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ノーコード開発で業務改革!JA秋田しんせいの自動車運行日報デジタル化事例から学ぶDX実践ガイド

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JA秋田しんせいが、ノーコード開発ツールを使って公用車の運行日報をデジタル化しました。

約170台の車両管理を手書きからアプリ入力に切り替え、わずか2人の職員が半月で開発を完了。これにより、毎月半日かかっていた集計作業が不要になり、リアルタイムでの運行状況確認が可能になりました。

プログラミング知識がなくても業務改善できる「ノーコード開発」の実践例として、多くの組織に参考になる取り組みです。

https://www.agrinews.co.jp/ja/index/343064

深掘り

深掘りを解説

この事例の本質は、現場の課題を現場の人間が解決するという新しいDXの形を示していることです。

従来、業務システムの開発は外部のIT企業に依頼するのが一般的で、数百万円から数千万円のコストと数ヶ月の開発期間が必要でした。しかし、ノーコード開発により、現場の職員が直接アプリを作れるようになったことで、以下の変革が起きています。

1. 開発スピードの劇的な向上

  • 従来:要件定義→発注→開発→テスト(3〜6ヶ月)
  • ノーコード:職員2人で半月

2. コスト削減

  • 外部委託:数百万円〜
  • 内製:開発費用ゼロ(研修費用のみ)

3. 現場フィット率の向上

  • 実際に業務を行う人が開発するため、本当に必要な機能が実装される
  • 修正や改善も即座に対応可能

4. 副次的効果の創出
この事例では、単なる業務効率化を超えて以下の効果が生まれました。

  • コンプライアンス強化:アルコールチェックのリアルタイム確認
  • 透明性向上:運行状況の可視化
  • データ活用基盤の構築:走行距離や給油量の自動集計

深掘りを図解

従来の業務フロー

ノーコード開発による変革

用語解説

ノーコード開発
プログラミング言語を書かずに、視覚的な操作(ドラッグ&ドロップなど)でアプリケーションを開発する手法。代表的なツールに「kintone」「PowerApps」「AppSheet」などがあります。

ノーコード開発ツール
上記のノーコード開発を実現するためのソフトウェアプラットフォーム。画面設計、データベース設定、業務フローの設定などを、コードを書かずに行えます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)
デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセス、組織文化を変革し、競争優位性を確立すること。単なるIT化ではなく、「変革」がキーワードです。

内製化
外部に委託していた業務やシステム開発を、組織内部のリソースで行うこと。この事例では職員自身がアプリを開発しました。

コンプライアンス
法令順守。企業や組織が法律や規則、社会的規範を守って活動すること。

ペーパーレス化
紙の書類をデジタルデータに置き換えること。コスト削減、業務効率化、環境保護などのメリットがあります。

ルーツ・背景

ノーコード開発の概念は1990年代から存在していましたが、本格的に注目され始めたのは2010年代後半です。その背景には以下の社会的変化がありました。

1. IT人材不足の深刻化(2010年代〜)
経済産業省の調査では、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると予測されています。すべての業務システムをプロのエンジニアに依頼することが困難になってきました。

2. デジタル化の民主化(2015年〜)
クラウドコンピューティングの普及により、高度な技術が誰でも使えるようになりました。「市民開発者(Citizen Developer)」という概念が生まれ、非IT部門の社員がアプリを作る時代が到来しました。

3. アジャイル開発の浸透(2010年代〜)
小さく作って素早く改善するアジャイル開発の考え方が広まり、完璧なシステムを最初から作るのではなく、実用最小限の機能で始める文化が定着しました。

4. 新型コロナウイルスとDXの加速(2020年〜)
パンデミックにより、多くの組織が急速なデジタル化を迫られました。従来の開発手法では間に合わないため、ノーコード開発への注目が一気に高まりました。

日本における展開
日本では特に中小企業や地方組織でのIT化が遅れていました。JA秋田しんせいの事例は、農業協同組合というIT企業とは縁遠い組織でもDXを実現できることを示し、全国のJAや中小企業に大きな影響を与えています。

技術の仕組み

技術の仕組みを解説

ノーコード開発ツールは、以下のような仕組みで動いています。

1. ビジュアルインターフェース
料理のレシピを組み合わせるように、あらかじめ用意された「部品」を組み合わせてアプリを作ります。

  • 入力フォーム(テキスト、日付、数値など)
  • 計算機能(合計、平均など)
  • 表示機能(一覧表、グラフなど)

2. データベースの自動生成
入力した情報を保存する「データベース」が自動的に作られます。エクセルの表をイメージすると分かりやすいでしょう。

3. ワークフローエンジン
「運行日報が提出されたら、管理者にメール通知する」といった業務の流れを、フローチャートのように設定できます。

4. クラウドベースの運用
インターネット経由で利用できるため、サーバーの購入や設置が不要。スマートフォンやタブレットからもアクセスできます。

具体例:運行日報アプリの場合

  1. 入力画面:日付、運転者名、行き先、走行距離、給油量などの入力欄を配置
  2. 計算機能:走行距離の合計を自動計算
  3. 承認フロー:提出→上司承認のルートを設定
  4. 一覧表示:全車両の運行状況を一覧で確認
  5. 権限設定:総務課は全データ閲覧可能、一般職員は自分の入力分のみ

これらすべてが、プログラミングコードを書かずに、画面上の操作だけで実現できます。

技術の仕組みを図解

実務での役立ち方

ノーコード開発は、あらゆる部門・業種で活用できます。

総務部門

  • 稟議申請・承認システム
  • 備品管理・在庫管理
  • 社内問い合わせ対応
  • 社用車予約システム

営業部門

  • 顧客訪問記録・報告書
  • 案件進捗管理
  • 見積作成システム
  • 営業日報の自動集計

人事部門

  • 勤怠管理・休暇申請
  • 社員情報管理
  • 採用選考進捗管理
  • 研修受講管理

製造・物流部門

  • 品質検査記録
  • 設備点検チェックリスト
  • 在庫管理・入出庫管理
  • 配送状況追跡

中小企業・地方組織での活用メリット

  1. 予算が限られていても導入可能(月額数千円〜)
  2. 業務に詳しい現場の人がそのまま開発者になれる
  3. 小さく始めて段階的に拡大できる
  4. トライアル期間で試せるツールが多い

即効性のある活用法

  • 既存のエクセル業務をそのままアプリ化
  • 紙の申請書・報告書をデジタル化
  • 部門内の情報共有ツール作成

キャリアへの効果

ノーコード開発スキルを身につけることは、現代のビジネスパーソンに以下のキャリアメリットをもたらします。

1. 市場価値の向上

  • 「業務知識×IT実装力」を持つ人材は希少
  • 転職市場でも高く評価される
  • 年収アップにつながる可能性

2. 社内での評価向上

  • 課題解決能力を実証できる
  • DX推進の中心人物として認識される
  • 昇進・昇格のアピール材料になる

3. キャリアの選択肢拡大

  • IT部門への異動可能性
  • DX推進担当への抜擢
  • コンサルタントへの転身
  • 独立・起業の選択肢

4. 将来性
ガートナー社の予測では、2025年までに新規アプリケーションの70%がローコード/ノーコード技術で開発されるとされています。つまり、この分野のスキルは今後さらに重要になります。

5. 学習コストの低さ
プログラミング言語の習得には数ヶ月〜数年かかりますが、ノーコード開発は数日〜数週間で実用レベルに達します。投資対効果が非常に高いスキルです。

実際のキャリアパス例

  • 総務担当→社内システム開発担当→DX推進室長
  • 営業担当→業務改善担当→ITコンサルタント
  • 事務職→アプリ開発担当→プロダクトマネージャー

学習ステップ

学習ステップを解説

初心者がノーコード開発を習得し、実務で活用できるようになるまでのロードマップを紹介します。

ステップ1:基礎理解(1週間)

  • ノーコード開発の概念を理解する
  • 代表的なツール(kintone、PowerApps、AppSheet等)を調べる
  • 無料トライアルに登録してみる

ステップ2:チュートリアル実践(2週間)

  • 各ツールの公式チュートリアルを実施
  • サンプルアプリを動かしてみる
  • 基本操作(フォーム作成、データ登録、一覧表示)を習得

ステップ3:小さな問題解決(1ヶ月)

  • 自分の日常業務の小さな不便を見つける
  • 簡単なアプリを作ってみる(例:個人のタスク管理、経費精算)
  • 失敗を恐れず試行錯誤する

ステップ4:実務適用(2ヶ月)

  • チームの課題をアプリで解決する
  • 同僚にフィードバックをもらう
  • 改善を繰り返す

ステップ5:組織展開(3ヶ月〜)

  • 他部門への展開を提案
  • 社内勉強会を開催
  • ノーコード開発文化を醸成

学習のポイント

  1. 完璧を目指さず、まず動くものを作る
  2. 既存の紙やエクセル業務をそのままデジタル化するところから始める
  3. コミュニティやフォーラムを活用する
  4. 小さな成功体験を積み重ねる

おすすめの学習方法

  • 日本農業新聞の「ノーコード合宿」のような集中研修
  • オンライン学習プラットフォーム(Udemy、Schoo等)
  • YouTubeの解説動画
  • 各ツールベンダーの公式ドキュメント

学習ステップを図解

あとがき

JA秋田しんせいの取り組みは、「DXは大企業やIT企業だけのものではない」ことを証明しました。わずか2人の職員が半月で開発したアプリで組織全体の業務効率を大きく改善した事例は、全国の中小企業や地方組織に希望を与えています。

重要なのは、高度な技術や巨額の投資ではなく、「現場の課題を見つける目」と「解決しようとする意欲」です。ノーコード開発は、その意欲を形にする手段を提供してくれます。

あなたの職場にも、デジタル化することで楽になる業務があるはずです。まずは小さな一歩から始めてみませんか?日本農業新聞のような研修機会を活用するのもよいでしょう。今日から始められる業務改善、その第一歩を踏み出してみましょう。

オススメのリソース

ノーコードシフト プログラミングを使わない開発へ

ノーコード開発の全体像と可能性を解説した入門書。国内外の事例を豊富に紹介し、なぜ今ノーコードが注目されるのかを理解できます。DX推進担当者必読の一冊。

はじめてのkintone~現場のための業務ハック入門

日本で最も普及しているノーコードツールの一つ「kintone」の実践的な活用方法を解説。実際の業務アプリ開発の手順が詳しく書かれており、手を動かしながら学べます。

DXの思考法 日本経済復活への最強戦略

DXの本質を理解するための一冊。単なるIT化ではなく、デジタルを活用した事業変革とは何かを解説。経営層から現場まで、DXに関わる全ての人に推奨。

業務改善の問題地図 ~「で、どこから変える?」~進まない、続かない、だれトク改善ごっこ

ノーコード開発の前提となる「業務改善」の考え方を学べる本。現場の課題発見から解決までのプロセスを分かりやすく解説。アプリを作る前に読むべき一冊。

1週間でシステム開発の基礎が学べる本

システム開発の基本を平易に解説。ノーコード開発であっても、プロジェクト管理の基本は同じです。失敗しない開発の進め方を学べます。

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