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Linux 使いになりたい人向けの Intel N100 ミニ PC で構築する開発環境(2)- 仮想化ソフトウェア Hyper-V

2024/01/22に公開

はじめに

これは、Linux 使いになりたい人向けに Intel N100 ミニ PC を使って開発環境を構築する方法を解説する記事の第2弾です。第1弾はLinux 使いになりたい人向けの Intel N100 ミニ PC で構築する開発環境(1) - 構築する開発環境について にありますので、そちらをご覧ください。

ここで使用する Intel N100 ミニ PC の仕様は次のものを前提とします。

項目 内容
OS Windows 11 Pro
CPU Intel N100
メモリ 16GB
ストレージ SSD 512 GB
画面出力端子 HDMI×2
WiFi 5G/2.4G
イーサネット RJ45×1
Bluetoot BT4.2
USB USB3.0×2/USB2.0×2

このマシンで最終的に Windows と Ubuntu Desktop が使えるように環境構築することを目指します。zenn.dev を購読している人のレベルを考えると、画面キャプチャはそれほど必要がないと考えているため少なめです。また、説明についても明示しないとわかりにくいと思われるものに絞っているので少なめです。

なお、実際に作業するときは、ネットワーク回線については数GBのデータをダウンロードしても問題ないものを使うようにしてください。作業の中には、数GBのデータをダウンロードするものも含まれてますので、テザリング環境では使用可能なパケットを使い切ってしまうこともあります。

今回構築するもの

最初に仮想化ソフトウェアを有効化またはインストールします。使用する仮想化ソフトウェアとして、「構築する開発環境」の説明で Hyper-V、WSL2、VirtualBox を挙げてありました。このうち、Hyper-V を1番目に使えるようにします。なぜ「仮想化ソフトウェアの Hyper-V」を最初に使えるようにするのかというと、次の理由からです。

Intel N100 ミニ PC にインストールされている Windows 11 Pro へ直接的に開発環境の構築をしても良いのですが、インストールでトラブルがあったり、インストールしてみたら思っていたものとは違っていたりすることがあります。

そういったことがないように、あらかじめ仮想化ソフトウェアを使って Windows 11 の仮想マシンを用意して、そこへ使う予定のソフトウェアやアプリケーションをインストールしてみることにします。

Windows 11 Pro で使える仮想化ソフトウェアには Hyper-V があり、Intel N100 はこの動作要件を満たしているので、簡単な設定をすることで、すぐに使うことができます。WSL2 も簡単に使い始めることができますが、こちらは Linux の仮想マシンとなるため、Windows 11 の仮想マシンとして使うことはできません。

VirtualBox であれば Windows 11 の仮想マシンを用意できるようになりますが、こちらはインストールが必要です。Hyper-V と WSL2 は Windows の機能として設定により有効化・無効化ができますが、VirtualBox はインストール作業から必要になるので、Hyper-V ほど簡単ではありません。

また、実は Hyper-V の Windows 11 仮想マシンを使うと、そこで WSL2 や VirtualBox を動かすこともできます。WSL2 と VirtualBox は有名な仮想化ソフトウェアですが、使ったことがない人も多いことでしょう。一度、仮想マシンで動かしてみて、基本的な機能や OS の環境にどのような影響があるのかを把握してから、Intel N100 ミニ PC の Windows 11 Pro へインストールする方が安心でしょう。

ということで、最初に仮想化ソフトウェアの Hyper-V を有効化します。また、これを使って Windows 11 の仮想マシンを用意する方法について説明します。

なお、ここで使用する Intel N100 ミニ PC マシンの名前は n100 とします。

仮想化ソフトウェア Hyper-V の有効化

それでは、仮想化ソフトウェア Hyper-V の有効化について説明します。

Hyper-V の機能を有効化するには、Windows PowerShell を使う方法と、GUI の設定画面から設定する方法があります。この記事は Linux 使いになりたい人のためのものなので、積極的にコマンドラインで実行する方法を紹介していきます。コマンド実行より GUI が良い人は後の「GUI で仮想化ソフトウェア Hyper-V の有効化」をご覧ください。

なお、Hyper-V の有効化については、公式には Windows 10 での Hyper-V の有効化 | Microsoft Learn にあるので、必要に応じてそちらもご覧ください。

Windows PowerShell を使用して Hyper-V の有効化・無効化をするには、次の手順を実行します。

  1. 管理者特権で PowerShell を実行(PowerShell のウィンドウを開く)
  2. PowerShell で Hyper-V を有効化するコマンドを実行

Hyper-V は Windows のオプション機能なので、Enable-WindowsOptionalFeature コマンドを使うことで有効化することができます。

Enable-WindowsOptionalFeature -Online -FeatureName <オプション機能名>

Hyper-V に対応するオプション機能名は Microsoft-Hyper-V-All になります。したがって、Hyper-V を有効化するコマンドは次のようになります。

Enable-WindowsOptionalFeature -Online -FeatureName Microsoft-Hyper-V-All

実行例は次のようになります。

PS C:\Users\user001> Enable-WindowsOptionalFeature -Online -FeatureName Microsoft-Hyper-V-All
この操作を完了するために、今すぐコンピューターを再起動しますか?
[Y] Yes  [N] No  [?] ヘルプ (既定値は "Y"):

Hyper-V の機能有効化・無効化の反映にはコンピューターの再起動が必要です。エディタなどでメモを取っていたり他の作業をしている場合は、使っているアプリを終了して再起動しても良い状態にしましょう。それから、Y を入力してコンピューターを再起動します。

再起動したら Hyper-V の機能が有効になっていることを確認します。確認には Get-WindowsOptionalFeature コマンドを使います。

PS C:\Users\user001> Get-WindowsOptionalFeature -Online -FeatureName Microsoft-Hyper-V-All


FeatureName      : Microsoft-Hyper-V-All
DisplayName      : Hyper-V
Description      : 仮想マシンおよびそのリソースを作成および実行するためのサービスおよび管理ツールを提供します。
RestartRequired  : Possible
State            : Enabled
CustomProperties :

仮想化ソフトウェア Hyper-V の無効化

仮想化ソフトウェア Hyper-V の無効化する方法についても説明しておきます。仮想化ソフトウェアはそれなりにリソースを消費するので、必要がないときは無効化しておきたいと思うこともあるでしょう。

無効化するときのコマンドは Disable-WindowsOptionalFeature です。Enable-WindowsOptionalFeature と同じように使えるので、Hyper-V の機能を無効化するには次のようにコマンドを実行します。

Disable-WindowsOptionalFeature -Online -FeatureName Microsoft-Hyper-V-All

なお、Microsoft-Hyper-V 関連の機能について全部を無効化するのではなく、Hyper-V プラットフォームの Hypervisor の機能だけ無効化するだけで、仮想マシンは使えなくなります。Hyper-V プラットフォームの Hypervisor オプションに対応するオプション名は Microsoft-Hyper-V-Hypervisor となるので、次のように実行しても良いです。

Disable-WindowsOptionalFeature -Online -FeatureName Microsoft-Hyper-V-Hypervisor

GUI で仮想化ソフトウェア Hyper-V の有効化

GUI で仮想化ソフトウェア Hyper-V の有効化をするには、Windows のスタートメニューから、「設定」を開きます。設定画面で システム - オプション機能 をクリックして表示される画面で、「Windows のその他の機能」をクリックします。

/images/20240122_hyper_v/win-setting-system-option-etc.png
システム - オプション機能 の画面

すると、「Windows の機能」の画面が表示されます。この画面で指定します。

/images/20240122_hyper_v/windows-optionalfeature-hyper-v.png
Windows の機能 の画面

なお、「Windows の機能」の画面を実行するコマンドは OptionalFeatures.exe なので、「Windows + R」(「Windowsキー」と「Rキー」を同時に入力)で表示できる「入力したコマンドを実行する画面」から表示することも出来ます。そのためには「入力したコマンドを実行する画面」を表示して、OptionalFeatures と入力します。それから Enter を入力します。

/images/20240122_hyper_v/windows-file-executer.png
入力したコマンドを実行する画面

「Windows の機能」の画面にある「Hyper-V」の項目を確認することで、Hyper-V の有効化・無効化がわかります。チェックが入っていれば Hyper-V が使えます。この画面ではチェックを入れたり、はずしたりすることもできます。指定を変更したら「OK」をクリックして設定を保存します。動作している Windows へ反映するには再起動が必要です。

コマンドを忘れてしまったときは、GUI を使うと確実なので、覚えておくと良いでしょう。

Hyper-V マネージャーを使って仮想マシン作成

Hyper-V が有効になっていることを確認したら、Hyper-V を管理するためのツールである Hyper-V マネージャーを起動します。このツールで Hyper-V の仮想マシンの管理ができます。

Hyper-V マネージャーの起動

PowerShell から起動するには virtmgmt.msc コマンドを使います。

virtmgmt.msc

GUI で起動することもできます。Hyper-V マネージャーは Windows ツールの一覧に含まれます。Windows ツールの一覧画面を表示するには、Windows スタートメニューを開いて、「すべてのアプリ」から「Windows ツール」をクリックします。もしくは、エクスプローラーを起動して、パスに「コントロール パネル\システムとセキュリティ\Windows ツール」と入力します。この中に「Windows ツール」があります。

/images/20240122_hyper_v/windows-tools-hyper-v-manager.png
Windows ツールの一覧画面

ここで、仮想化ソフトウェアで使う用語について、簡単に紹介しておきます。Hyper-V で仮想マシンを管理する物理マシンをホストマシンと呼びます。ホストマシンで管理する対象となる仮想マシンについては、ゲストマシン、もしくはゲスト仮想マシンと呼ぶこともあります。

また、マシンではなく OS の方に注目する場合は、それぞれのマシンで動作する OS について、ホスト OSゲスト OS と呼ぶこともあります。

Hyper-V マネージャーを起動すると、Hyper-V が使えるホストマシンの一覧が表示されます。ここでは n100 が対象となるので、次のように表示されます。ここへゲスト仮想マシンを追加していくことになります。

/images/20240122_hyper_v/windows-hyper-v-manager.png
Hyper-V マネージャーの画面

Hyper-V で Windows 評価版の仮想マシンを作成

次に、Hyper-V で Windows 評価版の仮想マシンを作成します。最初の状態では n100 には仮想マシンがないので、一覧画面は次のようになります。

/images/20240122_hyper_v/windows-hyper-v-manager-n100-noguest.png
Hyper-V 仮想マシンの一覧画面(ゲストマシンなし)

Hyper-V で仮想マシンを作成するには、この画面の右側のエリアにあるクイック作成というメニューから始めるのが簡単です。クイック作成には Windows 評価版や Ubuntu といった仮想マシンを作成するためのメニューがあるので、これを使います。クリックすると、クイック作成の画面が表示されます。右下の「その他のオプション」をクリックして、仮想マシンの名前に「Win11Eval」を入力します。

/images/20240122_hyper_v/windows-hyper-v-win11eval-01.png
仮想マシン作成の画面

ここで、仮想マシンを作成するにあたっての注意点として、途中で仮想マシン用のイメージファイルのダウンロード処理が実行されるということがあります。このダウンロードは数 GB のデータ転送となるので、処理が終わるまで、それなりの時間が必要になります。注意してください。ネットワーク接続をして準備ができたら、「仮想マシンの作成」をクリックします。

しばらく待つと仮想マシンの作成が完了して、次の画面になります。

/images/20240122_hyper_v/windows-hyper-v-win11eval-02.png
仮想マシン作成完了の画面

「接続」をクリックすると、仮想マシンへ接続する画面になります。まだ仮想マシンを起動していないので「起動」するためのボタンが画面内に表示されます。

/images/20240122_hyper_v/windows-hyper-v-win11eval-03.png
仮想マシン接続の画面

ここでは、まだ接続しないので起動はしません。ちなみに Win11Eval を起動すると、User というユーザー名ですぐに使えるようになっています。Windows のセットアップ作業が必要ありません。ただし、英語環境となっているので、評価環境として使うには日本語環境の設定が必要になります。

次に仮想マシンの一覧画面を確認してください。仮想マシン Win11Eval が表示されているはずです。

/images/20240122_hyper_v/windows-hyper-v-manager-n100-noguest.png
Hyper-V 仮想マシンの一覧画面(ゲストマシンあり)

以上、Hyper-V を有効化して、Windows の仮想マシンを使えるようにするところまで説明しました。

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