ホストオンリーネットワーク/内部ネットワークは実務で使われてるの?
こんにちは、HESの川添です。
前回はホストオンリーネットワークの仕組みやHyper-Vでの対応関係(=内部ネットワーク)などについて調べてまとめました。
その時にこれらってテスト環境としてぐらいしか実際使い道なくない?と純粋に思いました。
なので今回は「このホストオンリーネットワーク・内部ネットワークって実務で本当に使われているのか?」を調べてみました。
そもそも:なぜ疑問に思ったのか?
ホストオンリーネットワーク・内部ネットワークは「外に出られない」「ホストとしか通信できない」という制限があるため、 正直「これって本番環境では絶対使わないんじゃないか?」と思っていました。
でも調べていくと、その閉じた性質こそが武器になっている場面が多いことがわかってきました。
調べてわかった!実務での主な使用パターン
① 検証・開発環境(セキュリティ分離)
「とにかく外部とつながらない安心感がある」
一番多く見られたのは、社内の開発用VMや検証用サーバーでの利用でした。
具体的には以下のような構成:
[開発用仮想マシン] ←→ [ホストPC]
×インターネット
- 開発中のWebアプリやミドルウェアを社内で検証したい
- 誤って外部ネットワークに通信が出ると困る
- 開発者それぞれがローカルで安全にテストできる環境がほしい
こういったニーズに対して、ホストオンリーの閉じたネットワークがちょうどよい隔離空間になるとのことでした。
🔸事例 Qiita「Virtual Box のホストオンリーネットワークが設定できない…」
ホストオンリー環境でVM間・ホストとの通信を前提に構築する中で、アダプタが表示されずトラブル解決に至る事例。開発や検証用途で使用されている様子がうかがえる。
参照:
- Virtual Box のホストオンリーネットワークが設定できない...(参照:2025-07-07)
② 社内研修やハンズオン演習環境
「受講者が勝手に外部へ通信できない安全なネットワークが作れる」
社内教育や新人研修、社外向けの技術トレーニングで、VMを使って「模擬ネットワーク環境」を構築する際にもよく使われているようです。
- あらかじめ仮想マシン(Webサーバーやクライアント)を作成
- ホストオンリーで通信範囲を閉じることで、演習内容以外のアクセスを防止
🔸事例
「VirtualBox でホストOSとゲストOS間の通信ができるように、ホストオンリーアダプターの設定を行う方法をハンズオンで行う用に使われている。
参照:
- VirtualBox でホストOSとゲストOS間通信 ( ホストオンリーアダプター(参照:2025-07-07)
③ ホストとの直接通信が必要な操作・検証
「NATだとホストPCと直接通信できないことがある」
仮想マシンからホストPCの共有フォルダにアクセスしたり、ホスト側にログやデータを送るような構成を組もうとした際、NAT接続では通信がうまくできない場合があることがわかりました。
これは、NATが仮想マシン → 外部(インターネット)への一方向通信に強く、仮想マシン → ホストPCという通信には不向きな構成だからです。
ホストオンリーネットワークを使えば、VMとホストPCが同じ仮想ネットワーク内に置かれ、以下のような構成が実現できます:
この構成では、以下のような操作が可能になります:
- VMからホストPCのSamba共有フォルダにアクセス
- ホストPCで立てたローカルWebサーバーにVMからアクセス
- ホスト⇄VM間でpingやによる疎通確認
🔸事例
VirtualBoxやHyper-Vの活用記事では、「ホスト⇄VMで双方向通信できる環境が必要だったためホストオンリーネットワークを選んだ」という記述が多く見られました。
特に教材作成やローカルなファイル共有検証ではこの構成が使われているようです。
こうした背景から、「NATではホストPCに手が届かない」という制限を回避したいときに、ホストオンリーネットワークが有力な選択肢になると感じました。
参照:
- 仮想化を実現するソフトウェア(参照:2025-07-07)
④ 実務でも本番構成で使われる例:DBサーバなど
「外部に出す必要がないサーバこそ、閉じたネットワークに置くべき」
今回調べていく中で先輩社員から
「ホストオンリーは本番でも使うことあるだろwww」
と指摘されました。最初は半信半疑でしたが、実際の構成例を学ぶことでその意味がわかってきました。
たとえば、Webアプリケーションのシステムでは以下のような構成がよくあります:
[ユーザー] ⇄ [Webサーバ] ⇄ [DBサーバ]
この中で、DBサーバはユーザーと直接通信する必要はなく、Webサーバからの通信だけを受け付ければ良いという役割です。
そのため、DBサーバは「外に出る必要がない」「むしろ外とつながってはいけない」存在となり、あえて閉じたネットワーク(ホストオンリーや内部ネットワーク)に配置されることが多いです。
この構成にすることで:
- DBへの外部からの直接攻撃を防げる
- 誤ったルーティングやアクセスを遮断できる
といったメリットがあります。
🔸ポイント
閉じたネットワークは「検証用」だけでなく、本番環境において守るべきリソースを外部から遮断するためのセキュリティ構成として使われているケースがあることを学びました。
使われる理由まとめ
調べた中で、ホストオンリーネットワークが選ばれる背景には、以下のような現場的な理由があると感じました:
| 理由 | 意味すること |
|---|---|
| 外部と通信できない | セキュリティが高く、誤って外部に情報が漏れる心配がない |
| ホストPCとは通信できる | ファイル共有、ログ受け渡し、疎通確認など、開発や検証で便利 |
| NATではホストにアクセスしづらい | NATはインターネット向けで、ホストPCとの直接通信が苦手 |
| 本番でも“外に出すべきでない”用途がある | DBサーバや機密処理系サーバなど、閉じた環境が前提の構成にも活用される |
| 一時的な検証・実験にちょうどいい | 環境の準備が早く、ネットワークの影響を受けずにPoCや教材に最適 |
自分なりの学びと気づき
- 「実務では使わない構成かも」と思っていたけど、それは大きな誤解だった。
- ホストオンリーネットワークは、準備や検証用だけでなく、本番環境でも活用される場面があることを学んだ。
- 特に、DBサーバのように“外に出さないことが安全”な構成が求められる場面があるという視点は新鮮だった。
- また、「ホストPCとの通信が必要なときにNATでは対応できない」という点にも改めて気づけた。
- 今後、自分が開発や検証をするときにも「とりあえずNATにする」のではなく、通信相手やセキュリティ要件を意識してネットワークモードを選ぶことの重要性を学べた。
まとめ
ホストオンリーネットワークは、インターネットに出られない・他のPCとも通信できない、という意味では「閉じたネットワーク」です。
でもその閉じているという特徴が、開発・検証・教育はもちろん、本番の一部構成でもセキュリティ上の強みとして重宝されていることが分かりました。
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