Explore Assistantで実現する!自然言語で開くデータ探索の新時代
1. はじめに
株式会社 Hogetic Labの古畑です。
今回は、Googleが提供するBIツール「Looker」の新機能「Explore Assistant」についてお話しします。
データ分析が日常業務に欠かせない今、データと触れ合う機会は増え続けています。
しかし、必要な情報を取得するためにSQLなどの専門知識が求められることが多く、データ分析に苦手意識を持つ方も少なくありません。
そこで登場したのが、BIツール「Looker」の新機能「Explore Assistant」です。
この機能は自然言語での質問に応じてデータを引き出すことで、従来よりも直感的なデータ探索を可能にしました。
この記事では、Explore Assistantがどのように日常のデータ分析をサポートするのか、具体的な使い方や活用例を交えながら解説していきます。
筆者経歴
- 文系学部卒。前職でビジネス職として入社後、データアナリストに転向
- 前職の業務で初めて Looker に触れ、現在は Looker のコンサルや実装を担当
- Looker の実装に関連する、Google Cloud 認定資格を複数個所持
- Professional Data Engineer
- Professional Machine Learning Engineer など
- Looker 実装のアンチパターンをテーマに Google 主催のイベントで登壇経験あり
2. Explore Assistantとは
引用元:Looker Explore Assistant and how it helps reduce bottlenecks
LookerのExplore Assistantは、データを自然言語で簡単に探索できる機能です。
従来、データ探索にはSQLなどのスキルが必要で、多くのビジネスユーザーにとってハードルが高いものでした。
さらにLookerの場合は「LookML」という独自言語を使用するため、ますますハードルが高く、導入のネックにもなっていました。
しかし、Explore Assistantを使えば、「今月の売上」「地域ごとの販売数」「昨年からの成長率は?」といった質問を日常の言葉で入力するだけで、Lookerがその意図を解析し、即座に関連データを表示してくれます。
このようにExplore Assistantは、ビジネスユーザーにとって使いやすいインターフェースと自然言語対応の分析力を提供し、データドリブンな組織の構築を後押しする機能です。
特徴1. 自然言語処理でのデータクエリ
Explore Assistantは生成AI(Gemini)を活用しているため、専門的なコードを意識せずにクエリを作成できます。
これは、データに関する質問がより直感的に行えるようにするだけでなく、専門知識を持たないビジネスユーザーも分析プロセスに参加できる大きな一歩です。
例えば、「先月と今月の売上差は?」という具体的な質問にも対応できるため、日々のデータ確認や意思決定のスピードを加速させます。
特徴2. 自動生成される簡易ビジュアライゼーション
Explore Assistantは、クエリに基づいてグラフやチャートも自動生成するため、視覚的にデータの傾向をすぐに把握できます。
特に、「売上の推移」や「製品カテゴリーごとの売上分布」といった質問に対して、直感的なビジュアルを提示し、複雑なデータも簡単に理解できるようサポートしてくれます。
特徴3. Lookerエコシステムとのシームレスな統合
Explore Assistantは、Lookerのデータモデルやダッシュボードと統合されています。
作成した分析結果はそのまま既存のレポートやダッシュボードに反映させたり、共有したりできます。
これにより、日常的なデータ探索から、組織全体でのデータ活用への発展が期待できます。
3. Explore Assistantの使い方
Explore Assistantの設定や導入の手順については、技術的な知識が求められるため、詳細は以下のリンクをご参照ください。
こちらでは、導入の前提条件、設定手順、トラブルシューティングのヒントなどが詳しく記載されています。
バックエンドで利用する Gemini や BQML、Cloud Function の費用は発生しますが、Looker の追加費用は必要ありません。
この記事では設定や導入の説明は割愛し、Explore Assistantの実際の使い方や具体的な活用方法に焦点を当てて紹介していきます。
(以下、表示される全てのデータはダミーになりますので、データの中身に意味はありません)
手順1. 質問を入力する
Explore Assistantを起動し、質問を入力します。
例えば「今月の売上合計を教えて」「昨年の地域別の販売数は?」など、知りたい内容を自然な日本語または英語で入力します。
Lookerは入力された質問を解析し、関連するデータセットやフィールドを自動的に選定してクエリを作成します。
手順2. 結果を確認する
入力後、Explore Assistantがクエリ結果を表示します。
数値データや一覧表の形で即座に確認でき、結果に対する追加質問も同じ画面で可能です。
例えば、「昨年の売上データ」を確認した後に「今年のデータと比較したい」と入力すれば、そのまま新しいデータセットを表示させることもできます。
手順3. 追加の分析を行う
必要に応じて表示内容などを微調整することも可能です。
Explore Assistantで生成されたクエリは、そのままLookerのExplore画面で編集できるため、より詳細な条件追加やフィルタの設定が行えます。
例えば、「特定の製品カテゴリのみを絞り込む」「特定の期間だけのデータを見る」といった複雑な分析も、ここで対応できます。
Explore Assistantの使い方は非常にシンプルですが、必要に応じて詳細なカスタマイズやダッシュボードへの連携も可能です。
ビジネスユーザーはもちろん、データに詳しいアナリストやエンジニアにとっても、業務効率を大幅に向上させるツールとして活用できます。
4. 活用シーンの紹介
Explore Assistantは、幅広い業務シーンでのデータ探索をより身近にし、迅速な意思決定をサポートします。
ここでは、具体的な活用例をいくつか紹介します。
パターン1. 営業担当者の月次レポート作成
営業チームでは、毎月の売上や案件進捗の把握が求められます。
アドホックな分析を行うためには、データ分析担当者からデータを取り寄せる必要があり、タイムラグが発生していました。
Explore Assistantを使えば、「今月の売上合計を教えて」「担当者別の成績を確認したい」などと入力するだけで、即座に数値やグラフを取得できます。
これにより、営業担当者自身が迅速にデータを確認し、必要に応じた対応ができるようになります。
パターン2. 報告資料作成の効率化
週次の社内報告やKPI確認に向けた報告資料作成も、Explore Assistantを使えば大幅に効率化できます。
定常的な項目はダッシュボードで用意しておき、アドホックな内容はExplore Assistantに任せることで、資料作成のためのデータ取得作業がスピーディーになります。
パターン3. 経営層の迅速な意思決定
データに基づいた意思決定は、経営層にとって不可欠です。
しかし、経営層が自らデータを深く分析するのは難しく、刻々と変わるビジネス環境に合わせ、データ分析担当者が慌てて対応していました。
Explore Assistantを活用すれば、「今期の業績は?」「主要事業ごとの利益率は?」といった問いに対してすぐに回答が得られるため、データに基づいた迅速な意思決定が可能になります。
また、視覚的なグラフでの表示は、全体像の把握を容易にするため、詳しくない経営層でもデータを使いこなすことができます。
Explore Assistantは、専門知識がなくてもデータにアクセスしやすく、業務の効率化やデータに基づく素早いアクションをサポートする機能です。
ビジネスの現場で、誰もがデータを活用できる環境を作り出し、組織全体のデータ活用度を高める強力なツールとなっています。
5. 注意点と課題
Explore Assistantは非常に便利な機能ですが、使用にあたっていくつかの注意点もあります。
自然言語入力の限界
Explore Assistantは自然言語でのクエリに対応していますが、複雑な質問や多段階の条件が必要な場合、期待通りの結果が得られないことがあります。
たとえば、「過去2年間の四半期ごとの特定商品カテゴリごとの売上推移」といった複雑な条件は、手動での調整が必要になる可能性があります。
そのため、状況に応じてSQLやLookMLなどの知識が補完的に求められることもあります。
誤解されやすい結果のリスク
Explore Assistantは質問に応じて最適と思われるデータを返しますが、意図しないフィールドやデータが選択される可能性があります。
特に、類似した項目が多いデータセットや、大規模なデータモデルで使用する場合、結果が正しいかどうかの確認が必要です。
このため、分析の前提やフィールド選択に対する理解が不十分だと、誤解につながることもあります。
データ品質や権限の問題
Explore Assistantは、データの質や権限設定に大きく依存します。
不正確なデータや権限不足があると、正しい結果が得られなかったり、データへのアクセス自体が制限される可能性があります。
特に、組織内でデータガバナンスが整備されていない場合には、管理者による適切な権限設定とデータ品質の管理が不可欠です。
トレーニングやサポートの必要性
直感的に使えるExplore Assistantですが、特定のクエリ構造やデータの理解は不可欠です。
特に、データ分析に不慣れなユーザーには、基本的なデータ構造の理解や適切なクエリ入力の指導が推奨されます。
組織内でのトレーニングやサポート体制が活用の鍵です。
6. まとめ
LookerのExplore Assistantは、自然言語でのデータ探索を可能にし、ビジネスユーザーが直感的にデータにアクセスできる新しいアプローチを提供します。
データ分析の専門知識がなくても質問を通じて必要な情報にたどり着けるため、データドリブンな意思決定が身近なものになり、業務の効率化にも大きく貢献します。
本記事では、Explore Assistantの基本的な使い方や具体的な活用シーン、そして利用時の注意点や課題についてご紹介しました。
シンプルで使いやすい一方で、複雑なクエリの対応やデータガバナンスの重要性なども理解しておくことで、より効果的な活用が可能です。
Explore Assistantを導入することで、データの民主化が促進され、組織全体でのデータ活用が加速します。
データを手軽に扱い、全員が意思決定に必要な情報を素早く得られる環境を作るため、ぜひこの機能を活用してみてください。
最後に宣伝ですが、株式会社Hogetic Labでは、Lookerの導入から運用までトータルでサポートしています。
豊富な経験と知識を持ち、企業がLookerを活用してデータドリブンな意思決定を行えるよう支援しています。
Lookerの導入やコンサルティングにご興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
また、データアナリストやデータエンジニアをはじめ、各ポジションでの採用も行っていますので、そちらもぜひご確認ください。
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