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スクラムを浸透させる中でレトロスペクティブを重視した理由

2023/05/27に公開

はじめに

前回、僕がスクラムマスターとして関わっているチームがスクラムやる意味ある?を乗り越えるための変遷について紹介しました。
https://zenn.dev/heromina/articles/29e9771698237f
その中で「君レトロスペクティブに力注ぎすぎやろ」って感じた人もいるかと思います。この記事では、僕がなんでレトロスペクティブを重要視して取り組みを進めてきたのか、そもそもどんなチームにしたいと思っていたのかについて話そうと思います。

この記事でわかること

この記事では、チームが混乱期に入っている時に僕が考えていたチームの理想の姿について、そしてその理想の姿に近づくために僕がレトロスペクティブの改善を重要視した理由について紹介します。この記事を読むことで、以前書いた記事で紹介した取り組みの背景がより理解できるようになると思います。

簡単な振り返り

いきなり本題に入る前に、前回書いた記事のサマリを簡単にここで紹介します。僕は昨年の6月からスクラムマスターとしてチームに参画し、8月ごろからチームが混乱期に入り、スクラムやる意味あるん?っていう言葉がチーム内で飛ぶようになっていました。混乱期を乗り越えるために取り組んだことの一つにレトロスペクティブの再構築を行いました。当時のレトロスペクティブではKPTに沿った振り返りをしていましたが、 Problemの内容が個人的な話ばかりでチームで取り組むTryが作れなかったり、全部のProblemについて議論してTryを作成しようとしていて時間内に納得できるTryが一つも作れなかったり、発生したProblemの原因を話し合うときに脱線してTryの案出しが急に始まってしまい、的外れなTryを作成してしまうといった状態が続いていました。

チーム発足間もない頃のレトロスペクティブです。出てきた課題全てに対してTryを作ろうとしているため、一つ一つの課題に対しての議論がとても浅く、Tryも定着しませんでした。
これらの課題を解消するために、僕とリーダーで話し合ってレトロスペクティブの目的は何か、目的に沿ってセレモニーをどう進めていくのか、参加者にどんなことを期待しているのかをNotionにまとめ、共有しました。共有してからすぐにレトロスペクティブが改善されていき、みんなが納得できるTryを作成できるようになりました。この辺りからチームのメンバーが当事者意識を持つようになり、他のセレモニーについても進め方や改善案について自発的に話し合ってくれるようになり、混乱期を乗り越えることができました。

レトロスペクティブを再構築した時に決めた参加者に期待すること。メンバーとファシリテーターそれぞれに対して期待することを記載することで、参加者の立場によってどんな行動を求められているのかが明確になりました。また、ファシリテーターに期待することをこの段階から共有することで、ファシリテータが何をしたらいいのかの共通認識が生まれ、問題なくファシリテーターを交代制にできました。

なんでレトロスペクティブに力を注いだのか?

僕が考える理想のチーム像

簡単な振り返りが終わったところで、本題に入ります。まずは混乱期に入っている時に僕が考えていた理想のチーム像が何なのかを紹介します。
僕が理想としているチーム像はズバリ「スクラムマスターがいなくてもチームが自発的に意思決定ができる」です。ここでの意思決定とは、スプリント内で発生した課題を解決することと優先順位をチームで決めることです。これらをチーム内で責任を持って決めることができる状態になれば所謂自己組織化に成功したと言えます。
また、「スクラムマスターがいなくても」が特に重要です。スクラムマスターがお母さんみたいにチームのお世話をしすぎると、メンバーが「スクラムマスターが課題を解決してくれるし優先順位も決めてくれる」と思ってしまい、スクラムマスター離れができなくなってしまいます。よく「スクラムマスターはサーバントリーダーである」と言いますが、このサーバントの意味が奴隷になっているスクラムマスターが多いと思います。そうなるとスクラムマスターの負荷が多い割にチームの状態もよくないスクラムチームになりがちです。僕が思うサーバントリーダーの役割は「チームを自己組織化に導く」ことだと思っています。あくまでフォーカスすることは「自己組織化するためにチームのメンバーに当事者意識を持たせ、主体的に動くチームを作る」ことであって、雑多なタスクを代わりにやることではありません。ここを意識するだけでスクラムマスターの負荷が改善し、チームの状態も良くなっていくと思います。

レトロスペクティブを重視した理由

理想のチーム像を話した上で、なんで僕がレトロスペクティブを重視したのかを話していきます。僕がレトロスペクティブを重視した理由は「レトロスペクティブを改善することでチームの自己組織化が一気に進むと考えたから」です。そう考えている背景の1つはレトロスペクティブは、他のセレモニーと比べて性格がかなり異なっていると考えています。
 1つ目の違いは、他のセレモニーと繋がっていること。レトロスペクティブは、スプリント全体を振り返って、何が課題だったのか、その課題を解消するためにどんなアクションを取るのかにかなりの時間を費やします。その振り返る対象はスプリント期間全てなので、他のセレモニーも振り返る対象になります。また、レトロスペクティブは課題の解決に向けたTryを作成することから、レトロスペクティブでの課題解決に向けた議論の質を向上させることでチームとしての課題解決力を向上させることができると考えています。
 2つ目は、継続的なチームの改善にレトロスペクティブは欠かせないと考えていることです。チームの改善点や課題の解消について議論するセレモニーは、レトロスペクティブがメインです。レトロスペクティブをうまく運用することで、継続的にチームの課題を解消し続ける組織になることができると考えています。
 また、もう一つの背景もあります。それは、レトロスペクティブはチームの成熟度を測りやすいのではないかと考えているからです。前の記事で紹介したタックマンモデルの中で、僕は混乱期から統一期に変わるまでの間が重要だと考えています。チームの意見がバラバラだった時から、チームが同じ方向を向いているかどうかを測るためにはレトロスペクティブがうってつけだと思っています。
これは僕の経験なのですが、混乱期はみんなが思い思いのことを話して議論が右往左往してしまってみんなが納得できないTryを作成してしまったり、みんな何を話したらいいか分からず、議論が硬直して時間オーバーになってしまうことが多かったです。これは、何を解決したくてどんな姿になりたいのかの認識が揃っていない状態で議論を前に進めようとしていたからだと今は振り返っています。まず今日は何を解決したいのか、その問題を解決することでチームはどんな状態になるのかを先に話し合うようにしてから、議論に迷いがなくなり、みんなが自信を持って議論に参加できるようになっていました。その結果、全員が納得した状態でTryを作ることができましたし、議論の脱線が少なくなったことから今までレトロスペクティブに3時間くらいかかっていたのが2時間で終わるようになりました。

レトロスペクティブを再構築した時に決めた意図とゴールです。ゴールを設定することで参加者間の共通認識が生まれ、「この課題やTryについて話し合うことでゴールに向かっていけるのか」といった基準の認識が揃い、議論が硬直したり脱線することが少なくなりました。
ざっくりまとめると、レトロスペクティブからチームの課題解決力、チームの議論に対する成熟度を測ることができ、継続的に改善し続けることでチームが自発的に課題の解決に向き合うことができるようになり、最終的に自己組織化につながると考えています。

おわりに

最後まで見ていただきありがとうございます。これからも技術のことやスクラム開発のことを書いていこうと思うので、読んでいただけると嬉しいです。

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