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show status ospf neighbor

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show status ospf neighbor。
Yamahaのネットワーク機器で使えるコマンドだ。
ネットワークエンジニアとしてネットワークシステムを運用する仕事をしていたころ、数えきれないくらい このコマンドを打った。今でもソラで打てる。(まぁ最後の"neigh"以降はTab キーで補完してたけど。)
当時はAlaxalaやCisco、Appresiaなども扱ったが、とにかく このコマンド。Yamaha ルーター、RTX シリーズのコンソールにTera Termで接続して、ひたすら このコマンドを打った。show logやshow running-config以上に打った。

なんで そんなに打ったかというと、そのネットワークシステムのコアとなるルーターがYamaha RTXだったからだ。センターのVPNサーバー機として数台、拠点のVPNクライアント機として数百台。拠点の追加・廃止・変更が発生するたびにRTXを設定した。

show status ospf neighbor。日本語に直訳すると「OSPFの隣人の状態を見る」だ。
OSPFというのはルーティングプロトコルの一種で、Open Shortest Path Firstの略。これも日本語に直訳すると「最短経路を優先する」だ。
細かい話は割愛する(というか もうだいぶ忘れた・・・)が、L3 ネットワークのEnd to Endにおいて複数ある経路のうち、最短となる経路を自動で計算して選択するという便利な仕組みだ。
このとき、隣の機器同士で各々が持つ経路の情報を交換し合いながら、End to Endに至る経路のデータベースを作成する。つまり「隣同士がちゃんと繋がっていて経路を交換できている状態」が とても大切なのだ。

もちろん機器や経路は冗長化してあるので、一組の隣同士が繋がっていなくても通信が途切れることはない。しかし、基本的にはネットワーク全体として健全な状態を保っておく必要があるため、なにか設定変更をするたびに隣同士の接続状態をひとつひとつ確認するというわけだ。

なにが言いたいかというと、システムの変更作業においては とにかく状態確認が大切だということだ。
それも変更前と変更後、それぞれで状態を確認すること。変更後に上手く動いていれば問題ない、ではないのだ。「変更前と変更後で状態に差分がないか」、あるいは「想定した通りの差分が発生しているか」だ。
変更後の状態が正しいかどうか。その確からしさは、基本的には変更する直前の状態を知っておかないと分からない。変更作業によって変わったのか、それとも変更作業の前から なんらかの影響で既に変わっていたのか、区別がつかない。

そのため必ず、変更前にshow status ospf neighbor、変更後にshow status ospf neighbor。手順の中で所作として これを徹底していた。まぁ、show status ospf neighborだけで すべての問題を区別できるわけではないし、他にもshow logやらshow ip routeやら打つのだが、特に印象に残っているのがshow status ospf neighborというだけだ。

ただし、僕が運用していたネットワークシステムにおける構成や設計、設定作業は ほぼ定型化されていたので、基本的に問題が生じることはない。いくらshow status ospf neighborを打とうが問題が露見することは ほとんどない。要は空振りみたいなものだ。
それでも、律儀に毎回 必ずshow status ospf neighborを打ち続けることができるか。コマンドの実行結果を毎回 確認し続けることができるか。(見る、ではない。確認する、だ。見た上で判断すること。)
感覚としては おまじないに近い。ただ、その おまじないが いざというときに役に立つ。

この おまじないも長すぎると、人間、続けることができない。単純に疲れて集中力が途切れるからだ。
また、おまじないを打つ意味を深く考えて、意味がない行為であれば省いた方がいい。意味がない行為をすることは形骸化の原点だ。
長すぎる おまじないは おまじないではなく、呪文の詠唱になってしまう。
漫画・BLEACHにおける破道の詠唱も、毎回あの長い台詞を唱えていたら戦闘が成立しないし読者も飽きてしまう。だから詠唱破棄してスピード感を持たせるのだ。破道の九十『黒棺』!(ちょっとマニアックか)

最後にまとめよう。
・システム変更作業では、必ず変更前後の状態を取得する
・運用における状態取得では「意味を考えて」作業を設計・実施する。形骸化させない
・長すぎる手順や意味のない手順は逆に事故の元。実行・確認を含めて自動化しよう
・人間が見て考えて安全かどうか判断できるポイントを設ける。Point of no returnを見極めよ

なんだかレガシーな大手SIerの品質教育資料みたいな まとめになってしまった。日立グループ出身だから仕方ない。
ただ、その大手企業では その教育自体が形骸化してしまっている傾向があり、非常にもったいないと感じる。おもしろくて分かりやすく、多くの人に興味を持ってもらえるように教育する文化が必要だと思う。

ただ日立グループの品質管理も、それがいくら形骸化しようが、根っこにあるのは始祖・小平浪平氏の品質に対する熱いマインドだと考えている。
「基本と正道」であったり「損得より善悪」であったり。
グループを去っても、そのマインドは自分の中に残しておきたいと思っている。
show status ospf neighbor。

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