読書記録「世界一カンタンで実践的な文系のための人工知能の教科書」<7~11章>
概要
書籍「世界一カンタンで実践的な文系のための人工知能の教科書」の読書記録である
第1章から第11章までのうち、第7章から第11章までをまとめる
第7章:これからのAIはどうなる?
AIが感情を持つようになるって本当ですか?
感情は社会的交流(身振りや手振りなどの身体的会話や、人間のような言語を用いた会話など)の中で生まれる。そのため、AIにも「感情らしきもの」を空想することはできるが、確かめられない。
感情や意識を持つうえで重要な「複雑さ」は3つあり、人間が一般的に推測する高度な感情を持つ生き物は社会性が高い。AIは自律性や社会性が低いが、社会性を持ったAIの研究が進められている。将来的に「より高度な感情」を持つAIが誕生するかもしれない。
- 感情や意識を持つうえで重要な複雑さ
- 自律性
明示的に目標を与えられなくても、自身で行動を選択できる能力 - 計算性
何か解きたいタスクが現れたとき、それらを解決する能力 - 社会性
同種の生き物とコミュニケーションを取り、自分一人ではできないことを可能にする能力
- 自律性
AIがAIを作るってどういうことですか?
AIがAIを作る「AutoML」の研究が注目されている。AI作成前にAIのアーキテクチャを定義するが、これを自動させる試みのこと。
囲碁AI同士が対局したらどうなるのですか?
強化学習をベースに、2つのAIが交互に学習を行う仕組みを、自己学習と呼ぶ。交互に学習を繰り返すことで、両者ともに徐々に賢くなっていく。
AIはどのようにリアルなフェイク画像を作るのですか?
AI同士を対等な関係ではなく、敵対関係で性能向上を図る手法を、GAN(敵対的生成ネットワーク)と呼ぶ。2種類のAIが競い合い、同時に学習を行うことによって、本物と見間違う画像をAIが生成できるようになった。
AIはどのように不良品を見つけるのですか?
品質管理の場合に、正常品しか流れてこない工場のコンベアを想定する。正常品のみを使用してGANを学習させると、正常品らしいデータを生成する偽造AIとそれを見抜く警察AIが生成される。
仮に不良品を流すと、偽造AIが「自分が作る偽物よりも本物らしくないから、偽物!」と不良品を見抜くことができる。正解を知っているから、正解と乖離がある場合に異常を検知する仕組み。
第8章:AI研究の最前線
AIの研究が急速に進んでいる理由を教えてください
AI研究が加速度的に進化している要因の1つに、オープンな研究開発環境がある。誰でも最新の論文にアクセスでき、AIのプログラムコードも手軽にダウンロードして利用することができる。
- 利用者のメリットは下記
- 簡単に試せる(利便性)
- 第三者が検証できる(透明性)
- 新しい参加者が受け入れやすい(参加)
- 提供者のメリットは下記
- 知的財産のオープン化により、協力者の増加
- コミュニティ形成による、創出価値の増加
- 差別化部分は守ったうえで、外部の力を利用
- オープン化によるもう一つの価値
- オープン化により、「AIがコモディティー化した」or「AIが民主化した」と言われている
世界でAI研究をリードしているのはどこの国ですか?
2012年から2018年の間にAIトップ国際会議で採択された論文数を見ると、1位がCMU(カーネギーメロン大学)、2位がマイクロソフト、3位がグーグル。2018年のAAAI(アメリカ人工知能学会)の論文投稿数と採択数を見ると、アメリカと中国が大半を占めていることが分かる。
日本はAI技術について学べる大学や学科が、諸外国と比べて著しく少ない。
最先端のAI研究に触れるにはどうすれば良いですか?
各企業の発表を除くと、AI研究者が研究成果を発表する場は、学術雑誌・学会・arXiv(アーカイヴ)の3つである。品質が担保されている論文は、査読(審査)のある学術雑誌。arXivには、最先端の論文が最速で集まる。
AI研究の成果はどのように評価されているのですか?
研究者が論文を書き、査読によって第三者に正確性や先進性を認められる必要がある。最先端研究に精通した人が査読を行うが、査読者が不足している状況が起きている。若手研究者の増加により、AI分野の論文数がものすごい勢いで増加しているためである。
AI研究のいまの課題はなんですか?
精度向上を目指す研究も大事だが、AI研究は発展途上であるため、抜本的な考え方の変革が長期的に見て重要である。しかし、理論的な研究は求められるスキルが高いため、査読者も限られている。
第9章:AIを使いこなすには?
AIプロジェクトに取り組むときの注意事項を教えてください
AIはデータを処理するものであるため、「データから新しい価値を生む目的」を持ったデータサイエンティストのための道具といえる。AIを料理に例えると、プロジェクトにおけるトラブルをイメージしやすくなる
料理 | AI | |
---|---|---|
作る人 | 料理人 | データサイエンティスト or AIエンジニア |
材料 | 食材 | データ |
道具 | 調理器具 | コンピュータなどの計算機・プログラミング言語 |
方法 | レシピ | AIアルゴリズム |
完成品 | 料理 | 学習済みのAI |
提供先 | 客 | ユーザー |
トラブル原因 | 料理 | AI |
---|---|---|
材料が不適切 | 材料が傷んでいると、美味しい料理ができない | データが整っていなかったり、古すぎると、AI学習が正しく行われない それにより、AIが出す答えの信頼性が不足している・精度が低いという問題が発生する |
材料不足 | 必要な食材がないと、想定通りの料理は作れない | 必要十分な学習データがないと、ほしい結果を得られない |
方法の誤り | レシピが異なると、望んだ味付けにならない | 学習アルゴリズムの選択を間違えると、いつまでも学習効率が上がらない |
完成品が不明 | 食材だけ渡されて「何か作って」と言われても、望まれた料理を作ることは難しい | データだけ渡されて「何かして」と言われても、望まれたものを生成することは難しい |
作る人の技術力 | 料理人のスキルによって、「お任せ」を注文されたときの料理に違いが出る | データサイエンティストのスキルによって、未知の状況に置かれた時の対処・学習の正確性等に差が出る |
AIプロジェクトで差をつけやすいポイントを教えてください
AIプロジェクトにおいて、差別化できる部分と差別化しづらい部分がある。
- 差別化が難しい部分
- AIアルゴリズム
AIの中核アルゴリズムの多くは、オープンソース開発。選択肢は無限といえるほど充実しているため、AIアルゴリズム自体での差別化は難しい - 計算環境
大量のデータを収集して学習させるため、AIには大きな計算リソースが必要になる。高度な計算基盤はクラウドで提供されているため、差がつかない
- AIアルゴリズム
- 差別化しやすい部分
- データサイエンティスト
最新論文を理解できる語学力や、数学などの背景知識、企業の要望に対して提案を行えるコンサルティング能力など、良いデータサイエンティストに求められる資質はハイレベルである。そのため、人数が少なく、優秀なデータサイエンティストを採用することができると差別化できる - データ
良質なデータは、誰にでも手に入れられるものではない。データ収集プロセスにはオリジナリティがあるため、真似できないことも多く、独自性のあるデータを使うことで、差をつけられる。 - ユーザー
最新技術を使用しなくても、多くのユーザーに利用してもらうことができると、生み出すインパクトは大きくなる。
- データサイエンティスト
第10章:AI投資を成功させるには?
どんな領域のAIに投資すれば良いですか?
AIが活躍する分野(機能領域)は、「識別領域(人と同等の目や耳を持ち、人を支援する)」「予測領域(過去のデータから学び、未来を予測する)」「実行領域(輸送・製造・品質管理など、ホワイトカラー業務を支援する)」の3つに分類できる。
AIの仕組みそのものや、学習効率性や精度向上の方法等の基礎研究
は、世界各国の大手IT企業や大学等の研究機関がしのぎを削っている。
AI導入企業にとって競争力の源泉になる応用研究
は、基礎研究と自社で求められるニーズを照らし合わせて研究を行う。
AIビジネスにチャレンジする際の注意事項を教えてください
AIは必ず間違えるという前提で、ビジネスへ適用する必要がある。また、AI性能の向上と売上が比例するとは限らない点に、注意する。
- AIを主体的に用いる
- AIの精度が一定のレベルに到達するまで、売上が立ちにくい
- AIにビジネスそのものが依存している
例)自動車の自動運転機能
- AIを補助的に用いる
- AIがない or AIの精度がゼロでも、売上が確保できる
- 精度が向上するに連れて、売上も伸びていくビジネスモデル
例)商品レコメンド機能
第11章:近未来のAIはどうなるか?
およそ5年後に、下記5つが実現できると考えられる。
- AIの精度が格段に向上する
- AIを作成するプロセスが大幅に簡略化(自動化)される
- AI内部の解釈性があがる
- Society 5.0の実現により、AIを利用できる環境が整備され広がる
- ファジーな概念を扱うAIが実用化する
下記2つは、およそ5年では実現困難と思われる。
- AGI(Artificial General Intelligence、汎用人工知能)
- AIの倫理観、人の命の重みづけ
参考書籍
備考
第1章から第6章については、こちらを参照
Discussion