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ノーべル経済学賞でも見たら新しい知見が得られるんじゃないのか、と思った話

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最近、アルゴリズムとかゲーム理論とかの情報収集をしているとWikipediaで「ノーべル経済学賞受賞者●●の提唱した概念」という言葉を見かけることが多いを感じています。

経済学、私からすると全くの未知の分野でして、今回はノーべル経済学賞の成果をChatGPTにまとめてもらいました。

感想としては、数学とか統計のアルゴリズムや評価方法に対する実運用課題を解決して受賞!というのが結構あって面白いなと思いました。

私が面白いな思った一例

対照性が確保できない場合の因果推論のお話です。

2021年のノーベル経済学賞受賞者のデービッド・カードのノーベル賞研究のお話です。要点としては、政策や出来事が「どの地域に、いつ起きたか」という偶然性をそのまま実験装置に見立て、場所と時間の二重比較(Difference-in-Differences, DID)で因果関係を浮き彫りにした点にあります。たとえばニュージャージー州が最低賃金を引き上げた一方で隣のペンシルベニア州は据え置かれていたという状況では、まず各州で改定の前と後を比べて雇用がどう変わったかを時系列で測り、その「変化量」同士をさらに引き算します。こうすると景気循環など両州に共通する揺らぎは相殺され、残った差分を最低賃金改定の純粋な影響と解釈できるわけです。

どういうときに使えるアイデアかというと、例えば、ある部活動で高地トレーニングの効果を検証したいとします。まず思いつくのは、県大会に出場した複数校から「1週間の高地合宿日数」と「50 m走タイム」を集め、単純回帰で〈高地合宿が多い学校ほど選手は速いか〉という相関を測る方法ですが、強豪校ほど部員層や予算が厚いといった要因が入り込み、高地トレーニング自体の効果かどうか判別できません。

ちょうどその最中に平地のメイン競技場が老朽化工事で数か月使用不能になり、教育委員会が「空いている高原トレーニング施設に日程の合う学校だけを順番に振り替える」という突発的な割り当てを行ったとしましょう。誰が当たるかは工事日程と既存の練習計画の偶然で決まり、実力や資金力とは無関係です。

ここでデービッド・カード流を導入します。この外生的ショックを利用して、高原に振り替えられた学校(処置群)と残った学校(対照群)の合宿前後の50 m走タイムの伸びを差の差(DID)で比較すれば、季節や練習疲れなど共通のゆらぎを自動的に打ち消しつつ「高地トレがタイムを何秒縮めたか」という純粋な因果効果を示すエビデンスが得られます。工事前には両グループのタイムが同じような推移(平行トレンド)を示していることが確認できるため、振り替えの後に生じたタイム差は純粋な高地トレの効果になります。

「〜の効果を検証したい」という動機がない場合であっても、目の前で突破的な事象が起きた時にランダムなサンプルをその突発的事象の対象範囲と設定可能であれば、因果推論に有効なデータが取れるのではないか?という示唆を与えてくれます。

ノーベル経済学賞の受賞者と業績

受賞者 主な業績 簡単な説明 参考リンク
1969 R. Frisch / J. Tinbergen 動学的マクロモデルの礎 ① 景気の波を数学で説明する土台を作った。
② たとえば「景気が良いと物価が上がる理由」を方程式で示し、将来の景気を予測できるようにした。
公式
1970 P. Samuelson 経済学の体系的数学化 ① 経済を数式で表し分析を精密にした。
② 数学の「y=mx+b」に当たる公式を経済に導入し、グラフで因果関係を一目で示せるようにした。
公式
1971 S. Kuznets 経済成長の実証分析 ① 統計で成長と所得分配の関係を示した。
② 国勢調査のような大量データを使い「豊かになると格差はどう変わる?」を数字で答えた。
公式
1972 J. Hicks / K. Arrow 一般均衡・厚生理論 ① 経済全体のバランスと幸せの条件を解明。
② 「パンの値段を上げると他の商品は?」といった連鎖を同時に計算し、みんなの満足度を測る物差しを提案した。
公式
1973 W. Leontief 投入産出分析の確立 ① 産業間のつながりを表で可視化。
② スマホを作るのに何トンの鉄・何キロのプラが要るかを行列で一発計算できるようにした。
公式
1974 G. Myrdal / F. Hayek 貨幣と景気変動 ① お金の動きと景気の波を理論化。
② 「お札を刷りすぎるとインフレになる」など教科書の定番をモデルで証明。
公式
1975 L. Kantorovich / T. Koopmans 資源配分の最適化 ① 限られた資源を無駄なく使う方法を示した。
② パズルのように「木材100本で机を最大何脚?」を数式で解き、工場の効率を劇的に上げた。
公式
1976 M. Friedman 消費理論とマネタリズム ① お金の量が景気にどう効くかを証明。
② 「水道の蛇口=中央銀行」と見立て、流量(通貨量)を調整しないと景気が暴れると説明した。
公式
1977 B. Ohlin / J. Meade 国際貿易・資本移動理論 ① 国同士の取引やお金の流れの仕組みを説明。
② 日本が車を輸出し米国が大豆を輸出する「比較優位」の理由をより深く数式化した。
公式
1978 H. Simon 限定合理性と意思決定 ① 人は完璧でなく“十分満足”で決めると示した。
② テストで満点より「80点でOK」と妥協する心理を経済モデルに組み込んだ。
公式
1979 T. Schultz / A. Lewis 途上国の成長と人的資本 ① 教育や農業投資が貧困脱却に重要。
② 稲作の品種改良や学校建設がGDPを押し上げる実例を提示した。
公式
1980 L. Klein 計量モデルで景気予測 ① 大量データで未来の景気を予測する手法。
② 天気予報のように「失業率○%になる確率」をコンピュータで計算した。
公式
1981 J. Tobin 金融市場と実体経済 ① 株価の動きが雇用や物価に影響。
② 株が下がると企業が投資を控え、結果としてバイト募集が減る連鎖を説明した。
公式
1982 G. Stigler 規制と産業構造 ① 規制は業界の利益で決まる場合も。
② 「タクシー台数制限は利用者のためでなく業者保護」という逆転の視点を示した。
公式
1983 G. Debreu 一般均衡理論の厳密化 ① 経済を数学で完全に記述。
② 「需要=供給」が同時に成立する条件を千本の方程式で証明し“経済の完成図”を描いた。
公式
1984 R. Stone 国民経済計算の整備 ① GDP等の統計基準を作成。
② 家計簿を国家規模に拡大し「日本のお金の出入り帳」を標準化した。
公式
1985 F. Modigliani ライフサイクル貯蓄理論 ① 人生で貯金と消費がどう変わるか。
② 若者はローン、中年は貯蓄、老人は取り崩す―という“お金の波”を描いた。
公式
1986 J. Buchanan 公共選択理論 ① 政治家も自己利益で動くと説明。
② 試験前の「票集めのばらまき政策」が起きる理由を経済学で解明した。
公式
1987 R. Solow 経済成長モデル ① 技術進歩が長期成長を生むと証明。
② スマホのような新技術が国の豊かさを何倍にもする仕組みを公式化した。
公式
1988 M. Allais 効率的資源配分理論 ① 競争市場で資源を無駄なく使える条件。
② フリーマーケットが上手く回るための「見えざる手」の仕組みを数式で説明。
公式
1989 T. Haavelmo 計量経済学の確率理論 ① 統計で経済モデルを正確化。
② サイコロの目のような偶然をモデルに組み込み「予測の誤差」を扱えるようにした。
公式
1990 H. Markowitz / M. Miller / W. Sharpe 現代ポートフォリオ理論 ① 投資は分散でリスクを減らせる。
② 株を1社だけでなく10社に分けると“もしもの損”が小さくなることを証明した。
公式
1991 R. Coase 取引コストと財産権 ① ルールづくりが経済効率を左右する。
② 例:高速道路が無料だと渋滞=時間ロス(コスト)が増える。料金を課す仕組み=ルールを整えると混雑が緩和され、みんなの損が減る。
公式
1992 G. Becker 経済学の応用拡大 ① 犯罪や家族も“損得”で説明できると証明。
② 例:万引きは「得〈盗んだ価値〉−損〈捕まる罰〉」で判断される、と経済学の計算式で示した。
公式
1993 R. Fogel / D. North 計量経済史 ① 歴史をデータで検証する方法を開拓。
② 例:鉄道が米国経済をどれだけ伸ばしたかを当時の統計で比較し、神話を数字で検証した。
公式
1994 J. Nash / J. Harsanyi / R. Selten 非協力ゲームの均衡 ① 駆け引きの“落ち着く先”を数学で示した。
② 例:2人が同時にカードを選ぶゲームで、お互いの作戦を読んだ末に行き着く“ナッシュ均衡”を計算できるようにした。
公式
1995 R. Lucas 合理的期待と政策効果 ① 人々が政策を予想すると効果が変わる。
② 例:増税が発表されると消費者は先に節約を始めるため、政府の狙いどおりに景気が動かないことを示した。
公式
1996 J. Mirrlees / W. Vickrey 情報の非対称性と誘因設計 ① オークションや税制で正しい情報を引き出す方法。
② 例:オークションで“高くても必要な人”が正直に最高額を提示するルールを設計し、社会全体の得を最大化する仕組みを提案。
公式
1997 R. Merton / M. Scholes デリバティブ価格理論 ① オプション取引の正しい値段を算出。
② 例:株を将来○円で買う権利はいくら?をブラック-ショールズ式で計算し、金融市場の“ものさし”を作った。
公式
1998 A. Sen 福祉・貧困の分析 ① 「貧困=お金の少なさ」だけじゃないと提唱。
② 例:教育や医療へのアクセスなど“できることの自由”が欠けると真の豊かさにならないと示した。
公式
1999 R. Mundell 最適通貨圏と国際政策 ① どの国同士が共通通貨に向くか理論化。
② 例:EUでユーロを導入するとき「経済構造が似ている国は一緒の通貨でもOK」と示す指針を提供。
公式
2000 J. Heckman / D. McFadden ミクロ計量経済学手法 ① 人や家庭の選択行動をデータで精密推定。
② 例:大学進学か就職かの選択をアンケートから統計処理し、政策の効果を数値で示せるようにした。
公式
2001 G. Akerlof / M. Spence / J. Stiglitz 情報の非対称性 ① 情報格差が市場を歪める仕組みを解明。
② 例:中古車市場で“欠陥車”が残りやすい「レモン市場」の現象をモデルで説明した。
公式
2002 D. Kahneman / V. Smith 行動・実験経済学 ① 心理と実験で経済理論を検証。
② 例:人は100円得より100円損を強く嫌う“損失回避”を実験で確認し、教科書の前提「人は完全に合理的」を修正。
公式
2003 R. Engle / C. Granger 時系列分析の革新 ① 経済データの“揺れ”や“長期関係”を測定。
② 例:株価の変動幅(ボラティリティ)が時間で変わる様子をARCHモデルで数値化し、リスク管理を高精度にした。
公式
2004 F. Kydland / E. Prescott 動学的不整合とRBC理論 ① 政策変更が信頼を壊す問題を指摘。
② 例:政府が「減税する」と言いながら後で増税すると企業の投資意欲が急減するとモデルで示した。
公式
2005 R. Aumann / T. Schelling 対立と協力のゲーム理論 ① 戦争回避や核抑止を戦略分析。
② 例:クラスの席替えで“みんなが満足する配置”も、互いの読み合いで決まるとシミュレーションした。
公式
2006 E. Phelps インフレと失業のトレードオフ ① 今の景気刺激が将来の物価上昇を招く。
② 例:バイト時給を急に上げると物価も上がり、のちに失業が増えるリスクがあるとモデル化。
公式
2007 L. Hurwicz / E. Maskin / R. Myerson メカニズムデザイン理論 ① 望ましい結果を逆算して制度設計。
② 例:ネットオークションで“高値落札+買い手も満足”を同時に実現するルールを数学で作った。
公式
2008 P. Krugman 新貿易理論と経済地理 ① 規模の経済で貿易と都市集中を説明。
② 例:ゲーム機工場が一国に集まる理由を「大量生産でコスト↓、物流も楽」とモデルで示した。
公式
2009 E. Ostrom / O. Williamson 経済ガバナンス ① 資源や企業をうまく管理するルールを解明。
② 例:村人が協力して森林を守る自主管理が、政府管理より成功するケースを実地調査で示した。
公式
2010 P. Diamond / D. Mortensen / C. Pissarides 労働市場サーチ理論 ① 求職と求人のすれ違いをモデル化。
② 例:求人票はあるのに失業が減らない“ミスマッチ”を方程式化し、就活サイトの改良指針を提供。
公式
2011 T. Sargent / C. Sims マクロ経済の因果分析 ① ショックが経済にどう波及するか解明。
② 例:金利を急に上げたら物価と失業が何か月後どう動くかをデータで“実験”し、政策判断に活用した。
公式
2012 A. Roth / L. Shapley 安定マッチングと市場設計 ① “誰も不満のない組合せ”を作る方法を実用化。
② 例:研修医を病院に配属するとき、本人も病院も納得する割り振りアルゴリズムを導入。
公式
2013 E. Fama / L. Hansen / R. Shiller 資産価格の実証研究 ① 市場は効率的だがバブルも起こる。
② 例:ITバブル時の株価高騰は“心理的な過熱”を示すと統計で立証し、投資の注意点を示唆。
公式
2014 J. Tirole 市場支配力と規制 ① 独占企業をどう規制するか理論化。
② 例:スマホキャリアが3社しかないと料金が高止まり。政府は接続料を下げさせることで競争を促す、と提言。
公式
2015 A. Deaton 消費・貧困・福祉分析 ① 家計調査で貧困と幸福をデータ化。
② 例:日々のお小遣い帳を世界規模で集計し「水と石けんへの投資が病気と貧困を減らす」と示した。
公式
2016 O. Hart / B. Holmström 契約理論 ① 報酬契約でやる気を引き出す仕組み。
② 例:プロ野球の出来高払い契約が「努力⇄報酬」を一致させる好例と証明した。
公式
2017 R. Thaler 行動経済学とナッジ ① 思い込みを利用し良い選択を後押し。
② 例:自動的に年金加入にして“やめたければ脱退”にすると多くの人が老後資金を確保できると提案。
公式
2018 W. Nordhaus / P. Romer 気候変動と内生的成長 ① CO₂と技術革新を成長モデルに統合。
② 例:炭素に価格を付ける“カーボンプライス”で経済と地球環境の両立を数式で示した。
公式
2019 A. Banerjee / E. Duflo / M. Kremer 開発経済の実験手法 ① 現場実験で効果的な貧困対策を発見。
② 例:ある学校にだけ無料給食を導入→成績と出席率を比較し、教育支援策の効果を科学的に検証。
公式
2020 P. Milgrom / R. Wilson オークション理論と設計 ① 公正で収益も高いオークション形式を発明。
② 例:携帯電話の電波を複数周波数まとめて競売できる仕組み(SMRA)で、国の財源確保と利用者サービス向上を両立。
公式
2021 D. Card / J. Angrist / G. Imbens 因果推論と労働実証 ① “自然実験”で政策効果を測定。
② 例:隣州だけ最低賃金を上げたケースを比較し「雇用は必ずしも減らない」と実証した。
公式
2022 B. Bernanke / D. Diamond / P. Dybvig 銀行と金融危機の研究 ① 銀行の不安定さが不況を深刻化。
② 例:取り付け騒ぎで預金が一気に引き出されると銀行が倒れ、企業もお金を借りられず景気が沈む仕組みを解明。
公式
2023 C. Goldin 女性労働史と賃金格差 ① 200年分のデータで男女格差の要因を分析。
② 例:子育て期に女性の賃金が下がり、その差が長く残る“母親ペナルティ”を歴史的に証明。
公式
2024 D. Acemoglu / S. Johnson / J. Robinson 制度と経済発展 ① 良い政治・経済制度が国を豊かにする。
② 例:選挙で政権交代が機能する民主国は、独裁国より投資が進み長期成長しやすいとデータで示した。
公式
ヘッドウォータース

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