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零れ落ちるすべてを拾うと言うか、欲深きことよ... ー ならば継続か離脱か、データの深淵に眠るChurnの徴を読み解くがいい

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タイトルの世界観だけ間違っていますが、中身は真面目に書いていますのでご安心ください。

「最近、弊社サービスの利用者が減ってる気がする…」
新規顧客の獲得に力を入れる企業は多いですが、実は既存顧客が離れていく理由を知ることこそ、ビジネスを安定して成長させるカギです。
そこで登場するのが Churn(離脱)解析。Churnは離脱という意味です。つまり顧客離脱予測というとわかりやすいかもしれません。
「どんな人が、どんなタイミングで、なぜ離れてしまうのか?」をデータから読み解くことで、予防策を打ったり、サービス改善のヒントを得たりできます。

現代のビジネスにおいて重要なのが「顧客の維持」です。どれほど魅力的な商品やサービスを提供していても、顧客が離れていく理由を理解し、対策を講じなければ、持続的な成長は望めません。
そこで注目されているのが 「Churn解析(離脱解析)」。新しく顧客獲得するより顧客をつなぎ留めておく方がコストが少ない場合も多いです。
その意味でも顧客が離れる兆候をデータから読み解き、予測・防止するこの手法は、マーケティングの現場でますます重要性を増しています。

実際、多くの企業もこの技術に注目していて、これまでもゲーム会社や保険会社などの離脱予測について分析していきましたので、問題となる点や手法について紹介したいと思います。
本記事では、Churn解析の基本的な考え方から、機械学習を用いた予測モデルの選び方をわかりやすく解説していきます。

Churn解析の基本 ― 離脱の「なぜ?」をデータで読み解く

改めて、Churn(チャーン)とは、サービスや商品を使っていた顧客が離れてしまうことを指します。たとえば、サブスクリプションを解約したり、スマートフォンアプリの利用をやめたりするケースです。最近ではPOSなどデータ化されているので追跡をすることができるようになりました。

そもそも、なぜChurn解析が必要なの?

新規顧客を獲得するには、広告費や営業コストがかかります。一方、既存顧客を維持する方がコストも低く、持続的な売上にもつながりやすい。つまり、離脱を防ぐことは、ビジネスの効率化にも直結します。

Churn解析でわかること

Churn解析では、主に以下のようなことを明らかにします:

  • 誰が , いつ 離脱しそうか?(予測)
  • なぜ 離脱したのか?(要因分析)
  • どうすれば 防げるか?(対策)

これらを明らかにするために、顧客の行動履歴や属性データなどを使って分析を行います。
「なぜ」についてもアンケート調査など行われています(遠藤,三上, 2020)。
「どうすれば」は業務・会社・サービスで性質が異なると思われます。
「だれが」「いつ」は特に機械学習やデータ分析で分析しやすいので多くの研究があります。

代表的な指標

Churn解析では、以下のような指標がよく使われます:

  • Churn Rate(離脱率):一定期間内に離脱した顧客の割合
  • Retention Rate(継続率):逆に、サービスを継続している顧客の割合
  • LTV(顧客生涯価値):1人の顧客が生涯でどれだけの利益をもたらすか

今回は特に離脱率について分析する手法を紹介します。

個別の離脱を予測する:ミクロな視点からの機械学習を使ったChurn予測

Churn解析の中でも、特に注目されているのが機械学習による離脱予測です。過去の顧客データをもとに、「この人、そろそろ離れそう…」という兆候をモデルが見つけてくれるんです。

ここでは、代表的な機械学習手法をいくつか紹介しながら、それぞれの特徴や使いどころをざっくり解説していきます。

機械学習を使った予測では、離脱するかしないかの2値分類として扱うことが一般的のようです。2値分類となれば、使う手法はたくさんあります。ロジスティック回帰・SVM・ランダムフォレスト・勾配ブースティング法などあります。

下にそれぞれの使いどころについてまとめたのでご覧ください。


ロジスティック回帰(Logistic Regression)

特徴: シンプルで解釈しやすい
使いどころ: 離脱する/しないの2値分類に強い
メリット: どの要因が離脱に影響しているかが明確にわかる
デメリット: 複雑な関係性を捉えるのは苦手


決定木(Decision Tree)とランダムフォレスト(Random Forest)

特徴: データの分岐を使って予測する
使いどころ: 直感的な可視化ができるので、社内説明にも便利
メリット: 非線形な関係も捉えられる
デメリット: 過学習しやすい(特に単体の決定木)


勾配ブースティング(Gradient Boosting)系(例:XGBoost, LightGBM)

特徴: 高精度な予測が可能なアンサンブル学習
使いどころ: Kaggleなどのコンペでも人気の手法
メリット: 精度が高く、特徴量の重要度も出せる
デメリット: パラメータ調整がやや複雑


ニューラルネットワーク(Neural Networks)

特徴: 多層構造で複雑なパターンを学習
使いどころ: 大量のデータがある場合や、非構造化データ(テキスト、画像など)も扱いたいとき
メリット: 高度な予測が可能
デメリット: 解釈性が低く、ブラックボックスになりがち


SVM

特徴 過去データとの類似度(カーネル)を元に予測する
使いどころ 非線形な関係性があると考えられる場合(例:行動パターンが複雑)
メリット 高精度で特に境界がはっきりしている分類問題に強い。マージン最大化により汎化性能が高い
デメリット 異なる特徴量のカーネル設計で注意が必要。特徴量の重要度は計算できなく解釈性は低い。データが大量にありすぎるまたは特徴量が多すぎると計算コストが高くなる。


結局どの手法を選べばいいの?

「ケースバイケース」です。
データの量や質、予測の目的、社内のリソースなどによって最適な手法は変わります。まずはロジスティック回帰や決定木などのシンプルなモデルから始めて、徐々に高度な手法にステップアップするのがおすすめです。

私の場合は非線形も対応できて高精度な勾配ブースティングを使います。
重要度も後から計算できます。
ただし、どの手法も過学習は起こりうるので、トレーニングデータとテストデータにデータ分割して汎化性能をチェックしながら進めます。

入力は特徴量で出力は離脱の有無なので、機械学習の分類問題ととらえることができます。研究論文としては一般的な機械学習をあらかた試しているものが多いです(CHAJIA, NFAOUI, 2024)。

時系列予測で季節性を捉える ― マクロなタイミングを予測する

Churnは単なる「誰が離れるか」だけでなく、「いつ離れるか」も重要な視点です。たとえば、引っ越しシーズンの春先や、年度末のタイミングでサービスを解約する人が増えることがあります。また特別なイベントが影響して変動することも考えられます。
こうした季節性やトレンドを捉えるには、時系列予測の手法が役立ちます。


🔹 時系列予測とは?

時系列予測は、時間の流れに沿って変化するデータ(例:月ごとの離脱数)を分析し、未来の値を予測する手法です。Churn分析では、以下のような目的で使われます:

  • 離脱数の季節的な変動を把握する
  • キャンペーンや施策の効果を時系列で評価する
  • 離脱が増える時期を事前に予測して対策を打つ

🔹 よく使われる時系列モデル

以下は、代表的な時系列モデルです:

  • ARIMA(自己回帰和分移動平均モデル)
    • 時系列データのトレンドや周期性を捉えるのに強い
    • データが比較的安定している場合に有効
  • Prophet(Facebook開発)
    • トレンド・季節性・祝日などを自動で考慮してくれる
    • 少ないパラメータ調整で高精度な予測が可能
  • LSTM(長短期記憶)
    • ニューラルネットワークベースのモデル
    • 複雑な時系列パターンを学習できるが、解釈性は低め

Prophetについては別記事を書いているのでそちらも参照ください。

https://zenn.dev/headwaters/articles/77fdcfc479f031

https://zenn.dev/headwaters/articles/e28ceabd8f28b3

🔹 時系列予測の活用例

  • 月別のChurn率またはを予測して、離脱が増える前に施策を打つ
  • 季節ごとの傾向を分析して、ターゲットキャンペーンを設計
  • 新機能や価格改定の影響を時系列で評価

時系列予測は、単なる「誰が離れるか」だけでなく、「いつ離れるか」という時間軸の視点を加えることで、より戦略的なChurn対策が可能になります。

時系列予測の注意点は、データ期間が短いと、それなりの結果しか出ないということ。
また突発的で原因不明な外れ値があった場合、予測結果に影響を与えやすいので場合によっては対応が必要ということです。


以上、個別のChurn分析によるミクロな視点と時系列予測のマクロな視点から
手法について紹介しました。

次回はChurn分析の研究動向について紹介していきます。

参考文献

  • CHAJIA, Meryem; NFAOUI, El Habib. Customer Churn Prediction Approach Based on LLM Embeddings and Logistic Regression. Future Internet, 2024, 16.12: 453.
  • 遠藤雅伸; 三上浩司. 継続したゲームプレイからの離脱理由に関する調査分析 リプレイモチベーション喪失を防ぐ手掛かり. デジタルゲーム学研究, 2020, 13.2: 13-22.
ヘッドウォータース

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