Microsoft 365 Copilotの「セマンティックインデックス」を理解する
1. はじめに:Copilotの検索精度の高さの秘密
Microsoft 365 Copilot の導入/技術が進み、
「社内の~~~プロジェクトの関連資料を探して!」
「●●さんとやり取りしている件の進捗をまとめて!」
など、簡単な指示を行うだけで、組織内のOfficeファイルを広く的確に情報を探し出してくれるようになりました。私も使用していて「そんな内容も拾ってくれてるの!なんていい子!」と思わずナデナデしたくなるときがあります。

M365 Copilotのこの“必要とされている情報を的確に見つけ出す力”の裏には、セマンティックインデックス という「意味を理解して情報を整理する仕組み」が動いています。
本記事では、このセマンティックインデックスがどのようにCopilotを支えているのかを解説します。
2. 従来の検索との違い
従来の企業内検索は、とてもシンプルでした。
たとえば「見積書」と入力すれば、その文字列が含まれるファイルしかヒットしせず、検索は“文字の一致”にしか反応していませんでした。
一方、セマンティックインデックスはここが違います。
「見積もり書」や「Quotation」のように表現が違っても、 文脈的に同じ意味を持つ情報 を見つけることができます。
この“意味を理解する力”を支えているのが、自然言語処理の技術と、テキストを数値化して関連性を測る ベクトル表現(Embedding) です。
現在Microsoft 365 Copilotを使用している組織は、自動的にこのテナントレベルのインデックスを持つ ようになりました。組織側でインデックス作成を行うプロセスが必要ありません。

テキストを使用したデータポイント間類似性の例
3. Microsoft Graphとの関係
Copilotは、単体で社内データを検索しているわけではありません。
その背後では、Microsoft Graph という情報ネットワークが動いています。
Microsoft Graph は、メール、ファイル、チャット、予定など Microsoft 365 全体の情報を横断的に扱うためのAPI です。これによって、Copilotは「どんなデータが、どこにあるのか」を把握できます。

一方で、セマンティック インデックスはそのGraphデータをもとに、内容の「意味」や「関連性」を理解するための 知能層 として機能します。
つまり、
- Graph が データの位置と種類 を教え、
- セマンティックインデックス が 意味的なつながり を見つけ出す
この2つの組み合わせによって、Copilotは単なる「検索ツール」ではなく、「文脈を理解して答えるアシスタント」になっています。
4. どうやって動いているのか
インデックス生成の仕組み
- テナント単位で自動生成(手動設定不要)
- SharePoint / OneDrive / Outlook / Teams などの Microsoft 365 データを対象に、文書・メール本文をベクトル化して登録
- 意味マッピングにより、関連文書どうしを文脈的に関連付け
処理イメージ
更新タイミングと反映スピード
| 対象 | 更新頻度 |
|---|---|
| ユーザーのメールボックス(Outlookなど) | ほぼリアルタイム |
| SharePoint Online サイト | 毎日(1日ごと) |
Copilot の“最新情報への対応力”は、この自動更新サイクルに支えられています。
特に Outlook のリアルタイム反映は、自然な会話応答の裏側で大きな役割を果たしています。
セキュリティとデータ境界
自動更新と聞くとなんだか勝手に覗かれるイメージを持ち、セキュリティリスクを心配する方もいると思うのですが、心配ありません。
セマンティック インデックスは Microsoft 365 のRBACとコンプライアンス構造に準拠しています。
“検索できる情報” = “自分にアクセス権がある情報”なので、他部門や機密サイトの内容が Copilot の回答に混ざることはありません。
また、インデックス化された情報は「検索・文脈補助」目的でのみ利用され、LLM が再学習したり Microsoft 外部に送信されることもありません。
処理全体の流れ(全体アーキテクチャ)
まとめ
セマンティックインデックスは、Microsoft 365 Copilotの頭脳を支える土台です。
ただのキーワード検索ではなく、「意味」を理解して情報をつなげることで、人が探したい文脈に沿った答えを導き出してくれます。
そして、Microsoft Graph と組み合わせることで、社内のファイル・メール・チャットといった膨大な情報を “ひとつの知識ネットワーク”として整理し、賢く引き出せる環境 を実現しています。
この1~2年で急速に発展しているCopilot界隈ですが、日々の業務でも「これ、Copilotに聞いたら一瞬だったな」と思う場面が増えています。Microsoftだからこそできる技術だと思いますし、同時にまだまだ伸びしろも感じています。これからも成長を楽しみにしながら、Copilotを活用していきたいです。
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