステムについて書いていきます。そもそもNFTって何?と疑問がある方は、最初にこちらの記事を読んでみてください。
エコシステムとは?
エコシステムとは、次のように定義されています。
ビジネス生態系。本来は生態系を指す英語「ecosystem」を比喩的に用い、主に情報通信産業において、動植物の食物連鎖や物質循環といった生物群の循環系という元の意味から転化して、経済的な依存関係や協調関係、または強者を頂点とする新たな成長分野でのピラミッド型の産業構造といった、新規な産業体系を構成しつつある発展途上の分野での企業間の連携関係全体を表すのに用いられる用語である。(Wikipedia)
定義の中で使われている連携関係という単語があります。この単語から、エコシステムは多くの構成要素、参加者の上に成り立っていることが推測されます。それではNFTエコシステムはどのような構成になっているのでしょうか?
NFTのエコシステム
ここからはNFTのエコシステムを構成するアクターについて見ていきます。
ブロックチェーン
NFTの特徴である、過去から現在におけるトークン所有権の追跡についてです。この特徴は、
①NFTがブロックチェーン上で発行されること
②トランザクションを通じて、NFTの所有権の移行がブロックチェーン上で保管されること
で可能になります。ブロックチェーンに保存された情報は、書き換えることができません。この情報が多くの人によって共有されることにより、所有権が保証されます。もしブロックチェーンにおいて、過去のトランザクションを書き換えることが可能だとします。この状況では、NFTは現在の所有者を正しく示すことはできません。このことからブロックチェーンは、NFTのエコシステムの重要なアクターと言えます。多くのNFTプロジェクトが利用しているブロックチェーンとしてEthereum、Solanaなどがあります。スマートコントラクトも含め、ブロックチェーンについては、次回以降さらに紹介していきたいと思います。
データの保存場所
NFTでは、個々のNFTの詳細を表すmetadata、また画像、音源などのデータの保存場所が必要です。これらのデータは、ブロックチェーン上に保存することも可能です。しかし、データをブロックチェーン上に保存しない場合、保存場所を確保する必要があります。ブロックチェーン以外の保存場所としては、ウェブサーバー、またはIPFSがあります。データの保存場所については、今回は詳しく説明しませんが、データの保存場所を提供するサービスもNFTには欠かせないものです。
マーケットプレイス
マーケットプレイス毎に提供する機能は異なりますが、主な機能として次の2つが挙げられます。
一つ目の機能は、NFTの売り手がトークンをリストできることです。NFTを販売したい人は、マーケットプレイスでNFTを公開できます。マーケットプレイスは、metadataなどと一緒にNFTをネットサイト上で紹介します。
二つ目は、購入希望者がNFTを購入できること。購入希望者は、マーケットプレイスにあるNFTを購入することができます。NFTによってはオークションが開催される場合があります。オークションの方法は、マーケットプレイスごとに様々です。購入希望者は、販売価格を受け入れる、またはオークションで競い勝つことによりNFTを購入することができます。
大事なことは、購入によってNFTの所有権が売り手から購入者に移ることです。この所有権の移行が、先ほど紹介したブロックチェーン上に記録されます。
マーケットプレイスは、NFTがトレードされる場です。マーケットプレイス上では、購入者が再度NFTを販売(二次流通)することも可能です。マーケットプレイスは、NFTの流通において大きな役割を果たしています。
ユーザー
NFTのエコシステムも、他の多くのビジネス生態系と同様に、ユーザーなしには存在しません。特に、アート作品など収集対象としてのNFTを考えた時には、以下のユーザーが存在します。
クリエーター
クリエーターはコンテンツを作成します。デジタルコンテンツとしては、画像、動画、音楽などがあげられます。作られたデータは、先ほど紹介した保存場所(ブロックチェーン、ウェブサーバー、またはIPFS)に保管されます。それにより、トークン所有者がデジタルコンテンツにアクセスすることが可能になります。
NFT販売に携わる人やサービス
クリエーターの作品をNFTとして扱うには、ERC721, ERC1155などのトークン規格に関する知識を必要とします。また、データの保存方法に関する知識も必要です。クリエーター自身がこれらの知識を持ち合わせている場合、クリエーターが販売に関わる作業を行うこと可能です。それ以外の場合、クリエーターは、それらの知識を持っている人に販売を依頼することになります。NFTを販売したいと考える人が、クリエーターに作品を依頼することも考えられます。
購入する人
マーケットプレイスなどを通じてNFTを購入する人です。購入者はNFT購入後、NFTの所有権を保持することとなります。
ここまで、いくつかのNFTエコシステムのアクターについてみてきました。これ以外にも、NFTエコシステムを構成するアクターが多く存在します。例えば、NFTを購入するにはWeb3ウォレットが必要になります。DAOによって発行されているNFTでは、DAOが重要な役割を果たしているなど、ここでは書くことができなかった多くのアクターが存在します。また、これから新しい重要なアクターが登場することも考えられます。
最後に
今回のブログでは、NFTのエコシステムについて紹介しました。多くの人に身近になりはじめているNFTですが、NFTを購入するだけでは利用していることを気づかないアクターもあったはずです。次回NFTを購入する際には、ブロックチェーン上で自分のトークン保有を確認してみる、OpenSea以外のマーケットプレイスを覗いてみる、購入したNFTのmetadataの保存先はどこ?保存先はブロックチェーン上、またはそれ以外か?など、今回書いた内容を意識してみるといいかもしれません。きっと新しい発見があると思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。
宣伝
このブログでもみたように、NFTの発行にはトークン規格、データ保存の知識を必要とします。これらの知識をHokusaiはサービスとして提供しています。NFTを発行したいという方は、まずはHokusaiのチュートリアルを試してみてください。
参考資料
Andreas M. Antonopoulos. Mastering Ethereum
Niccolo Conte. What are NFTs? Mapping the NFT Ecosystem
Dipanjan Das. Understanding Security Issues in the NFT Ecosystem
Devin Finzer. The Non-Fungible Token Bible: Everything you need to know about NFTs
Discussion