格闘ゲームにおけるAI活用事例
なぜ本記事を書こうと思ったのか
筆者は格闘ゲームを趣味で嗜んでいるのですが、以下のXのポストを見たのがきっかけでした。
ポスト内容の解説 ※敬称略
- あきら:日本人ESportsプロプレイヤーで、StreetFighter6でのメイン使用キャラは『キャミィ』
- LeShar:韓国人ESportsプロプレイヤーで、StreetFighter6でのメイン使用キャラは『エド』
- ドリーム:『エド』で"SA2:サイコキャノン"という技を駆使した超絶プレイ(運搬コンボ)の通称
https://youtu.be/ariPIyt-IRU?feature=shared
現時点で格闘ゲームの覇権ともいうべき『StreetFighter6』にて、2024/9/24のアップデートでVライバルマッチという機能が搭載され、これにより数百万のプレイヤーのプレイデータを学習し生成されたAIと対戦できるようになりました。
上記のポストですが、人間でも実戦での再現が難しい『ドリーム』という超絶プレイをAIが披露して、プロプレイヤーのあきら選手を驚かせたという内容になります。
AIの生成に必要なデータ数は1キャラクターごとに10戦ほど(推奨は50戦)で、普通にプレイしていればすぐに生成は出来そうな試合数です。
実際にどれくらいAIは強いのか
日本人ESportsプロプレイヤーの立川選手の自身のAIデータとの対戦動画が参考になりました☺
独特な後退の仕方や状況に応じた連携、インパクトへの反応、さらには挑発プレーなど、AIがうまく立川選手の動きを模倣して動いてくれています。
格闘ゲーム界におけるシステムにAIを導入した事例
筆者の知る限り、AI(ニューラルネットワーク技術)を活用した始祖となるゲームは、2.5Dの剣劇格闘ゲームである『サムライスピリッツ(令和版)』のGHOSTモード(道場・ゴーストマッチ)となります。
筆者もこのゲームを所有しており、実際にプレーしたことがありますが、正直人間らしいプレイは感じられませんでした(単純に動きのバリエーションが乏しく弱かった。。。)。
ただコロナ前にAI技術が浸透し始めたこの当時にAI技術を格闘ゲームに取り入れたというアヴァンギャルドな試みは称賛すべきことだと思います。
また、近年でも『鉄拳8』という3D格闘ゲームでも『スーパーゴーストバトル』というモードで、AIのゴーストデータと対戦が可能。
使用している技術はQラーニングとのこと。
なお、同作の『スーパーゴーストバトル』機能を使用して、亡くなった弟のAIゴーストといつでも対戦ができるようになったというエピソードがSNSで話題になりました。
格闘ゲームにおいてAIゴーストを取り入れる意味
格闘ゲームをやっている人ならわかるのですが、他プレイヤーと対戦をする前に自プレイヤーはトレーニングモードで様々なシミュレーションを行い、"確認作業"をします。
おもに確認することを以下に列挙してみます。
- コンボルートの確認
- 自身や相手が扱うキャラクターの強い連携行動、およびリスクの少ない対策の確認
- 技のリーチの確認
- 技ガード時のフレームの有利不利状況の確認
- 相手の技の空振りや技のガード時の確定反撃の確認
たくさん確認することがありますね💦
ただ、上記の確認作業を苦労してやったうえで実戦に臨んでも、練習したことが実戦で発揮されないケースが多々あります。原因としては
- 緊張(ランクマッチや大会とかだとなおさら)
- 練習した状況が中々再現できない(トレーニングモードと違って相手キャラは不規則に動く)
が大きい点かと思います。
で、プレイヤーとしては
『(実戦で負けたくないから)実戦の前に、実戦に近いスパークリングをしてくれる相手が欲しい』
と思うわけです。
この需要に見事にハマったのがAIというわけです。
もちろん、勝敗がポイントとは関係のないカジュアルマッチでもスパークリングは可能ですが、AIと対戦するメリットとしては、
『いつでも好きな時間に気兼ねなく好きなキャラクターと実戦に近い対戦ができる』
ことに尽きるでしょう。
サムライスピリッツ(令和版)から導入が始まり、約4~5年ほどでEVO2024にも選出された2タイトルで実際の練習相手として務まるまでにAIが進化したことは、驚異的と感じざるを得ません。
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