tsconfig.jsonのtarget
まとめ
概要
TypeScript はトランスパイルされ JavaScript に変換されます。target
の値を設定することで、どのバージョンの JavaScript に変換するかを指定できます。例えば利用者が古いバージョンのブラウザを使っている場合は、古いバージョンのブラウザで実行可能な JavaScript を指定します。
Next.js
create next-app
で作成した Next.js プロジェクトには target
が記載されていません。よって、デフォルト値である ES3 が指定されていると考えられます。Next.js では Babel/SWC が TypeScript からの JavaScript へトランスパイルします。Next.js が公式でサポートしているブラウザはこちらのとおりです。モダンブラウザのみ Babel/SWC がサポートしていると考えられます。Next.js の単体での利用の観点では target
の設定は不要です。
Next.js とは関係なく、外部のパッケージを利用する際にず target
の値によって動作しないケースがあります(例:Drizzle)。利用するパッケージを鑑みて適切に設定するのが良いです。1 つの指標として対象とする Node のバージョンを確認し、TypeScript が推奨している target
の値を指定するのが良いでしょう。
{
"compilerOptions": {
"target": "ES2022",
},
}
補足
公式の説明はこちらです。
以下が作業リポジトリです。
この記事の内容
この記事では target
の値を指定し動作を確認します。Node.js & TypeScript のプロジェクトと Next.js のプロジェクトで動作確認を行います。
Node.js & TypeScriptのプロジェクトで動作確認
TypeScript の簡易プロジェクトを作成し、アロー関数をサポートしている es2015
と、サポートしていない es5
を target
で指定した場合のトランスパイルの違いについて確認します。
例えば、"target": "es2015"
を指定した場合、ES2015 はアロー関数 () => {}
が使えるためトランスパイルされた結果もアロー関数の記述はそのまま残ります。ES2015 より以前の ES5 ではアロー関数はサポートされていないためアロー関数 () => {}
は ES5 でも動作できる function() {}
に変換されます。
target
が es5
の場合
ES5 ではアロー関数はサポートされていません。TypeScript で記述されたアロー関数 () => {}
は ES5 でも動作できる function() {}
に変換されます。
TypeScript の簡易プロジェクトを作成し動作確認をします。
まず、package.json
を作成します。
$ mkdir -p tsconfig-target
$ cd tsconfig-target
$ pnpm init
下記で package.json
を上書きします。ポイントは scripts
に 3 つのスクリプトを追加しています。typecheck
で型をチェックし、dev
でローカルで動作確認、build でトランスパイルします。
{
"name": "tsconfig-sample",
"version": "1.0.0",
"description": "",
"main": "index.ts",
"scripts": {
"typecheck": "tsc --noEmit",
"dev": "ts-node index.ts",
"timecheck": "tsc --noEmit --extendedDiagnostics",
"build": "tsc"
},
"keywords": [],
"author": "",
"license": "ISC"
}
TypeScript をインストールします。
$ pnpm install -D typescript ts-node
tsconfig.json
を作成します。
$ npx tsc --init
tsconfig.json
を作成します。target
は es2015
を指定しています。
{
"compilerOptions": {
"target": "es5",
"module": "commonjs",
"sourceMap": true,
"outDir": "./dist",
"strict": true,
"skipLibCheck": true,
"forceConsistentCasingInFileNames": true,
},
"include": ["**/*.ts"],
"exclude": ["node_modules", "dist"]
}
git を初期化します。
$ git init
.gitignore
を作成します。
$ touch .gitignore
git の管理対象外にするファイルを追加します。
node_modules
アロー関数を含む簡易コードを作成します。
$ touch index.ts
const message = () => {
console.log("hello world");
}
message();
型をチェックします。特に問題ありません。
$ pnpm run typecheck
ローカルで動作確認します。
$ pnpm run dev
hello world
トランスパイルすると、index.js
が作成されます。
$ pnpm run build
トランスパイルした結果はこちらです。
$ tree dist
dist
├── index.js
└── index.js.map
トランスパイルされた index.js
を確認します。ES5 はアロー関数 () => {}
をサポートしていません。TypeScript で記述されたアロー関数 () => {}
は ES5 でも動作できる function() {}
に変換されます。
"use strict";
var message = function () {
console.log("hello world");
};
message();
//# sourceMappingURL=index.js.map
コミットします。
$ git add .
$ git commit -m "feat: es5を指定"
target
が es2015
の場合
ES2015 はアロー関数をサポートしています。target
が es2015
の場合、TypeScript で記述されたアロー関数 () => {}
はそのままトランスパイルされます。
{
"compilerOptions": {
- "target": "es5",
+ "target": "es2015",
"module": "commonjs",
"sourceMap": true,
"outDir": "./dist",
"strict": true,
"skipLibCheck": true,
"forceConsistentCasingInFileNames": true,
},
"include": ["**/*.ts"],
"exclude": ["node_modules", "dist"]
}
型をチェックします。特に問題ありません。
$ pnpm run typecheck
ローカルで動作確認します。
$ pnpm run dev
hello world
トランスパイルした結果を確認します。
$ pnpm run build
トランスパイルされた index.js
を確認します。es2015
はアロー関数をサポートしているため、index.js
はアロー関数のままです。
"use strict";
-const message = () => {
+var message = function () {
console.log("hello world");
};
message();
//# sourceMappingURL=index.js.map
コミットします。
$ git add .
$ git commit -m "feat: es2015を指定"
Next.jsのプロジェクトで動作確認
Next.js は、Babel/SWC を使っており、TypeScript からの JavaScript へのトランスパイルは Babel/SWC が実施します。Next.js が公式でサポートしているブラウザはこちらのとおりです。モダンブラウザのみ Babel/SWC がサポートしていると考えられます。
ここでは Next.js のプロジェクトにて、target
を指定せず動作するか確認します。
動作を作業するための Next.js プロジェクトを作成します。長いので、折り畳んでおきます。
新規プロジェクト作成と初期環境構築の手順詳細
プロジェクトを作成
create next-app@latest
でプロジェクトを作成します。
$ pnpm create next-app@latest next-tsconfig-target --typescript --eslint --import-alias "@/*" --src-dir --use-pnpm --tailwind --app
$ cd next-tsconfig-target
Peer Dependenciesの警告を解消
Peer dependenciesの警告が出ている場合は、pnpm install
を実行し、警告を解消します。
WARN Issues with peer dependencies found
.
├─┬ autoprefixer 10.0.1
│ └── ✕ unmet peer postcss@^8.1.0: found 8.0.0
├─┬ tailwindcss 3.3.0
│ ├── ✕ unmet peer postcss@^8.0.9: found 8.0.0
│ ├─┬ postcss-js 4.0.1
│ │ └── ✕ unmet peer postcss@^8.4.21: found 8.0.0
│ ├─┬ postcss-load-config 3.1.4
│ │ └── ✕ unmet peer postcss@>=8.0.9: found 8.0.0
│ └─┬ postcss-nested 6.0.0
│ └── ✕ unmet peer postcss@^8.2.14: found 8.0.0
└─┬ next 14.0.4
├── ✕ unmet peer react@^18.2.0: found 18.0.0
└── ✕ unmet peer react-dom@^18.2.0: found 18.0.0
以下を実行することで警告が解消されます。
$ pnpm i -D postcss@latest react@^18.2.0 react-dom@^18.2.0
不要な設定を削除し、プロジェクトを初期化します。
styles
CSSなどを管理するstylesディレクトリを作成します。globals.css
を移動します。
$ mkdir -p src/styles
$ mv src/app/globals.css src/styles/globals.css
globals.css
の内容を以下のように上書きします。
@tailwind base;
@tailwind components;
@tailwind utilities;
初期ページ
app/page.tsx
を上書きします。
import { type FC } from "react";
const Home: FC = () => {
return (
<div className="">
<div className="text-lg font-bold">Home</div>
<div>
<span className="text-blue-500">Hello</span>
<span className="text-red-500">World</span>
</div>
</div>
);
};
export default Home;
レイアウト
app/layout.tsx
を上書きします。
import "@/styles/globals.css";
import { type FC } from "react";
type RootLayoutProps = {
children: React.ReactNode;
};
export const metadata = {
title: "Sample",
description: "Generated by create next app",
};
const RootLayout: FC<RootLayoutProps> = (props) => {
return (
<html lang="ja">
<body className="">{props.children}</body>
</html>
);
};
export default RootLayout;
TailwindCSSの設定
TailwindCSSの設定(tailwind.config.ts
)を上書きします。
import type { Config } from 'tailwindcss'
const config: Config = {
content: [
'./src/pages/**/*.{js,ts,jsx,tsx,mdx}',
'./src/components/**/*.{js,ts,jsx,tsx,mdx}',
'./src/app/**/*.{js,ts,jsx,tsx,mdx}',
],
plugins: [],
}
export default config
スクリプトを追加
型チェックのスクリプトを追加します。
{
"name": "next-tsconfig-strict",
"version": "0.1.0",
"private": true,
"scripts": {
"dev": "next dev",
"build": "next build",
"start": "next start",
"lint": "next lint",
+ "typecheck": "tsc --noEmit",
+ "timecheck": "tsc --noEmit --extendedDiagnostics"
},
"dependencies": {
"next": "14.1.4"
},
"devDependencies": {
"@types/node": "^20",
"@types/react": "^18",
"@types/react-dom": "^18",
"autoprefixer": "^10.0.1",
"eslint": "^8",
"eslint-config-next": "14.1.4",
"postcss": "^8.4.37",
"react": "^18.2.0",
"react-dom": "^18.2.0",
"tailwindcss": "^3.3.0",
"typescript": "^5"
}
}
動作確認
ローカルで動作確認します。
$ pnpm run dev
コミットして作業結果を保存しておきます。
$ git add .
$ git commit -m "feat:新規にプロジェクトを作成し, 作業環境を構築"
以下が create-next-app@latest
で作成された tsconfig.json
です。
{
"compilerOptions": {
"lib": ["dom", "dom.iterable", "esnext"],
"allowJs": true,
"skipLibCheck": true,
"strict": true,
"noEmit": true,
"esModuleInterop": true,
"module": "esnext",
"moduleResolution": "bundler",
"resolveJsonModule": true,
"isolatedModules": true,
"jsx": "preserve",
"incremental": true,
"plugins": [
{
"name": "next"
}
],
"paths": {
"@/*": ["./src/*"]
}
},
"include": ["next-env.d.ts", "**/*.ts", "**/*.tsx", ".next/types/**/*.ts"],
"exclude": ["node_modules"]
}
型をチェックします。特に問題はありません。
$ pnpm run typecheck
開発環境で動作確認します。問題なく動作します。
$ pnpm run dev
ビルドします。特に問題はありません。
$ pnpm run build
この観点から、target
を指定せずに動作することが確認できました。
$ git add .
$ git commit -m "feat: targetを指定せずに動作することを確認"
Next.jsの設定考察
create next-app
で作成した Next.js プロジェクトには target
が記載されていません。よって、デフォルト値である ES3 が指定されていると考えられます。Next.js では、Babel/SWC が TypeScript からの JavaScript へのトランスパイルを実施します。Next.js が公式でサポートしているブラウザはこちらのとおりです。モダンブラウザのみ Babel/SWC がサポートしていると考えられます。Next.js の利用の観点では target
の設定は不要です。
Next.js とは関係なく、外部のパッケージを利用する際にず target
の値によって動作しないケースがあります(例:Drizzle)。利用するパッケージを鑑みて適切に設定するのが良いです。1 つの指標として対象とする Node のバージョンを確認し、TypeScript が推奨している target
の値を指定するのが良いでしょう。
{
"compilerOptions": {
"target": "ES2022",
},
}
さいごに
target
の値を指定し動作を確認しました。Node.js & TypeScript のプロジェクトと Next.js のプロジェクトで動作確認を行いました。Next.js は、Babel/SWC が TypeScript からの JavaScript へのトランスパイルを実施します。Next.js が公式でサポートしているブラウザはこちらのとおりです。モダンブラウザのみ Babel/SWC がサポートしていると考えられます。Next.js の利用の観点では target
の設定は不要です。
一方で、外部のパッケージを利用する際にず target
の値によって動作しないケースがあります。利用するパッケージを鑑みて適切に設定するのが良いです。1 つの指標として対象とする Node のバージョンを確認し、TypeScript が推奨している target
の値を指定するのが良いでしょう。
Discussion