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セキュリティモデル
目次
1. セキュリティモデルとは?
セキュリティモデルとは、情報システムやネットワークをどのように保護するかを定義する概念やルールの体系です。セキュリティの基本原則(機密性・完全性・可用性)を満たすために、アクセス制御やデータ保護、攻撃対策などを体系的に設計するものです。
2. セキュリティモデルの目的
- 不正アクセスを防ぐ(認証・認可の管理)
- 情報の改ざんや漏洩を防ぐ(データの完全性を確保)
- システムの可用性を維持する(攻撃や障害に強い構造を作る)
- 法規制・コンプライアンスの遵守(GDPR、NISTなど)
3. 代表的なセキュリティモデル
セキュリティモデルは、大きくアクセス制御モデルとリスク管理モデルに分けられます。
現代の企業では、ゼロトラストセキュリティ + RBAC/ABAC + 多層防御 などを組み合わせて、より強固なセキュリティ対策を構築するのが一般的です。
3-1. アクセス制御を中心としたセキュリティモデル
ユーザーやシステムが情報や機能にアクセスする際の制限を定める。
(1)ベル・ラパデュラモデル(Bell-LaPadula Model)
- 特徴
「機密性」を重視し、上位レベルの情報を下位レベルのユーザーが読めないようにする。 - 用途・メリット
軍事・政府機関(トップシークレット情報の保護)。
情報漏洩を防ぐ。 - 問題点
書き込み権限の管理が難しく、完全性を考慮しない。
(2)ビバモデル(Biba Model)
- 特徴
「完全性」を重視し、データが改ざんされないようにする。 - 用途・メリット
金融・医療(データの正確性が重要な業界)。
データの改ざんを防ぐ。 - 問題点
機密性を考慮しない。
(3)クラーク・ウィルソンモデル(Clark-Wilson Model)
- 特徴
商取引に適した「完全性」重視のモデル。 - 用途・メリット
金融システム・商取引。
(4)中国の壁モデル(Chinese Wall Model)
- 特徴
利益相反を防ぐため、同じ企業グループのデータを特定のユーザーが同時に扱えないようにする。 - 用途・メリット
金融・コンサルティング業界。
(5)RBAC(ロールベースアクセス制御)
- 特徴
ユーザーの「役割」に応じてアクセス権を設定する。 - 用途・メリット
企業システム、クラウドサービス。
管理が容易、コンプライアンス対応が楽。 - 問題点
ロールの設定・変更が煩雑。
(6)ABAC(属性ベースアクセス制御)
- 特徴
「ユーザーの属性や状況」に応じて柔軟にアクセス権を決定する。 - 用途・メリット
ゼロトラスト、IoT、クラウド環境。
クラウド・ゼロトラスト環境に適応。 - 問題点
設定が複雑で運用コストが高い。
3-2. リスク管理を中心としたセキュリティモデル
システム全体の脅威やリスクに対応するための考え方。
(1)境界型セキュリティ(Perimeter Security)
- 特徴
企業ネットワークの内部と外部を明確に分け、外部からの攻撃を防ぐ。 - 用途・メリット
VPN・ファイアウォール。
(2)ゼロトラストセキュリティ(Zero Trust Security)
- 特徴
「誰も信用しない」を前提とし、すべてのアクセスを検証する。 - 用途・メリット
クラウド・リモートワーク環境。
内部・外部の脅威に強い。 - 問題点
運用コストが高く、パフォーマンスに影響する可能性。
(3)最小権限の原則(Least Privilege Access)
- 特徴
ユーザーに必要最小限の権限のみ付与する。 - 用途・メリット
情報漏洩対策、RBACの補完。 - 問題点
権限管理が複雑化する。
(4)多層防御(Defense in Depth)
- 特徴
1つの防御が突破されても別の防御が機能するように、複数のセキュリティ対策を組み合わせる。 - 用途・メリット
金融機関・企業ネットワーク。 - 問題点
導入コスト・管理負担が大きい。
(5)サイバーハイジーン(Cyber Hygiene)
- 特徴
基本的なセキュリティ習慣(パスワード管理、更新、教育など)を徹底する。 - 用途・メリット
企業・個人の情報セキュリティ対策。
(6)リスクベースセキュリティ(Risk-Based Security)
- 特徴
システムのリスクを分析し、最も重要な部分に対策を集中させる。 - 用途・メリット
コスト最適化、企業セキュリティ戦略。 - 問題点
適切なリスク評価ができないと効果が薄い。
(7)アダプティブセキュリティ(Adaptive Security)
- 特徴
AIを活用し、リアルタイムで脅威を検知・対策する。 - 用途・メリット
EDR/XDR、ゼロトラストの補完。
4. 近年注目されるゼロトラスト(セキュリティ)
ゼロトラストは、企業のIT環境がクラウド化・リモートワーク化する中で、もはや必須のセキュリティモデルになっています。MFAや最小権限の原則などを組み合わせて、「すべてのアクセスを疑い、継続的に検証する」ことが重要です。
4-1. ゼロトラストの3つの基本原則
(1)すべてのアクセスを検証する
- ユーザー、デバイス、ネットワーク、アプリケーションなど、あらゆるリクエストが正当なものかを確認。
- 多要素認証(MFA) や デバイス認証 を活用。
(2)最小権限の原則(Least Privilege)を適用する
- 必要最小限のアクセス権限だけを与え、不要な権限を制限。
- ユーザーごとに異なるアクセス制御を設定(RBAC / ABAC)。
(3)継続的に監視し、異常を検知する
- 一度認証した後も、ユーザーの行動を監視し、不審な動きがあれば即座に対応。
- AIやログ分析を活用して、異常なアクティビティを検知。
4-2. ゼロトラストが必要とされる理由
- VPNの限界: 従来のVPNは一度内部に入られると自由に動けてしまう。
- クラウド環境の普及: 企業のシステムがクラウド化し、境界が曖昧になった。
- サプライチェーン攻撃の増加: 外部サービスや取引先経由の攻撃リスクが増加。
- 内部脅威(インサイダー攻撃): 内部の人間が意図的・偶発的に情報漏洩を起こすケースが増えている。
4-3. ゼロトラストの具体的な技術やツール
- 多要素認証(MFA): IDとパスワードだけでなく、ワンタイムパスワード(OTP)や指紋認証を利用。
- シングルサインオン(SSO): 1つの認証で複数のシステムに安全にログイン。
- エンドポイントセキュリティ(EDR/XDR): 端末の異常な動作を検知し、攻撃を阻止。
- ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA): VPNの代替として、アクセスを最小限に制限。
- SIEM/SOAR: ログ監視と自動対応で異常を検知・対策。
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