読書記録「図解まるわかり AIのしくみ」<6~9章>
概要
書籍「図解まるわかり AIのしくみ」の読書記録である
第1章から第9章までのうち、第6章から第9章までをまとめる
第6章:さまざまなAIと実用化
動画認識
画像認識に強いCNN(畳み込みネットワーク)と、時系列情報の認識に強いRNN(再帰的ネットワーク)を組み合わせ、映像情報を認識するアプローチが登場
時間の概念を合わせることで、「状態が変化する」現象をAIが認識できる
ただし、データのかさ増しができないため、学習用の動画を収集することが難しい
AIのコミュニケーション
- ルールベース
事前にルールを設定しておく方式
ディープラーニングやDBを利用することで、高度なコミュニケーション機能を実現できる
- 統計ベース
データからパターンを学習し、適切な回答を出力する
文章生成
- Transformer
Attentionを活用した自然言語技術
軽量で効率的であるため、必要なマシンパワーが少なく、大規模なシステムを構築した上で、膨大なデータを同時に学習させることが可能である
賢く学ぶというよりは、「短時間で大量に学習して成績を上げる」タイプ
- GPT-3
指定されたコンテンツに対して、関連性の高い自然な文章やテキストを生成することに特化したAI
生成している文章の意味を理解しているのではなく、「とてつもなく空気が読める」イメージ
巨大なデータベースを使うため、Transformerの真価を発揮している
自然言語処理
- 人間が発する言葉
音が消えたり潰れたりしている
人間が理解するためには、脳内で音を推測・補完する必要がある
- 自然言語処理
統計的に人間が使う単語や文章を学習し、「自然な人間の言葉」を学んでいる
音声認識と組み合わせることで、聞き取れなかった音を推測・補完し、音声認識を成立させている
- 音声の文字起こし
音声認識と自然言語処理を使うことで、会議などの文字起こしや同時通訳を行える
実際の会話には、「えーっと」などの無意味な音や言葉の言い換えなどがあるため、難易度が飛躍的に高まる
言語によっては、実用レベルのものが登場している
複数情報を組み合わせた、データ分析
- シングルモーダルAI
1種類の情報を処理できるAI
- マルチモーダルAI
複数種類の情報を総合的に処理できるAI
- マルチモーダルAIによる影響
実社会では情報を分離することが困難であり、人間のような「五感」がないとタスクを実行できないことがある
マルチモーダルAIによって、人間に近い状況判断ができるようになり、利用できるテクノロジーの領域が拡大する
創造領域への進出
- 創造的なAI
AIの学習能力を高めることで、絵・音楽・小説などの創造的なタスクを行えるようになってきた
複数作品の要素を組み合わせ、GANなどで作品を模倣することで、今までになかった作品を作りだす
※既存作品の特徴を組み合わせた作品であるため、ゼロから新しく作りだしたとはいえない
- 創造的なAIによる影響
ビジネス領域へも影響を与えており、商品企画やマーケティングなどの手法を学び、AIが提案を行なっている
全てをAIに任せることは難しく、人間の判断が必要になる
致命的なミスはどのAIでも発生する可能性があるが、明確な正解を設定できない創造的タスクだとミスが顕著に現れる
身体的領域への進出
- 人間の動きを模倣
デジタル変換が可能な領域でのみ、AIは能力を発揮する
人間の動きを模造するロボットとAIを組み合わせることで、動作をAIが学習できる
※AIは身体を持たないため、ロボットなしで動作を学習することはできない
- 最適な動きを学ぶ
動物の動作やロボットならではの構造を利用することで、機械が人間以上の性能を発揮できる
機械独自の身体構造を用いる場合、生物の動作が適切とは限らない
仮想空間で強化学習を行うことで、ロボットの身体に合った適切な動きを学ぶ
強化学習:試行錯誤を繰り返す学習
→身体を伴うロボットは、AIのように何万回という試行が困難
仮想空間:現実世界に似た仮想の空間
クラウドAI
- クラウドAI
事前に必要なデータをクラウド上に用意しておき、そのクラウド上で動作するAI
- 利用者(顧客)のメリット
- ゼロからのAI開発は不要
- ある程度のデータは準備済みであるため、膨大なデータ収集は不要
- 提供側のメリット
- クラウド上でAIを利用するため、運用データを取得できる
- クラウド上でAIを利用するため、運用データを取得できる
- 利用者(顧客)のメリット
- プラットフォーム化するAI
クラウドAIが広く使われるようになると、AIを利用するサービスと関連するDBがクラウドAIに繋がる
それにより、巨大なプラットフォームへと変わっていく
利用者数やデータ規模が膨大になると、学習を積み重ね、より高性能なAIになっていく好循環が生まれる
プラットフォーム化したAIは大きな影響力を持ち、中心的な役割を果たす
プラットフォーム化したAIをカスタマイズすることで、容易に安価なAIを利用できるようになる
→コモディティ化を促進する
サーバーやネットワークに負荷がかかるため、AIの動作が不安定になる問題が発生している
エッジAI
クラウドAIとは異なり、端末側にAIを搭載して情報処理を行うアプローチ
データ処理の負担を分散する「分散コンピューティング」の一種
- エッジAIの強み
- ネットを経由しないため回線環境に依存せず、遅延のない高速処理が可能
- エッジ側でデータ処理が行える次世代ネットワークとの親和性が高く、5GとエッジAIを組み合わせるとほぼリアルタイムで情報処理が行える
- 負荷を分散するため、処理が安定する
- 情報をエッジ側だけで処理することで、高いセキュリティを維持
- ネットを経由しないため回線環境に依存せず、遅延のない高速処理が可能
- エッジAIの注目ポイント
- 巨大プラットフォームの影響を受けにくく、ハードウェアに強みを持つ企業が力を発揮できる
- 寡占状態であるクラウドAIのプラットフォーム化に対して、業界ごとに異なるAIが必要なエッジAIは、多様性と市場の拡張性がある
与えられたタスクの実行
- タスク実行の全体像
大別すると3つのプロセスに分けられる
- 認識プロセス
「情報が何であるか」を認識する
ディープラーニングや統計データの分析により、与えられた情報を適切に認識する
例)視覚映像やレーダーなどを使い、周辺環境を認識する
- 判断プロセス
認識プロセスの結果、何をすべきかを判断する
アルゴリズムや経験に基づいた機械学習などにより、判断基準の構築が行われる
例)「信号は青だが、前方に歩行者がいるので自動車を停止」と判断する
- 実行プロセス
判断プロセスの結果に基づいて、実行する
例)自動車を停止と判断したので、ブレーキをかける
ゲームAI
- ゲームAIの役割
- 広報として使用される
- AIがチェスや囲碁などのチャンピオンに勝つことで、一般層への認知を高める
- 新しい機械学習やAI理論の試験で使用
- 機械学習は学習させてみないと善し悪しがわからない
- ゲームの世界は、理想的な環境とデータで学習を進められるため、試験に丁度いい
- 広報として使用される
- 実社会での運用
不確定要素が多いなど、実社会でゲームAIを使用することは難しい
ただし、ゲームやシミュレーションを行なった後、実社会で運用されている
- 完全情報ゲーム
自他の手札や選択が全て明らかになっているゲームのこと
例)囲碁やチェス
「戦術予測」「盤面分析」などのデータ分析手法で、統計を使用して検討を行うAIが使われる
全ての可能性が明らかなため、探索で「最善の選択」を導出できように思われるが、囲碁や将棋などの序盤は選択肢が膨大なので探索しきれない
- 不完全情報ゲーム
手札が隠されるなど、不確定要素が存在するゲームのこと
例)麻雀やポーカー
実社会の活動も、不確定要素が存在するという点において、不完全情報ゲームといえる
強化学習や逆強化学習で、無数に存在する要素のうち注視する点を工夫して強みを発揮できるようになった
- ゲーム理論
複数人が何かしらの利益を得て勝利を目指す活動に対して有用な戦略に関する理論
人間の「利益を求める合理的な心理」を理論化して戦略に応用する
ゲーム理論を学習することで、AIが人間心理を理解できるようになる- ナッシュ均衡
関係者全員が自分の利益を最大化する選択をし、それ以外に選びようがない状態のこと - パレート最適
誰も犠牲にすることなく、関係者全体の利益を最大化できている状態 - 囚人のジレンマ
上記2つの概念は同時に達成できるのが理想だが、個人の利益を優先すると全体利益が下がるケースもある
- ナッシュ均衡
AIとの協働
- AIの作業を人間がサポートする
理想的な環境では人間以上の能力を発揮するAIでも、実社会の例外的な事象に対応できないことがある
その際に、人間が介入して問題を解決し、必要に応じてAIの再訓練などを行うことでAIの信頼性向上に努める - 人間の作業をAIがサポートする
今までのプログラムの延長線上であり、人間の判断などをAIが補助する
従来のプログラムとの違いは、「映像」「音声」「言語」などをAIが理解できる点
アシスタントAIが好例
第7章:他分野と交わり進化するAI
医療AI
- 診断支援AI
患者の症状や検査結果から推定される疾患や適切な治療方法を提案するAI
- 手術支援AI
人間がロボットのアームを操作するロボット手術に加えて、AIが手術を行う
目に見えない臓器の状態や超音波などを駆使してリアルタイムに分析を行い、情報面で執刀医の補助的作業を行うこともある
術後のリスクを正確に予測・処置の提案を行なったり、病院の手術リソースを把握した上で適切な病院に搬送するなど、手術前後でもAIが活躍している
- 医薬品開発
- 開発
- 薬品は無数の化合物の組み合わせで構成されているが、病気に効果のある組み合わせは極わずか
- AIのパターン分析によって、高確率で病気に効果のある化合物を提示することが可能になった
- 治験
- AIによるシミュレーションと適切な被験者の選定によって、治験期間を大幅に短縮できる
- 患者の体調変化をリアルタイムで確認し、薬の効果を正確に把握できる
- コスト
- 開発期間の短縮などによって開発コストを下げることができる
- 医薬品を安く購入できるようになると、期待されている
- 開発
- ゲノム解析
人間の遺伝子情報を解析するには、高性能なコンピューターでも十数時間かかっていたが、AIによって数十分程度で完了するようになった
がん細胞の早期発見と適切な治療が可能になり、特定の疾患にかかりやすい人に対して予防治療を行うことが可能になった
遺伝子解析の期間やコストが下がると、一般人が気軽に遺伝子解析を行え、オーダーメイドの薬を調合することも可能になる - 医療データベース
- 研究利用
医療用AIの研究開発には様々な医療データが必要であるが、医療データは取り扱いが難しい
匿名処理などを施したうえで、認定事業者の管理するDBで取り扱うなど、一般的な学習用DBに比べると厳重に管理している
こちらで管理されている医療用データは、医療分野の研究開発や患者の治療に使う場合のみ、大学・研究機関・企業に提供され、医療用AIの開発に活用される
プライバシーに配慮しつつ、DBの質や規模を向上させるための施策が世界中で検討されている - 臨床利用
臨床機関向けのDBには、カルテ情報だけでなく疾患の症例や治療記録・論文などが保管されている
判断の難しい疾患を特定したり、効果のある治療方法を探したり、診断・治療に直接的に活用される
診断支援AIの一種として、DBを利用する医師をAIがサポートする
- 研究利用
フィンテック
- 分析と取引の自動化
お金という数値パラメータのついた資産のみを扱う金融業界のデータ分析は、AIの得意ジャンル
数十年単位で蓄積された取引データを活用し、AIが市場変化を予測する
資産運用はある程度マニュアル的な運用が可能であるため、データ分析とルールベースのプログラムを組み合わせることで、取引そのものを自動化することも可能になった
- リスク評価
金融・保険業界のリスク評価は幅広い情報が必要になるため、用いられるAI技術も多岐にわたる- 自然言語処理でニュースに登場するキーワードを集める
- カメラを使用し、不審な動きを見抜く
- 病歴から未来の疾患を予測する etc...
問題発生後の原因追及や被害額の算出にも利用されており、これらの情報がリスク評価の精度を向上させている
- ロボアドバイザー
運用方針や取引内容の助言や問い合わせ等の窓口業務・保険審査や申請など、多岐にわたる業務をAIが行っている
顧客が最初に関わる相手がAIであることも、珍しくない
- 契約・取引・情報管理の効率化
顧客関連の情報管理をAIが活用することによって、効率化することができる- 顔・文字認識技術で本人認証を行い、数分で融資を受けられるサービスが登場
- AIを使うことで、取引や契約の不正検知を行う
- 人の顔や仕草から、本人ではない利用者の虚偽申告を見抜く etc...
ロボティクス
こちらでは、センサーなどを使用した認識技術やIoTなどの情報通信技術もロボティクスに含める
AIが知能であるならば、能力を発揮するには身体にあたるロボットが必要であり、ロボティクスとAIを組み合わせた技術は複数分野に跨る形で、横断的に研究されている
- 人型・歩行型ロボット
タスクを絞れば、人間かそれ以上の能力に達している
技術的なハードルは次々と超えているため、「できるかどうか」ではなく「お金になるか」という実用性や経済性の検討段階に入っている
- 産業ロボット
工場で活用されており、目的に合わせた形状・機能を持ち、人間以上の効率と精度でタスクをこなす
AI導入前と比べて、パラメーター調整が簡略化され、簡単なプログラミングで複雑なタスクをこなすことができるようになった。また、作業精度や効率も向上
- サービスとしてのロボット
掃除・警備・対話を任せられるコミュニティロボットが登場している
自動運転車
日本国内の自動運転車は、5つのレベルに分けられる
※レベル3までは一般車、レベル4以降は業務用のバスなどが想定されている
- レベル0
自動機構が一切備わっていない - レベル1
自動ブレーキや速度・ハンドル調整などの運転支援機構を持つ自動車 - レベル2
高速道路で手放し運転でき、運転におけるすべての責任を人間が負う
視線を外すことができないため、ハンズオフのレベルとも呼ぶ - レベル3
すべての運転操作をAIが行い、自動運転中の責任はシステム(メーカー)が負う
視線を外せるため、アイズオフのレベルとも呼ぶ
※運転交代の要求を受けたらすぐに運転を代わる必要があるため、居眠りなどはできない - レベル4
条件付きの完全自動運転ができ、ドライバーとの交代を必要としない
ただし、安全性が確認された範囲や特定の条件下でのみ、運転可能 - レベル5
条件なしの完全自動運転ができるため、ナビや口頭で指示した場所に自由に連れて行ってくれる
車以外の自動運転
- 無人機を支援するAI
飛行機・ドローン・船舶・潜水艇の自立操縦は当たり前になりつつある
撮影した画像などの分析をAIが行い、その場で分析した情報を提示できるようになった
→危険なエリアの調査や事故・災害の被害調査などに活用されている
- 軍事利用されるAI
積極的に軍事利用されており、自立型兵器の開発は技術的には十分可能な段階である
兵器による戦闘は、人間よりもAIの方が強いケースもある
ハードウェア
- ノイマン型コンピュータ
高い汎用性を持つが、性能面での限界が近づいている
- 脳型コンピュータ
脳の神経ネットワークを似せて作成された
神経と同じように「必要な神経回路」にのみ電気を通すため、省エネも大きなメリット
単純計算が苦手なので、従来型コンピュータと組みあわせるorタスクを絞る必要がある
- イジングマシン型量子コンピュータ
イジングマシンと呼ばれる量子コンピュータの中に、仮想実験環境(イジングモデル)を作る方式は商用化されている
量子の自然現象を利用するため、複雑で巨大な問題でも瞬時に最適解に近い答えを出せる
配送トラックの効率的な道順検索など、組み合わせ最適化問題が得意
- ゲート型量子コンピュータ
論理的な計算を行うゲートを使って計算回路を作り、複雑な問題を解く方式が、ゲート方式
論理ゲートを巧みに組み合わせることで高い汎用性を得られるが、開発と計算理論の構築が難航していた
イジング型とは異なり、機械学習などのAIアルゴリズムを実装できる
- AIアクセラレータ
AIの情報処理能力を向上させるコンピュータ
RPA(Robotics Process Automation)
RPAのコアとなる技術は、人間の作業を模倣する技術
RPAの技術は大きく3つのクラスに分かれている
- クラス1 シンプルなRPA
情報取得や入力など、定型業務の自動化を行う
従来のプログラムで実施できることだが、エンジニアが作っていたことがサービスなどを使用することで簡単に自動化システムを作れるようになった点が画期的
- クラス2 EPA(Enhanced Process Automation)
クラス1のRPAに、基本的なAI技術を加えたもの
自動化の各ステップに機械学習や画像認識などのAI技術が用いられているかどうかである
明確な基準が作りにくく人間の勘に任せていた確認作業も、自動化が可能
- クラス3 CA(Cognitive Automation)
人間による意思決定プロセスも自動化することにより、プロジェクト単位での自動化を可能にする
よくある「いつもの感覚」で行う業務であれば、AIによる自動化が可能になっていく
第8章:AIにまつわるさまざまな議論
人工知能の分類
- 意識の有無を問う
- 強いAI
- 人間と同等の意識や知能を持つAI
- 弱いAI
- 意識や知能があるように見えるだけのAI
- 強いAI
- タスクで考える
- 汎用AI
- 人間のように、なんでもできるAI
- 特化AI
- タスクの一部ができるAI
- 汎用AI
意識や知能 | 可能なタスク | 事例 | |
---|---|---|---|
人間 | ある | 非常に幅広い | N/A |
強いAI | ある | 人間と同等以上 ※厳密には問わない |
ドラえもんなど、創作物のみ 人間的な感情をもつAIに多い |
弱いAI | ない | 知的タスク全般 ※厳密には問わない |
既存のAIすべて |
汎用AI(AGI) | N/A ※問わない |
人間と同等以上 | SWのドロイド兵など、創作物のみ ※人間と同じ能力があるが、人間的な感情がない場合が多い |
特化AI | N/A ※問わない |
極めて限定的 | 既存AIのすべて |
AIの言語理解
AIの自然言語能力は人間とほとんど変わらないが、統計的な分析によって言葉を操っているので文章の意味や定義は把握していない
- チューリングテスト
自然言語処理能力を保持するAIが強いAIかを判断する方法
AIと人間が会話し、人間が相手をAIと見抜けるかでテストを行う
- 「理解」の壁
チューリングテストに合格しても、必ずしも人間と同等の知能があるとは言えない- 中国語の部屋
思考実験「中国語の部屋」と同じで、現在の自然言語処理AIは言語を理解する知能はない
- シンボルグラウンディング問題
概念を正しく理解するために必要な情報を実世界から取得できないと、本当の意味で言葉を理解できない問題
この問題を解決するためには、AIが実世界と関わる方法を見つけなければいけない
- 中国語の部屋
- 組み合わせ爆発
AIは複雑な状況もパターンを組み合わせることによって、対応できる
しかし、組み合わせが増えると組み合わせ数は爆発的に増加し、AIが判断不能の状態になることがある
組み合わせパターンを減らすために、想定する状況を絞り込み、思考の枠組み(フレーム)を作る方法で、さまざまな状況に対応できるようになる
AIの身体性
あらゆる状況で人間と同じかそれ以上の対応ができるAIを作る場合、意識や身体がAIに必要と考えられている
しかし、人間と同じような身体をAIが持つことは困難
- シミュレーション
擬似的な現実世界を仮想空間に作り出し、AIが身体性を学ぶ
- 人間の知覚情報
知覚情報をデジタルデータに置き換えることができれば、AIは身体が必要なくなる
この技術は、神経疾患の治療や義肢の開発にも応用可能
- メタ学習
意識を獲得するために、自らの思考や認知について考えるメタ的な思考能力が必要不可欠となる
AIが持つ偏見
機械学習は人間の価値観を多くの点で反映しており、これらによってAIのバイアス(偏見)が生まれる
例)茶色の猫ばかりで学習したAIは、白い猫を「猫ではない」と判断する
社会問題に起因するバイアスは、大本の社会問題を解決する必要がある
→理想的な社会をAIに教え込むことは可能だが、開発者の意図によって社会の価値観が歪められる恐れがある
人間が得る情報のコントロール
AI自体にバイアスが含まれていなかったとしても、人間がAIを使ってバイアスを助長するリスクがある
また、ユーザーではなく、プラットフォームや第三者によってバイアスが作られることもある
情報を正しく利用できるかどうかは、AIよりも人間に委ねられている
- フィルターバブル
ユーザー好みの偏ったコンテンツを表示することで、ユーザーの好みや考え方がさらに偏ること
フィルタリング機能の弊害
- エコーチェンバー現象
趣味嗜好が似た人同士をおすすめユーザーとしてつなげることで、同じ思想を持つ集団の中で特定の思想が強化されること
ブラックボックス化しているAIの考え方
ニューラルネットワークの判断根拠を、人間は知る術がない
そのため、「よくわからないけど、正しい答えがでる機械」としてAIを扱うことになる
ニューラルネットワークを分析するAIによって、答えの理由を知ることができる
説明可能AIは、AIの普及に欠かせない技術として、さまざまなアプローチが検討されている
AIの倫理
高度な判断を行う能力があり、膨大な情報を一手に処理できるAIは、場合によっては人間よりも信頼されている
そのため、倫理に影響を与える存在となった
倫理の難しい点は、価値観に正解がなく、統計的な多数派が正しいわけではないことである
答えのない問題に対して、AIに何をどう教えるべきかの議論を怠れば、AIは社会に悪影響を及ぼす存在となるかもしれない
- 責任を負えないAI
自ら起こした問題に対して、AIは責任を負えない
状況に応じて自律的かつ柔軟に判断を行うAIによって起きた問題の責任が、誰にあるのかを正確に特定することは難しい
最終的な責任を誰が負うかはルールを定める必要がある
- トロッコ問題
トロッコ問題:5人を見殺しにするか、5人を助けるために1人を殺すか、という状況判断に関する問題
人間の場合、自らの思想信条に沿って動き、自らが責任を負う
AIの場合、事前設定された優先順位に沿って動き、その設定が複製されて社会全体に波及する
AIが商品として提供される場合、お金を払ったユーザーやスポンサーが優先される設計になり、周囲への影響や被害が軽視される可能性がある
- AIの倫理に関するガイドライン
近年、世界中で議論されているAI利用における倫理指針の議論は下記
※ただし、AIが勝手に守ってくれるルールではないため、AIに関わるすべての人間が倫理指針を頭に入れ、倫理的な問題がないかを考え続ける必要がある- 社会の利益になること
- 公平・公正であること
- 社会に対する各種責任を果たすこと
- 個人情報やデータを適切に扱うこと
- 信頼性と安全性が確保されていること
- 人間を尊重すること
AIの独占とオープン化
- 避けられないAIの独占
AI技術がサービスや商品として提供される以上、重要な技術やデータは一部企業によって独占される恐れがある
- オープン化で広がる悪用の懸念
技術の悪用や誤って利用する個人や小さな組織が現れる
AIがウイルスとして悪用されると、防ぐことは困難になる
一方、個人の活動をAIが監視することで、AIの悪用を防ぐことも可能である
第9章:未来のAI
成長を続けるAI
使えば使うほど、データが増えれば増えるほど、AIの性能は向上する
人間がAIの性能や特性を理解することで、AIの能力を最大限発揮する手法が生み出される
応用範囲が広がることで、AIは新しい方向に成長できる
AIの展望
AIの成長について、専門家の間でも意見が割れている
- 楽観論
- シンギュラリティ仮説
- AIの成長に対して、楽観論の中で最たるもの
- AIが加速度的に成長して人間を超え、人間の成長も加速させて、人類とAIは共に次世代の知的生命に生まれ変わるとする考え方
- その他
- 汎用性の高いAI技術が無数に登場し、社会をより良く塗り替える
- AIのサポートで人間の生活水準が大きく向上する
- シンギュラリティ仮説
- 悲観論
- 万能性の否定
- 人間の代わりになんでもやってくれるような存在にはならない
- 生活様式が大きく変わるまでには至らない
- 人間に害を成す
- 人間の生活が悪い方向に変化する
- AIが人間を攻撃する・AIによる管理で自由が奪われる
- 「社会の監視」「仕事の代替」などによって社会問題が深刻化する
- 万能性の否定
人間の仕事のあり方
業務効率化が進む可能性は高いが、結果として雇用が増えるのか減るのかはわからない
AIによる社会変化が進むと、AIに関する最低限の知識や理解は必要不可欠となる
人間を再現する方法と実現性
最新のAI技術でも人間と同等の知能を獲得することは難しいと考えられている
- 全脳アーキテクチャ
脳の構造を再現する技術
コネクショニズムも、基本は知能のエッセンス部分をAIで再現するアプローチ - 全脳シミュレーション
細かな役割は考えず、脳をまるごと仮想空間に作るアプローチ
ブレインマシンインターフェース
人間の脳を再現したAIよりも、人間の脳が機械に近づくかもしれない
- ブレインマシンインターフェース(BMI)
マウスやキーボードの代わりに、脳のシグナルを直接受け取ってコンピュータを操作する技術
いくつかの動物実験には成功済みであり、人間に装着して使われている
指での操作が不要になるだけでなく、言語化の難しい抽象的な指示をAIが学習できるようになる
社会実装するには、数十年かかると予想されている
AIとVRとアバター
AIが人間に近づき、「人間と機械の境界」があいまいになりつつある
- アバター
自らの分身であり、エンタメやビジネスで利用されている
VR技術を使って、ユーザーの表情や仕草をアバターに反映し、実際に生きているような動きを見せられる
AIと人間が同じアバターを使うこともできる
→顧客の前にいるのは同じアバターだが、中身はAIから人間に入れ替われる - メタバース
総合的なVRサービス - アバターロボット
身体の不自由な人や遠くにいる人が、現場で普通の人と同じように作業ができる
AIは知的生命体なのか
SNSやアバターを通じて、人間とAIの区別がつかなくなる日が近づいている
人間と同等の知能がなくても、コミュニケーション特化型のAIが人間そっくりに振舞うことは可能
違和感を覚えた場合でも、多様性を重んじる社会では違和感も人間の個性として受け入れられいる可能性がある
また、「人間らしさ」は典型的な人間のバイアスなので、AIが「人間らしさのバイアス」を学び、人間らしい反応をするようになる
現時点のAIと人間の大きな違いは、「意味理解」「意識の有無」がある
参考書籍
備考
第1章から第5章については、こちらを参照
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