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AIエージェント - ワークフロー型とエージェント型
AIエージェント設計:ワークフローとエージェントのパターン解説
要約
AIエージェントは「自ら考え、動く」次世代のAI構成です。本記事では、Anthropic社などが示す設計思想をもとに、LLM活用の2軸 ― ワークフロー型とエージェント型 ― を体系的に整理し、それぞれの特徴・利点・注意点をまとめました。
重要ポイント
- ワークフローは「定義された流れ」を自動化する構成
- エージェントは「目標をもとに自律的に判断・行動」する構成
- Anthropic社が提唱する観点では、拡張LLM・ツール連携・自己改善などが鍵
- オーケストレータ型・マルチエージェント構成が複雑タスクに有効
- 設計では「透明性・安全性・コスト管理」が重要課題
本文
1. 背景・概要
生成AIが進化する中で、「AIが単に答える存在」から「自ら行動してタスクを遂行する存在」へと進化しています。
この動きを支えるのが ワークフロー設計 と エージェント設計 の2つのアプローチです。
前者はタスクの流れを人間が設計し、LLMがそれに沿って実行します。
後者はAI自身が流れを設計・判断し、ツールや外部データを使って目標を達成します。
Anthropic社をはじめとする最新のAIエージェント研究では、これらを統合的に設計することが実用AIの鍵とされています。
2. 主要概念・仕組み
ワークフロー設計の5パターン
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プロンプト・チェーン(Prompt Chaining)
タスクを段階的に分割し、各ステップをLLMが順次実行。精度が高く、制御しやすい反面、遅延やコスト増のリスクあり。
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ルーティング(Routing)
入力を分類し、適切な処理ルートへ振り分ける方式。効率的だが、分類設計が複雑。
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並列化(Parallelization)
複数タスクを同時処理し、結果を統合。高速・多視点分析が可能だが、整合性維持が課題。
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オーケストレータ-ワーカー構成(Orchestrator-Workers)
中央のオーケストレータがサブタスクを動的に分配し、ワーカーが実行。柔軟だが設計・デバッグが難しい。
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評価者-最適化(Evaluator-Optimizer)
生成と評価をループしながら品質を改善。出力の洗練に有効だが、繰り返しによるコスト増がある。
エージェント設計の5パターン(Anthropic社の観点)
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プランニング/自己決定(Planning / Self-directed)
エージェント自身が目標から計画を立て、タスクを遂行。未知のタスクに強いが、誤判断リスクあり。
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ツール呼び出し(Tool-use)
検索・API・操作など外部ツールを実行可能に。実用性が高いが、安全性・監査設計が不可欠。
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マルチエージェント構成(Multi-Agent / Sub-Agents)
複数エージェントを分担・連携させてタスクを遂行。スケーラブルだが統合の難易度が高い。
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振り返り/改善ループ(Reflection / Self-Improvement)
エージェント自身が出力を評価し、戦略を改善。自律最適化が可能だが、モニタリング設計が必須。
3. 活用例・メリット
| 区分 | 代表パターン | 活用例 | 主なメリット |
|---|---|---|---|
| ワークフロー | プロンプト・チェーン | 翻訳→要約→報告書生成 | 明確な手順で精度を高めやすい |
| ワークフロー | オーケストレータ-ワーカー | ソフトウェア改修やリサーチ業務 | 複雑・動的タスクを分担処理 |
| エージェント | ツール呼び出し | Web検索+分析+報告生成 | 外部情報と統合した自律実行 |
| エージェント | マルチエージェント | 並行リサーチ+最終統合 | 視点多様化・高速化 |
| エージェント | 自己改善ループ | 長期運用での精度向上 | 自律最適化・継続学習が可能 |
実際にはこのパターンをもとにして、派生させた形でエージェントが構築されることも多い。
4. 課題・今後の展望
AIエージェントの実用化には、以下のような課題が残っています。 特にガバナンスやセキュリティについて調査し、今後記事にまとめていきたいと思います。
- 透明性の確保:エージェントがどのように判断・行動したかを追跡する設計が必要。
- 安全性と監査性:ツール呼び出し・外部操作にはガードレール設計が欠かせない。
- コストと性能のバランス:複数エージェントやループ構造は計算コスト(料金)が増加。
- ガバナンスと責任範囲:自律的に行動するAIの成果に対する責任所在が不明確。
Discussion