musubi-tunerによるFramePack学習の私的ベストプラクティス集
FramePackを追加学習すると、画像・動画の生成時にテキストのプロンプトでは難しい指示を守らせることができます。たとえば、等速で360度回転する、のような指示が可能です。
FramePackのLoRA学習にあたっては、musubi-tunerを使うのが簡単です。とはいえ機械学習なので、どうしても試行錯誤があります。
ですが、設定次第で、「学習途中のLoRAの性能をリアルタイムで確認する」「学習率の変化の影響を可視化する」「学習後に自動でGPUインスタンスを落とす」などの工夫ができます。全て書いたので、参考にしてください!
また、誤りや改善点があれば、記事に取り込みたいのでぜひコメントいただけると幸いです。
そもそもFramePackとは?
FramePackは、Hunyuan(混元 = hùn yuán, フンユアン) Videoの動画生成モデルを用いた動画・画像生成フレームワークです。
Hunyuan VideoのDiffusion Transformer(DiT)に対して、既に生成したフレームと条件付けを入力して新しいフレームを生成する...ということを繰り返し、指定された長さの動画を生成します。
Stable Diffusionがそうであるように、Hunyuan VideoのDiTも画像・動画をピクセルでは扱わず、VAEによってエンコードされた潜在フレームとして扱います。さらにFramePackでは、いくつかの潜在フレームをまとめて「セクション」として扱っています。
例えば30fpsで1.2秒(72f)の動画を生成する場合、かつ1セクションあたり9潜在フレームを含む場合、その関係は次のようになります。(非常に見辛くてすみません...)
FramePackによる学習・推論は、コミュニティベースで進化を重ねています。詳しくはKohyaさんのNote記事をご覧ください。
LoRAの学習
本当にLoRAが必要か?
FramePackは、自然言語での入力に対応していることもあり、かなり細かい指示ができます。
そのため、まずは素の状態の推論(画像・動画生成)でプロンプトを工夫し、それで難しければLoRAを試すのが良いでしょう。探索したプロンプトはLoRA学習でも使うので、いわばスタート地点をゴールに近づけた状態で学習を進めることができます。
クオリティ・費用・期間
シンプルなプロンプトのみで指定できる動き・変化については、純粋に学習だけなら$25以内かつ1日以内で学習ができます。設定によりますが、一例としてはH100を$2.5/Hourで8時間借りて1,000steps程度学習できる感じでしょうか。
しかし、学習途中で設定の誤りやデータのバグに気づいたり、はたまた学習データを増やしたり、プロンプトを変更したりするのが普通です。個人的には、初めてのタイプの学習ではいい結果が出るまで10~20回学習設定を変えています。(例えばTurntableに用いているLoRAはバージョン18です)
最短を狙うなら、すでに上手く学習できている人から設定を分けてもらったり、レビューしてもらうのも手です。私でよければいつでも見るので、ご連絡ください!
データセット
目的によってデータセットのサイズが異なります。例えば、カメラをズームするだけのようなシンプルな動きであれば、動画データが20本程度あれば学習できると思います。
「1文で指示できる範囲の動き」なら、少量のデータでも学習できる...気がします。
一方で、入力した動画・画像に応じて多様な動きをさせる場合、もうちょっとデータセットが必要かもしれません。例えば、「キャラクター」+「指定した画風」のLoRAを開発する場合は、過学習を防ぐために50~100枚は必要なのではと考えています。この辺りは正直探っているところですが...。
GPUクラウドの利用
FramePackのLoRA学習を快適に行うには、VRAMが体感で30GB以上必要です。そこでRTX6000AdaやH100を利用するため、筆者はGPUクラウドのRunPodを利用しています。GPUクラウドとしては Google Colab, Lambda Cloud, RunPod, Vast.aiを学習に使ったことがありますが、次の点でRunPodを採用しています。
- VSCodeでRemote-SSH接続できる(Google Colab以外で可能)
- 複数のインスタンス間でストレージを使いまわせる(RunPodとLambda Cloudで可能)
- 個人的にUIが分かりやすい
複数の設定で並列に学習したり、学習中のモデルの性能を確認するために別インスタンスを立てることがあるので、ストレージを使いまわせた方が良いんですね。
学習の進め方としては、初めにRTX6000Adaなど比較的安いインスタンスで5Stepsくらい学習を回します。それで設定が正しいことを確認できたら、H100などに切り替えて本格的に回すことが多いです。
(もっとも、そこまでGPUインスタンスが余ってないことも多いので、初めに確保したインスタンスをそのまま使うこともあります)
ストレージは最低200GB程度必要です。これも設定で大きく異なりますが、FramePackのベースモデル(エンコーダなども含む)で100GB、学習データで20GB、学習したモデルで40GBという感じでしょうか。
設定
私(@xhiorga)は、FramePackのLoRA学習では musubi-tuner を使っています。
2025-07時点では、次のような設定で1フレーム学習を行なっています。
リポジトリ概要
次のような構成です。学習設定はconfigs
以下にバージョニングして管理しています。
- .git
- configs
- v1
- config.toml
- dataset.toml
- prompts.txt
- v2
- ...
- .gitignore
- .python-version
- pyproject.toml
- Makefile
- README.md
- uv.lock
pyproject.toml
続いて、学習のための環境です。
[project]
name = "my-framepack-project"
version = "0.1.0"
requires-python = ">=3.10"
dependencies = [
"sageattention>=1.0.6",
"musubi-tuner[cu128]",
"wandb>=0.21.0",
"toml>=0.10.2",
]
[tool.uv]
# キャッシュ先を`.venv`と同じファイルシステムにしないと、GPUインスタンス作成ごとにインストールが走るので注意
cache-dir = "/workspace/.uv_cache"
[tool.uv.sources]
musubi-tuner = { git = "https://github.com/kohya-ss/musubi-tuner.git" }
musubi-tunerのインストールにはuv
を用いるのを強くお勧めします。
uv
で管理した場合、仮想環境の管理もuv
が賄ってくれます。RunPodなどのGPUクラウドを用いている場合は仮想環境の構築そのものは不要ですが、uv
をタスクランナーとして用いることで、学習実行時に環境構築がされていなければ、musubi-tuner
を含むパッケージが自動でインストールされ、非常に便利です。
config.toml
次のような構成です。なお、バージョンごとの差分を比較しやすいよう、オプションではなくtoml
で管理することをお勧めします。
dit = "/workspace/models/diffusion_models/FramePackI2V_HY/diffusion_pytorch_model-00001-of-00003.safetensors"
vae = "/workspace/models/vae/diffusion_pytorch_model.safetensors"
text_encoder1 = "/workspace/models/text_encoder/model-00001-of-00004.safetensors"
text_encoder2 = "/workspace/models/text_encoder_2/model.safetensors"
image_encoder = "/workspace/models/image_encoder/model.safetensors"
dataset_config = "/workspace/my-framepack-project/configs/v8/dataset.toml"
blocks_to_swap = 20
split_attn = true
img_in_txt_in_offloading = true
seed = 42
mixed_precision = "bf16"
sdpa = true
network_module = "networks.lora_framepack"
# シンプルなLoRAなら4/4程度でOK。
network_dim = 32
network_alpha = 16
optimizer_type = "adamw8bit"
# データセットの batch_size 次第。
# batch_size = 4 くらいまでは`1e-3`で安定
# それ以降、batch_size に合わせて`new LR = old * √(sqrt)(new batch size / old batch size)`で増やす。
learning_rate = 1e-3
gradient_checkpointing = true
max_data_loader_n_workers = 1
persistent_data_loader_workers = true
# だいたい途中で止めるので非常に多く設定しておく
max_train_steps = 5000
timestep_sampling = "shift"
discrete_flow_shift = 6.0
fp8_llm = true
vae_chunk_size = 32
vae_spatial_tile_sample_min_size = 128
one_frame = true
# データセットの枚数や`num_repeat`を変更すると、1epochごとのステップ数も変わる
# それでは変更前後のモデルを、同じくらいの学習の進み具合で比較できない
# またwandbに主に記録されるのもステップ数なので、ステップでの保存を推奨
# ただしマシンをn台使うとエポックあたりのステップ数はn分の1になるが...
save_every_n_steps = 100
# 指定したステップごとに、学習途中のLoRAを使って画像/動画を生成する
sample_at_first = true
sample_every_n_steps = 100
sample_prompts = "/workspace/my-framepack-project/configs/v1/prompts.txt"
# save_state を有効にすると `resume` で途中から学習再開できる
save_state = true
save_state_on_train_end = true
# 途中から学習再開する場合のオプション
# resume = "/workspace/my-framepack-models/my-framepack-project-v1-step00001000-state"
# モデルはHuggingFaceに直接保存するが、その場合も output_dir の設定は必要
output_dir = "/workspace/my-framepack-models"
output_name = "my-framepack-project-v8"
huggingface_repo_id = "my-id/my-framepack-models"
huggingface_repo_type = "model"
huggingface_path_in_repo = "/"
save_state_to_huggingface = true
# wandbは無料で使えるので有効化すべき
# 特に log_config を有効にしておくと、どのLoss遷移がどの設定だったか確認できて助かる
# サンプルした画像・動画もwandbに保存できる
log_with = "wandb"
log_tracker_name = "my-framepack-project"
log_config = true
dataset.toml
次のような設定です。なお、kisekaeichiでの学習を前提としています。
[general]
resolution = [512, 768]
caption_extension = ".txt"
# batch_size = 2 # RTX4090 @ 24GB
# batch_size = 8 # RTX6000Ada @ 48GB
batch_size = 16 # H100 @ 80~96GB
enable_bucket = true
bucket_no_upscale = false
[[datasets]]
# datasetを途中から追加したり、メタデータ(プロンプト等)を途中から追加することは非常によくある
# なのでどちらもバージョンをつけておいた方が良い。
image_jsonl_file = "/workspace/my-framepack-project-dataset/dataset-v1/metadata-v1.jsonl"
cache_directory = "/workspace/framepack-lora/configs/v1/cache/dataset-v1/v1"
num_repeats = 10
fp_1f_clean_indices = [0, 10]
fp_1f_target_index = 5
fp_1f_no_post = true
metadata.jsonl
次のような設定です。プロンプトはとりにくさんのNoteが元ネタです。
{"image_path": "/workspace/my-framepack-project-dataset/dataset-v1/girl-pose.png", "control_path_0": "/workspace/my-framepack-project-dataset/dataset-v1/girl-pose.png", "control_path_1": "/workspace/my-framepack-project-dataset/dataset-v1/girl.png", "caption": "Convert reference images of poses and expressions into character design images."}
...
prompts.txt
サンプル用の画像・動画は、次のような形式のプロンプト・設定を含むテキストファイルを指定することで出力できます。wandbを使えば、次のように出力した画像を学習ステップ別に確認できます。
テキストファイルの例です。まずは動画の場合。
rotating 360 degrees. --w 512 --h 960 --f 81 --d 42 --s 20 --i /workspace/data/asagi-chan/chatgpt-4o/asagi-chan-stand-up.png
...
画像の1f学習の例です。--of
オプションはkisekaeichiの想定です。
# コメントも可能
Convert reference images of poses and expressions into character design images. --w 512 --h 768 --d 42 --s 20 --i /workspace/my-framepack-project-dataset/validation/boy-pose.png --ci /workspace/my-framepack-project-dataset/validation/boy-pose.png --ci /workspace/my-framepack-project-dataset/validation/boy.png --of target_index=9,control_index=0;1,no_2x,no_4x,no_post
...
注意点として、サンプルの入力には学習に含めていないデータも用いましょう。モデルの汎化性能を測る必要があるためです。
学習用コマンド
私はMakefile
にまとめることが多いです。
train:
IMAGE_ENCODER=$$(uv run python -c 'import toml; d=toml.load(open("$(CONFIG_FILE)", "r")); print(d["image_encoder"])')
uv run wandb login $(WANDB_API_KEY)
uv run \
accelerate launch \
--num_processes 1 \
--dynamo_backend=no \
--mixed_precision bf16 \
-m musubi_tuner.fpack_train_network \
--image_encoder $$IMAGE_ENCODER \
--config_file $(CONFIG_FILE) \
--huggingface_token $(HUGGINGFACE_TOKEN)
sleep 10m ; runpodctl stop pod $(RUNPOD_POD_ID) &
cache:
DATASET_CONFIG=$$(uv run python -c 'import toml; d=toml.load(open("$(CONFIG_FILE)", "r")); print(d["dataset_config"])')
VAE=$$(uv run python -c 'import toml; d=toml.load(open("$(CONFIG_FILE)", "r")); print(d["vae"])')
IMAGE_ENCODER=$$(uv run python -c 'import toml; d=toml.load(open("$(CONFIG_FILE)", "r")); print(d["image_encoder"])')
TEXT_ENCODER1=$$(uv run python -c 'import toml; d=toml.load(open("$(CONFIG_FILE)", "r")); print(d["text_encoder1"])')
TEXT_ENCODER2=$$(uv run python -c 'import toml; d=toml.load(open("$(CONFIG_FILE)", "r")); print(d["text_encoder2"])')
uv run -m musubi_tuner.fpack_cache_latents \
--dataset_config $$DATASET_CONFIG \
--vae $$VAE \
--image_encoder $$IMAGE_ENCODER \
--one_frame
uv run -m musubi_tuner.fpack_cache_text_encoder_outputs \
--dataset_config $$DATASET_CONFIG \
--text_encoder1 $$TEXT_ENCODER1 \
--text_encoder2 $$TEXT_ENCODER2 \
--batch_size 16
ポイントは次のとおりです。
- バージョンを重ねた時に設定の変更漏れがないよう、
config.toml
を信頼できる唯一の情報源として、それ以外の値はconfig.toml
を動的にパースして取得しています。 - RunPodでの実行を想定しています。学習後に
sleep 10m ; runpodctl stop pod $(RUNPOD_POD_ID) &
と実行することで、自動でインスタンスを落とせます。
実行
tmux
などで仮想ターミナルを作成して、その中で学習を走らせます。同時に、別のターミナルでuvx nvitop
を実行してGPUの利用状況を確認することが多いです。特に、学習の初期ではバッチサイズを調整するため、GPUがどの程度使われているかは細かく確認したいと思います。
状況によって全く異なると思いますが、一例として学習時のwandbのLossは次のようになります。成功している時のLossは0.01付近か以内であることが多いでしょうか。
Lossの遷移が普段と違うな?と思ったら、設定を見直してもいいかもしれません。例えば私の場合、resume
なしで学習していきなりLossが0.01
付近だったら、入力画像と教師画像が同じ画像になっちゃってた、ということがありました。
LoRAを用いた推論
学習したLoRAの性能を測るには、ComfyUIを用いて推論することが多いです。
FramePackのためのカスタムノードもありますが、実はmusubi-tunerでもバッチ推論を行うことができます。次のように指定すればOKです。
uv run -m musubi_tuner.fpack_generate_video \
--fp8_scaled \
--fp8_llm \
--from_file /workspace/my-framepack-project/configs/v8/prompts.txt \
--output_type latent_images \
--dit /workspace/models/diffusion_models/FramePackI2V_HY/diffusion_pytorch_model-00001-of-00003.safetensors \
--vae /workspace/models/vae/diffusion_pytorch_model.safetensors \
--text_encoder1 /workspace/models/text_encoder/model-00001-of-00004.safetensors \
--text_encoder2 /workspace/models/text_encoder_2/model.safetensors \
--image_encoder /workspace/models/image_encoder/model.safetensors \
--vae_spatial_tile_sample_min_size 128 --vae_chunk_size 32 --blocks_to_swap 20 \
--attn_mode sdpa \
--lora_weight /workspace/my-framepack-models/my-framepack-project-v8-step00005000.safetensors \
--lora_multiplier 1.2 \
--save_path /workspace/my-framepack-models/sample/v8-step00005000-lm1.2
まとめ
FramePackのLoRA学習について、「有識者に教えてもらうのが一番早いが、慣れれば$25の学習を5~20回程度回すことで目的のモデルが開発できる」「uvとtomlファイルを用いた構成管理」「wandbを用いた学習の可視化」のコツを書きました。
皆様の探究の助けになれば幸いです。ここでは公開していないデータもあるので、学習で気になることがあればお気軽にさわらまでご連絡ください!お仕事でのモデル開発もお受けしています🙏
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