🐈

フォワードデプロイドエンジニア(FDE)とは何か

に公開

フォワードデプロイドエンジニアとは?

フォワードデプロイドエンジニア(Forward Deployed Engineer、FDE)は、顧客と直接連携し、既存のソフトウェアプラットフォームを顧客固有の複雑な課題解決のために設定、カスタマイズ、展開するソフトウェアエンジニアの職種です。

フォワードデプロイドエンジニアの役割・仕事内容

1. 顧客との直接的な連携

顧客のチームに直接組み込まれ、彼ら彼女らのニーズや課題を深く理解します。

(例)

  • Palantir の FDE は、米国国防総省の顧客と協力してデータ統合ソリューションを提供しています。
  • Toma の FDE は、顧客と話し、サードパーティのプラットフォームとの統合を構築し、カスタムのユースケースを設計する経験が求められます。

2. ソリューションの設計と実装

お客様の具体的なニーズに対応するため、既存のプラットフォームを設定したり、新しい機能を構築したりします。

(例)

  • Baseten の FDE は、お客様と協力して機械学習ソリューションを設計・実装します。
  • Lindy の FDE は、AIエージェントを活用して顧客のビジネスを変革し、ノーコードエージェントワークフローを構築・維持します。

3. 技術的な専門知識の活用とフィードバック

現場での技術的な専門知識をビジネス開発チームや製品開発チームに共有し、製品の追加や改善に貢献します。

(例)

  • Palantir の FDE は、サイバー関連のプロジェクトで得た経験とソリューションの情報を社内の新しいチームと共有し、より効果的なサイバーワークフローのベースライン製品を構築することに役立てています。

フォワードデプロイドエンジニアに必要なスキル

フォワードデプロイドエンジニアに求められるスキルは多岐にわたり、以下の要素が含まれます。

1. 技術的スキルと知識

  • プログラミング言語と開発経験:
    • Python は、特にAI/MLプロジェクトにおいて強く推奨されるか、必須とされることが多いです
    • SQL の強力な専門知識
    • JavaScript または TypeScript も、フルスタック開発やAPI連携において必要とされることがあります
    • フルスタックシステム(フロントエンド、バックエンド、データベース、キュー、インフラストラクチャ)の経験
  • AI/MLおよびLLM関連スキル
    • AI/MLパイプラインのライフサイクル(開発からデプロイまで)に関する知識と実装経験
    • LLM(大規模言語モデル)や生成モデルを搭載したシステムの構築またはデプロイ経験、およびモデルの動作が製品体験に与える影響の理解
  • システムインテグレーションとデータエンジニアリング
  • クラウドおよび分散システム

2. 顧客エンゲージメントとコミュニケーションスキル

  • 顧客の課題を深く理解し、彼ら彼女らのニーズを実行可能なソリューションに変換する能力
  • 複雑な技術的トピックを明確に伝え、異なるステークホルダーとの間で明確な理解と調整を行える能力
  • 顧客の主要なステークホルダーと深い関係を築き、信頼できるアドバイザーとして機能する能力
  • 顧客会議やデモで、自社のプラットフォームが顧客のワークフローにどのように適合し、どのような成果をもたらすかを効果的に説明する能力

3. 問題解決と適応性

  • 製品の機能と顧客のニーズが常に変化する状況で、技術的な問題やビジネス上の課題に対し、独創的かつ効率的な解決策を見つける能力
  • 曖昧な状況を乗りこなし、トレードオフや問題解決に必要なツールについて適切な判断を下す能力
  • 未経験の分野や技術に迅速に適応し、常に新しいスキルや手法を学ぶ意欲
  • スタートアップのような急速に変化する環境で、常に学習し、適応する能力

4. プロジェクト管理とオーナーシップ

  • 製品やプロジェクトのライフサイクル全体をエンジニア兼プロジェクトマネージャーとして所有し、実行する能力
  • 自分の仕事に対する誇り、オーナーシップ、説明責任を持ち、品質と進捗の基準を維持する能力
  • 自律的にプロジェクトに取り組み、計画を立て、障害を取り除き、実装を推進する能力
  • 顧客のニーズを製品の洞察に変え、製品ロードマップに直接影響を与える能力

フォワードデプロイドエンジニアは普通のソフトウェアエンジニアとは何が違うの?

フォワードデプロイドエンジニアは、従来のソフトウェアエンジニアが複数の顧客向けに一般的な機能を開発するのに対し、単一の顧客に深く関わり、既存の製品や技術を顧客の具体的な、しばしば複雑なニーズに合わせてカスタマイズ、実装し、その成果を迅速に実現することに特化した役割と言えます。FDE は技術的な専門知識と強力な顧客対応能力を兼ね備え、製品の進化にも貢献します。

フォワードデプロイドエンジニアはコンサルタントとは何が違うの?

フォワードデプロイエンジニア (FDE) は、コンサルタントとはいくつかの点で異なります。

  • FDE は、ソリューションを迅速に提供しながら、技術的に非常に創造的である点がコンサルタントとは異なります。
  • FDE は、自社製品を活用し、柔軟かつ効率的に問題を解決します。これにより、顧客ごとにゼロからソリューションを開発する必要がなく、何年もかけてつぎはぎのソリューションを作成するようなことがありません。
  • コンサルタントとは異なり、FDE はほとんどの要素をすぐに利用できるため、「車輪の再発明」をする必要がありません。その代わりに、適切な機能のアーキテクチャを構築したり、ユーザーを強化するための新しい「秘密のタレ」を考案することに集中できます。このアプローチにより、FDE は顧客がより独自の方法で仕事ができるソフトウェアを常に作成します。

フォワードデプロイドエンジニアはソリューションアーキテクトとは何が違うの?

フォワードデプロイドエンジニアの役割は、ソリューションアーキテクトの機能を含むが、それを超えるものです。

  • FDEは、設計したソリューションを自ら「構築」「実装」「展開」「維持」する責任を負います。これは、伝統的なソリューションアーキテクトが設計と戦略に重点を置き、実装は他のエンジニアリングチームに任せることが多いのとは対照的です。
  • FDEは、データパイプラインの構築とスケーリング、アクセス制御の設定、本番システムの監視とメンテナンス、根本原因の特定と修正の展開など、日々の技術的な課題に直接対処します。
  • FDEは「プロトタイプから展開まで迅速に動く」ことや、「フルスタックソリューションを構築する」こと、さらには「進捗や明確性がそれに依存する場合、コードに直接貢献する」ことが求められます。

要するに、FDE は、顧客のニーズを理解し、技術的な解決策を設計するソリューションアーキテクトとしての能力を持つだけでなく、それらのソリューションを実際に構築し、展開し、本番環境で維持管理するという、より深く、より実践的なエンジニアリングの役割を担っています。FDE は、顧客に直接的な影響を与える「技術的な橋渡し役」であり、「実践するエンジニア」であると言えます。

フォワードデプロイドエンジニアは日本の客先常駐SEとは何が違うの?

フォワードデプロイドエンジニアは自社製品を顧客の具体的な課題解決に活用する点で、より戦略的かつ影響力の大きい役割を担っています。

FDE は、自社の既存のソフトウェアプラットフォームを顧客に合わせて構成・調整し、最も困難な問題を解決することに特化しています。対して、一般的な客先常駐SEは、顧客の要件に基づき、特定のシステム開発や運用保守に携わることが多く、必ずしも自社製品に限定されず、幅広い技術スタックを扱うことがあります。

参考文献

Discussion