AIエージェントの秘密兵器『MCP』を解き明かす
1. はじめに:AIエージェントの「歯がゆさ」と、新たな夜明け
AIが身近になり、多くの開発者がその恩恵を受けているそうです。しかし、チャットAIに対して、ある程度の情報の提供や指示をしなければ、意図した出力が得られないという「歯がゆさ」を感じたことはないでしょうか。簡単なメール文の作成程度であれば問題はないのですが、自分の意図をうまく言葉にできていないと思ったような出力を得られないことがよくあります。このことは、AIが単一のプロンプト内でのみ完結してしまう、いわば「孤立した存在」であることが原因なんだとか。そんな「歯がゆさ」を解決してくれる「MCP」という秘密兵器があるんだそうです。知ってました?
先日、Anthropic社が提供するAIモデル「Claude」が「ROS MCP Server」を使ってロボットを自然言語で制御できるというニュースをTwitter(現X)で知り、私はこのブレイクスルーの背後にある技術に強い関心を抱きました。まるでAIが現実世界で魔法を使い始めたかのようなその機能は、まさに生成AIの「次のステップ」を予感させるものでした。「AIとおしゃべりするだけで、ロボットが動かせるなんて、マジで!」って!このニュースを読んで感動しました。「鉄は熱いうちに打て!」って言葉もあるので、すぐさま『やさしいMCP入門』っていう本をポチりました。そして、この止まらないワクワクを、みんなにも届けたくて、ブログにまとめることにしました。
今日のブログでは、AIの能力を飛躍的に向上させるこの技術、**Model Context Protocol(MCP)**について、また、なぜこれがAIエージェント開発の新たな標準となりうるのか、具体的な事例を交えて解説したいと思います。
2. MCPの核心に迫る:AIと外部世界を繋ぐ「共通言語」
2.1. MCPとは何か:AIのための共通インターフェース
MCPは「Model Context Protocol」の略であり、LLM(大規模言語モデル)にコンテキスト情報を提供する方法を標準化するためにAnthropic社が提唱したオープンプロトコルです。
これは、電子機器を接続する「魔法のUSB-Cポート」のようなもの! USB-Cがデバイス間の接続を統一したように、MCPはAIと外部のシステム、データソース、ツールとの連携方法を標準化します。これにより、開発者は個別のアプリケーションに合わせてカスタムの連携コードを毎回書く必要がなくなり、AIエコシステムをより簡単に構築できるようになります。
2.2. Function callingとMCP:AIエージェントの「行動」を支える仕組み
AIエージェントが自律的にタスクをこなすには、外部のツールを適切に呼び出す「行動」能力が不可欠です。この行動を可能にするのが、Function callingとMCPの連携です。
Function callingは、LLMがユーザーの指示に応じて、外部で実行すべき関数の名前と引数を生成する仕組みです 。重要なのは、LLM自身が関数を実行するわけではない点です。LLMはあくまで「この関数をこういう引数で実行すべきだ」という提案を生成し、その実行はクライアント側のアプリケーション(プログラム)が行います。そして、実行結果が再びLLMにフィードバックされ、最終的な回答が生成されます。
MCPは、このFunction callingをさらに強力にします。MCPは、AIが利用可能なツールの一覧を共通の形式で定義し、開発者がそのツールを簡単に追加・管理できるようにする規格です。これにより、AIエージェントは、どのツールをいつ、どのような状況で使うべきかをより正確に判断し、複雑なタスクを効率的に実行できるようになるのです。
3. MCPがもたらす未来:具体的な活用事例
MCPは、すでに様々な領域でAIエージェントの能力を劇的に向上させています。
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開発者の最強の相棒: 「Gemini CLI」や「Cursor CLI」といった開発ツールがMCPに対応したことで、ターミナルから直接、AIにコードの修正やセキュリティチェックを依頼できるようになりました。AIがコードをレビューし、脆弱性を特定して修正案を提示するといった一連の作業が、コマンドラインで完結します。
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ロボットとの連携: 「ROS MCP Server」は、ユーザーの自然言語による指示(例:「前に5m進んで!」)を、ロボット制御システム「ROS」のコマンドに翻訳します。これにより、専門知識がなくても、AIを介してロボットを簡単に操作できる時代が到来しました。
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仕事の自動化: ClaudeがMCP経由でAsanaやZapierと直接連携する機能は、まさにAIエージェントの理想形です。営業レポートの保存からタスク登録まで、複数のアプリケーションにまたがる一連の作業を、AIが自律的に自動化します。
4. まとめと今後の展望
MCPは、AIが単なる「対話相手」から、私たちの現実世界に介入し、具体的な行動を起こす「代理人」へと進化するための鍵となる技術です。Function callingを補完し、ツール連携を標準化することで、AIエコシステムをよりオープンかつ強固なものにしています。
次回では、「やさしいMCP」を読んでMCPの基本から学んでいこうと思います。「千里の道も一歩から」「ちりも積もればヤマトナデシコ」といいますので、みなさんと一緒にMCPや生成AIの知識を増やしていきたいと思っています。
📚(今後)参考(にしたいと思っている)文献リスト
- ** Anthropic公式ブログ**「New capabilities for building agents on the Anthropic API」
- ** Anthropic公式ドキュメント**「Custom connectors for the API」
- ** Anthropic公式ドキュメント**「Model Context Protocol」
- ** https://www.google.com/search?q=Yodobashi.com**「やさしいMCP入門―AIエージェント時代の標準規格」
- ** 秀和システム**「やさしいMCP入門」
- ** Cursor公式ブログ**「Cursor Agent CLI」
- ** Model Context Protocol公式サイト**「Example Clients」
- ** Google Developers Blog**「(https://goo.gle/46aR6a0)」
- ** ROS MCP Server GitHub**「lpigeon/ros-mcp-server」
- ** Google Cloud公式サイト**「生成AIのビジネスユースケース」
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