Microsoft Entra Agent IDってなに?
執筆日
2025/6/2
参考資料
Microsoft Entra Agent IDとは?
Azure AI FoundryやCopilot Studioで作成されたAIエージェントに自動的に一意のIDを割り当て、Microsoft Entraディレクトリ内で管理可能にします。
これにより、IT管理者はエージェントの認証、認可、アイデンティティ保護、アクセスガバナンス、可視性を一元的に管理することができます。
なぜMicrosoft Entra Agent IDが必要なのか?私なりの考え
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AIエージェントが“ユーザー”のように振る舞う時代への対応
これからのAIは、単なる支援ツールではなく、自律的に判断し行動する“エージェント”として業務を担うようになります。そのため、従来の「アプリケーションID」では不十分で、人間と同じように認証・認可・監査が必要な主体(identity)としての管理が求められます。 -
セキュリティとガバナンスの強化(Zero Trustの実現)
AIエージェントが業務データにアクセスする以上、「誰が、いつ、なぜ、その情報にアクセスしたか」を証明できることは非常に重要です。Microsoft Entra Agent ID によって、
最小権限アクセス、条件付きアクセス、監査ログの取得といった Zero Trust セキュリティモデル をAIエージェントにも適用できます。 -
スケーラブルで安全なAI導入の基盤づくり
複数のエージェントを同時に運用しようとしたときに、個別にOAuth設定やセキュリティ審査を行うのは非現実的です。Agent ID により、開発者が最小限の労力でセキュリティガバナンスに準拠したエージェントを迅速に導入できるようになります。 -
組織のID管理資産との統合
Entra Agent IDは、既存のMicrosoft Entraのアプリケーション・ユーザー管理基盤と統合されるため、新しいID体系を学ばずに既存の管理手法でエージェントを制御できます。これはIT部門にとっても大きな利点です。 -
今後のAIガバナンス規制への備え
AI利用に対する規制(例:EU AI Act)が強化される中で、「誰が何をしたか」を説明できる体制を整えることは必須になります。Agent IDは、説明責任(Accountability)を支えるインフラにもなると考えます。
現時点でできること
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統合ディレクトリ管理
Azure AI FoundryとCopilot studio 上で作成されたすべてのAIエージェントがMicrosoft Entra 管理センターのエンタープライズアプリケーションに自動登録され、認証、認可、ID管理、ガバナンス、可視化の管理を行うことができます。
今後できること
今後数か月以内には、Zero Trustセキュリティ体制の強化や、開発者とID管理者の作業効率向上につながる魅力的な新機能が Microsoft Entra Agent ID に追加される予定です。
開発者向け
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組み込みのセキュリティ制御
Microsoft Entra のエージェントIDは、最小特権の原則に基づき制御され、必要なリソース(例:特定のファイルやTeamsチャンネル)にだけアクセスできるよう、スコープ付きのトークンを「必要な時だけ」発行します。 -
即時のエンタープライズ導入
エージェントIDは Microsoft Entra において完全な新しいIDとして登録されるため、既存のアプリやユーザーと同様に、組織のID管理者が検出・承認・監査を行えます。追加のセキュリティレビューやカスタムOAuthフローは不要です。 -
スケーラビリティ対応
一度登録すれば、同じコードベースとテレメトリーストリームを維持しつつ、他の Microsoft Entra テナントにも個別のポリシーを持つエージェントIDを持たせることができます。
ID管理者向け
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より高度なアクセス制御
リアルタイムのシグナルやコンテキストに基づき、AIエージェントが必要とするリソースのみにアクセスを許可する、きめ細かな条件付きアクセスポリシーや権限の設定が可能になります。 -
ライフサイクル管理の強化
AIエージェントのIDは、ユーザーやサービスと同様に、作成から廃止までの間、最小権限アクセスを自動で適用しながら厳密に管理できます。 -
監査・モニタリング機能の拡充
エージェントの活動ログや動作の可視化が強化され、コンプライアンスやセキュリティ監視のために、どのエージェントがどの操作を行ったかを正確に追跡可能です。
まとめ
AIエージェントの開発の熱が高まっている中、エージェントを管理/運用していくエンジニアにとって Microsoft Entra Agent ID は画期的なものだなと。
見過ごされがちだった「AIエージェントの管理」という課題に対して、開発者は迅速に安全なエージェントをデプロイでき、IT管理者は既存のツールで一元的に監視・制御できる。
これエージェント開発/導入において大きな推進力となるのかなーと。
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