【超速報】AIが拓く新たな未来!Google Cloud Next Tokyo 2025 2日目参加レポート
1. はじめに
株式会社 MBK デジタルの古畑です。
熱気に包まれた初日から一夜明け、「Google Cloud Next Tokyo '25」2日目に参加してきました!
1日目がAIが拓く「未来のビジョン」に胸を躍らせる一日だったとすれば、2日目はその未来を「どうやって現実のシステムとして構築するのか」という、技術的な深掘りがテーマでした。
インフラ、開発、データ、セキュリティ――まさに、私たちエンジニアの主戦場とも言える領域の最新情報が、惜しみなく公開されました。
本記事では、2日目の核となる基調講演で語られたこと、そして私が特に注目した現地の見どころをお届けします!
こちらはイベント2日目の速報記事です。
1日目については、以下のリンクをご確認ください。
2. 基調講演:「AIエージェント」を動かすための技術的な羅針盤
2日目の基調講演は、1日目に示された「AIエージェント」という壮大なコンセプトを、いかにして実現するかを具体的に示す、技術的な羅針盤のようなセッションでした。
単なる機能紹介ではなく、これからのアプリケーション開発の”作法”そのものが変わっていくことを予感させました。
AIを支える、次世代インフラの圧倒的パワー
まず度肝を抜かれたのが、AIワークロードを支えるインフラの進化です。
第7世代となるGoogleのAI専用プロセッサ「TPU」が発表され、その圧倒的な処理能力の向上は、これまで以上に大規模で複雑なAIモデルの開発を可能にすることを意味します。
また、コンテナ環境であるGKEの運用を自動化する「Autopilot」の進化も発表され、開発者がインフラ管理の負担から解放され、より創造的な作業に集中できる環境が整いつつあることを実感しました。
データ基盤のオープン性と進化
次に注目したのが、データ基盤に関する発表です。
データウェアハウスのBigQueryが、オープンソースのテーブルフォーマットである「Apache Iceberg」を完全に採用したことは、非常に大きなメッセージだと感じました。
これは、特定のサービスにデータを縛られる「ベンダーロックイン」を避け、開発者が自由に最適なエンジンを選択できるオープンな姿勢の表れです。
さらに、オープンソースのSparkより最大4倍高速だという「Lightning Engine」の登場は、データ処理の常識を覆す可能性を秘めています。
事例:日本プロ野球(NPB)の挑戦
そして、これらの技術が実際にどう活用されているのかを示す事例として、日本プロ野球(NPB)の取り組みが紹介されました。
全試合の膨大なデータをGoogle Cloudで一元管理し、打球の速度や角度、投手の回転数といったデータをリアルタイムで分析・可視化。
さらに、そのデータを活用して自動でCGコンテンツまで生成しているというのです。
データとAIが、スポーツの楽しみ方や伝え方すらも変えていく。そんな未来を具体的に見せてくれる、非常にエキサイティングな事例でした。
1日目の「What(何をすべきか)」に対し、2日目の基調講演は「How(どう実現するか)」という問いへの、Google Cloudからの力強い回答でした。
3. 現地の見どころ
ここからは、セッションでの学びはもちろん、それ以外にも私が「見逃せない!」と感じた現地の見どころをご紹介します。
3.1 ZOZOTOWNの類似アイテム検索を支えるVertex AI Vector Search活用術
まずご紹介したいのが、株式会社ZOZO様のエンジニアが登壇したセッションです。
ZOZOTOWNで使われている「類似アイテム検索機能」の裏側で、いかにVertex AI Vector Searchが活用されているか、その導入の背景から実践的なノウハウまでが語られました。
課題:自前でのベクトル検索、その運用と複雑性の限界
ZOZO様では以前からベクトル検索(画像やテキストの意味的な類似性に基づいた検索)の機能を自前で構築・運用されていました。
しかし、そこには大きな課題があったと言います。
- 煩雑な運用と工数: 検索対象のデータ(Index)を更新するたびに、APIサーバーを再起動する必要があり、システムの回復性が低く、障害のリスクも抱えていました。
- システムの複雑性: Indexの更新バッチとAPIが強く依存しあうなど、システム全体の構成が複雑化していました。
これらの課題を解決し、より安定した運用と開発スピードの向上を目指すため、マネージドサービスであるVertex AI Vector Searchの導入を決定したそうです。
Vertex AI Vector Search導入で見えた新たな課題と解決策
Vertex AI Vector Searchを導入したことで、自前での運用・保守工数は大幅に削減されました。
しかし、実際に運用してみると、マネージドサービスならではの新たな課題も見えてきたと言います。
- Indexの更新時間: マネージドサービスであっても、Indexの更新にはある程度の時間がかかる。
- データ更新費用: Indexを更新するたびに費用が発生するため、コスト管理が重要になる。
これに対し、ZOZO様は「更新対象のデータをいかにして減らすか」というアプローチで解決を図ります。
本当に更新が必要なデータだけを効率的に更新することで、時間と費用の両方を最適化する。
この実践的なノウハウは、多くの開発者にとって非常に参考になる内容でした。
サービスをただ使うだけでなく、その特性を深く理解し、自社のビジネスに合わせて「使いこなす」ことの重要性。
トップレベルのエンジニアたちの、泥臭くも本質的な改善への取り組みが垣間見える、非常に学びの多いセッションでした。
3.2 弊社CTO岩尾が登壇!AIの精度は「メタデータ」で決まる
次にご紹介したいのが、多くの開発者で賑わう「Developer Stage」で行われた、弊社のCTOでありGoogle Developer Expertでもある岩尾によるライトニングトークです。
テーマは「AIとの対話を成功させる鍵は、BigQueryのメタデータ整備にあり」という、非常に実践的な内容でした。
なぜ今、メタデータが重要なのか?
「Gemini in BigQuery」などを使い、自然言語でデータ分析を行うのが当たり前になる時代。
しかし、AIに「人気の売れ筋商品を教えて」と問いかけても、AIがデータの意味を正しく理解していなければ、期待通りの答えは返ってきません。
- priceカラムは、税込み?税抜き?単位は円?ドル?
- そもそも「人気」とは、売上金額のこと?それとも販売数量のこと?
この「データの意味を定義するデータ」こそがメタデータです。
多くの企業で「重要だとわかってはいるが、後回しにされがち」というメタデータ整備の課題を指摘。
その原因は、データの意味を知るビジネス部門と、整備技術を持つエンジニア部門の間で、業務が宙に浮いてしまう構造的な問題にあると解説しました。
ビジネス部門が主役になる「3ステップ整備術」
この課題に対し、岩尾が提案したのが「ビジネス部門が主役となり、AIを活用してメタデータを整備する」という新しいプロセスです。
- 【優先度付け】 まずはBigQueryの利用ログを分析し、よく使われている重要なテーブルから整備対象を絞る。
- 【AIで生成し、人でレビュー】 Geminiを使い、テーブル定義からメタデータ(説明文)の叩き台を自動生成。人間はゼロから作るのではなく、AIの成果物をレビューし、修正することに集中する。
- 【BigQueryへ書き戻す】 完成したメタデータを、これまたAIにSQL(ALTER TABLE文)を生成させ、BigQueryに反映させる。
このプロセスなら、プログラミング不要で、ビジネス担当者でも簡単・効率的にメタデータ整備を進められます。
「ゼロから整備するより9割コストを削減できる感覚」と語っていました。
このLTは、メタデータ整備を単なる「お作法」ではなく、「AIの能力を最大化するための戦略的投資」であると位置づけた、非常に示唆に富む内容でした。
ちなみに当日の岩尾は、自作の「I ♡ Gemini」Tシャツを着て会場を歩き回っていたので、見かけた方もいらっしゃるかもしれませんね!
3.3 会場全体が舞台!「PTEを探せ」で技術者と繋がる楽しさ
最後にご紹介するのは、Next Tokyo '25で初めて設置された「Partner Top Engineer (PTE) ブース」です。
PTEとは、Google Cloudのパートナー企業に所属するエンジニアの中で、特に深い専門知識と豊富な経験を持つトップレベルの技術者を表彰するプログラムです。
そんな、いわば「パートナー企業のスターエンジニア」たちが集結するブースとあって、多くの来場者で賑わっていました。
このブースの目玉企画が、会場全体を巻き込んだ「PTEを探せ!」という参加型ゲームでした。
ゲーム感覚で、憧れのエンジニアと交流!
この企画の目的は、来場者にもっとPTEの魅力を知ってもらい、気軽に交流してほしいという想いから生まれたものです。
ルールはとてもシンプルです。
- 会場内にいるPTEを探して声をかけると、PTEから特製のシールがもらえます。
- 誰がどこにいるかのヒントは、PTEブースにあるQRコードからアクセスできるLooker Studioのダッシュボードで確認できるという、Google Cloudらしい仕掛けも。
- このシールを5枚集めてPTEブースに行くと、ハンディファンやミニノートといった限定グッズと交換してもらえます!
単にブースで待つだけでなく、エンジニア自身がバッジを付けて会場を歩き、来場者との出会いのきっかけを作るという、非常に面白い試みでした。
もちろん、PTEブース自体も、トップエンジニアと直接話せる貴重な場所でした。
ブースに常駐するPTEの方々に、具体的な技術相談から「どうすればPTEになれますか?」といったキャリアの質問まで、様々な相談ができる「Ask the PTE」のコーナーは、常に人だかりができていました。
セッションで一方的に話を聞くだけでなく、こうした双方向のコミュニケーションを通じて、トップエンジニアの知識や情熱に直接触れられる。
これこそが、オフラインイベントならではの醍醐味だと改めて感じさせてくれる、素晴らしい企画でした。
4. まとめ:AIの実用化と、それを支える「人と技術」の新しい関係
2日間にわたって開催されたGoogle Cloud Next Tokyo '25。
数々のセッションやイベントを通じて見えてきたのは、単なる新技術の紹介ではなく、AIを本当の意味で「実用化」するための、具体的な方法論とカルチャーへの強いメッセージでした。
テクノロジーが進化するほど、それを扱う「人」の役割、そして部門や会社の垣根を超えた「コミュニティ」の価値が相対的に高まっていく。
今回のNext Tokyo '25は、そんなAI時代における、技術と人の新しい関係性を指し示してくれた、非常に有意義なイベントでした。
私たちも、ここで得た学びと繋がりを活かし、お客様のビジネスを加速させるために、さらに邁進していきたいと思います。
2日間にわたり、レポートをお読みいただき、ありがとうございました。
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