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IT業界の勉強を強いられる構造は悪なのか

2020/10/04に公開
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ソフトウェア・エンジニアになったばかりの人がよくするクレームの一つに勉強がつらいというものがあります。Web開発でより顕著ですが、新しい技術が出るたびに勉強しなければならず時には業務時間外に勉強しないと置いていかれてつらいというものです。

IT業界の勉強を強いられる構造は悪なのでしょうか。

資本集約的ビジネスと労働集約的ビジネスの違い

世の中のビジネスは大別すると労働集約的ビジネスと資本集約的ビジネスに分けることができます。

資本集約的ビジネスは事業を始めるのに大きな資金や設備投資が必要なビジネスです。鉄や石油、飛行機やビルを作るためには資金やスペース、時間がかかります。設計者や作業員の能力はもちろん大切ではあるものの、まず投資できる体力がないと事業をはじめることもできません。

参入障壁が設備などによるため労働者に投資するよりも設備に投資した方が競合優位性の面では有利かもしれません。こういった産業では優秀な人材を2倍の給料で雇ったからといって事業が伸びるわけではありません。

一方労働集約的ビジネスは設備投資が少なくても始めることのできる事業でコンサルなどがあたります。2倍いいオフィスを作っても売り上げが2倍伸びることはなく、優秀な人材に投資した方が売り上げが伸びる可能性が高いです。

工学分野で見たとき、造船や自動車の製造はは資本集約的ビジネスでソフトウェア開発は労働集約的ビジネスと言えると思います。 労働集約的ビジネスは能力値が待遇に反映されやすいですが資本集約的ビジネスは比較的緩やかです。能力が稼ぎにつながるというのはとても幸せなことだと思います。

努力でカバーできることの方が世の中少ない

資本集約的ビジネスは構造上社歴の長い会社が多いです。評価制度は年功序列よりかもしれません。また評価制度そのものは実力ベースかもしれませんが実力のあげ方が年齢(経験)を重ねる以外にない分野も世の中多いです。

例えばある人が職業人として使えるレベルになるまでにとあるプロダクトを3回設計や実装する必要があると定義しましょう。例えば、静的ホームページなら1ヶ月x3で3ヶ月、簡単な動的Webサイトの実装なら3ヶ月x3で9ヶ月、難しい機械学習の研究なら1年x3ということもあるかもしれません。

ノンフィクションライターなどは何十年も事件を追っていることもありますが、労働集約的ビジネスは比較的イテレーションのサイクルが少ない分野が多いと思います。

一方造船や自動車はどうでしょうか。船を作るのはもしかすると5年から10年かかるかもしれません。それが3回なら20年くらいでしょうか。車はより短いかもしれませんが3年-5年でしょうか。それでもx3なら10年程度はかかります。最初に自分が設計した部分が失敗だったと気づくのに数年かかるというのもザラだと思います。

Web系プログラマーはWebで比較的なんでも情報が手に入りやすいのでしばしば忘れがちですが、世の中の工学分野のノウハウの多くは検索しても出るはずもなく、その会社のプライベートな資産だったり、実際に経験しないと手に入らないことも多いです。強くなる方法が実務で経験を得ることによってしか得られない分野も多いというのは見過ごされがちなポイントだと思います。

もちろんソフトウェア開発でもハードテックだったり、個人開発では得られないノウハウが必要な分野は存在します。それでも新しい分野の開発方法はすぐWebの記事になったり本が手に入るのは幸せなことです。

やる気のある若者ほど有利なのがソフトウェア・エンジニア

これは比較的若者に有利な構造です。やる気のある若手技術者なら実際に社会人になる前に、アプリやWebサービスの開発を独力でできている事例もよくみます。

他業種ではどんなに頑張っても少ない時間で能力値を上げることができないことがあるにも関わらず、IT業界では個人開発やオープンソースプロジェクトに貢献することで実務に近い能力を得ることができるからです。

また、技術トレンドが変わりやすいのも若者にはプラスです。5年前に流行っていたフレームワークがわかる社会人エンジニアにはたくさんいるかもしれませんが、今は全く新しいフレームワークや違う領域がトレンドでスタート地点は一緒かもしれません。

IT業界は勉強がつらいという人はまずこの点をちゃんと考えるべきだと思います。ソフトウェアエンジニアの中には仕事プログラミング、休憩中プログラミング、趣味土日プログラミングという人が一定数います。 そういう人と競っていかないといけないのも事実です。

年齢が若くても実務経験が少なくても個人の努力量によって漠然と仕事している人を凌駕できる可能性があるのがIT業界の魅力の一つでそれはやる気のある人間にとってはプラスです。逆にそれがつらいという人はそもそも戦うべき分野が間違っているかもしれません。

医師や弁理士などは法律によって明らかに法律上参入障壁がありますし、ソフトウェア開発だけが工学の分野ではないです。ただ、独占資格は国の裁量で需要と供給が労働者に不利な方向に調整されてしまうこともあります。

まとめ

  • ソフトウェア開発は労働集約的ビジネスで能力が待遇に反映されやすい
  • ソフトウェア開発はイテレーションが短く一人前になる時間が短い
  • やる気のある人ほど有利な業界でそれがつらいなら参入障壁が高い分野を目指しては

Discussion

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タイトルの「悪なのか」という問に対しての結論が書かれていないため分かりづらかったです。内容自体は面白かったです。

yo_chanyo_chan

面白かったです!若い人にとってIT業界はかなり良い選択だと思います。一方50代現役バリバリでやってる想像もつきにくい業界