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NFCの3大プロトコル完全解説:NFC-A、NFC-B、NFC-Fの特徴、技術詳細、そしてコストの違い

2024/10/14に公開

NFC(Near Field Communication)のプロトコルには、NFC-ANFC-B、およびNFC-Fの3つがあります。これらの違いは主に物理層の通信方式、使用される周波数、データの処理方法に基づいています。以下では、これら3つをわかりやすく、それぞれの特徴、使用例、技術背景を詳しく解説します。

1. NFC-A(Type A)

NFC-Aは、ISO/IEC 14443 Type Aの仕様に準拠しており、最も広く使用されているNFC技術の一つです。

特徴

  • 変調方式: 100% ASK(Amplitude Shift Keying)

    • 変調方式とは: デジタル信号を電波に変換して送信する方法のことです。ASK(振幅変調)は、信号の振幅(波の高さ)を変化させてデータを送信します。
    • 100% ASKとは: 信号の振幅を完全に変調させる方式で、強い信号変化を持ち、データの送受信が安定して行われます。
  • 符号化: ミラー符号化(Modified Miller Coding)を使用

    • 符号化とは: デジタルデータを信号として効率よく送信するために、一定のルールに従ってデータを変換することです。
    • ミラー符号化とは: 信号の変調がビット「1」の時にのみ行われる方式で、安定した通信を提供し、干渉を最小限に抑えます。具体的には、データビット「1」の時に信号が途中で変調し、「0」の場合は変化しないことでデータを伝送します。
  • 通信速度: 最大848 kbps(キロビット/秒)

  • 認証方式: UUID(ユニバーサルユニークID)による認証方式

    • UUIDによる認証方式とは: ユニークな識別子(UUID)を用いてNFCタグやデバイスを一意に認識する方式。特定のデバイスやタグを識別し、アクセス制御やセキュリティの基礎となります。

動作プロセス

  • 通信開始時にパッシブモード(電力供給をNFCリーダーから受ける)が使われることが多いです。カード自体にはバッテリーがないため、NFCリーダーが近づくと電磁場を通じてエネルギーが供給され、通信が始まります。
  • NFC-Aは、NFCリーダーとタグ(またはカード)が近接すると、電波によってデータ交換を行います。

使用例

  • MIFAREカード: 世界中の交通システムで広く使われている非接触型ICカード技術。例えば、香港のオクトパスカードやシンガポールのEZ-Linkカードが代表例。
  • アクセスコントロールシステム: 企業や施設の入退室管理システムでNFC-Aがよく使われます。

メリット

  • 広く標準化されており、多くのデバイスやカードが対応しています。
  • 簡便でスムーズな通信が可能。

デメリット

  • NFC-BやNFC-Fに比べて、セキュリティが低い場合があります。特に大規模な電子決済システムでは不適切な場合もあります。

2. NFC-B(Type B)

NFC-Bは、ISO/IEC 14443 Type Bの規格に基づき、NFC-Aとは異なる通信方式を持っています。セキュリティや通信の安定性が重視される用途で使用されます。

特徴

  • 変調方式: 10% ASK

    • 10% ASKとは: ASKの一種で、振幅の変化をわずか10%に抑えた方式です。微弱な信号で変調するため、ノイズ耐性があり、安定した通信を実現します。
  • 符号化: NRZ-L(Non-Return to Zero Level)方式を使用

    • NRZ-L方式とは: 0と1のデジタル信号を直接、振幅の高低で表現する符号化方式です。ビットの持つ論理レベルに応じて信号が変化し、効率的なデータ伝送を可能にします。
  • 通信速度: 最大848 kbps

  • 認証方式: 通常、より高度なセキュリティ認証方式を持っています。暗号化やセキュリティプロトコルが重視される用途に向いています。

動作プロセス

  • NFC-Bは、特にセキュリティ面で強化された通信プロトコルを持っており、エラー率が低く、高い信頼性を要求する環境に適しています。
  • 他のNFCプロトコルに比べて、微弱な変調(10% ASK)を使うことで、干渉が少なく、電波環境が悪い場所でも通信が安定している。

使用例

  • 銀行カード: NFC-Bはセキュリティ要件が高いため、銀行カードやクレジットカードで採用されていることが多いです。
  • 電子パスポート: NFC-Bは、世界中の電子パスポート(e-Passport)の主要な通信技術です。セキュリティが非常に重要なため、暗号化された情報が安全にやり取りされます。

メリット

  • 高度なセキュリティ: 暗号化やセキュリティプロトコルに対応し、特に金融サービスで優れている。
  • 信頼性の高い通信: 弱い信号でも安定して通信が可能。

デメリット

  • 認証処理が複雑であるため、NFC-Aに比べると導入コストやデバイスの対応が限られる。

3. NFC-F(Type F / FeliCa)

NFC-Fは、日本で開発されたFeliCa技術に基づいており、ISO/IEC 18092に準拠しています。日本国内では交通系ICカードや電子マネーで広く普及しています。

特徴

  • 変調方式: 100% ASK

  • 符号化: Manchester符号化

    • Manchester符号化とは: デジタルデータの0と1を、信号の中間で反転することで表現する符号化方式です。データ伝送が安定し、同期が容易に行えるため、信頼性の高い通信が可能です。
  • 通信速度: 212 kbpsまたは424 kbps(通常)

  • 認証方式: 高速な応答時間と、FeliCa独自の暗号化認証機能を持つ。

動作プロセス

  • NFC-F(FeliCa)は、リーダーとカードの間で非常に高速な応答時間を提供し、大量のデータ処理が必要な用途に適しています。NFC-Fはアクティブモード(カード自身がバッテリーを持って動作する)でもパッシブモードでも動作可能です。
  • 高速通信が可能であり、読み取り時間が非常に短いため、タッチアンドゴーの体験がユーザーにとって非常に快適です。

使用例

  • SuicaPASMOなどの交通系ICカード: 日本で広く利用され、駅やバスでの素早い支払いに使用されています。
  • 電子マネー: FeliCa技術は、EdyやWAONなどの日本国内の電子マネーサービスでも使われています。
  • 企業内決済システム: 高速なデータ処理とセキュリティを要求する決済システムに採用。

メリット

  • 高速通信: 他のNFC技術に比べて、通信速度が速く、スムーズな決済体験を提供。
  • 優れたセキュリティ: NFC-Bと同様、セキュリティが高く、特に日本国内では信頼されている。
  • 柔軟性: パッシブモードとアクティブモードの両方に対応。

デメリット

  • 主に日本国内で使われている技術であり、海外での互換性はNFC-AやNFC-Bに比べると限定的です。

コストの違い

  • NFC-A: 一般的に低コストで、多くのデバイスに対応しています。セキュリティが比較的低いため、簡単な認証やアクセス管理に向いています。
  • NFC-B: セキュリティ機能が強化されており、金融機関や電子パスポートなどで使用されますが、導入コストが高くなることが多いです。
  • NFC-F: 高速通信と強力なセキュリティを提供しますが、日本国内に限られることから、国際的な互換性はNFC-AやBに比べて限定的です。コストもやや高めで、専用のインフラが必要になる場合があります。

まとめ

NFC-A、NFC-B、NFC-Fにはそれぞれ異なる特長があり、使用される場面も異なります。

項目 NFC-A (Type A) NFC-B (Type B) NFC-F (Type F / FeliCa)
変調方式 100% ASK 10% ASK 100% ASK
符号化方式 ミラー符号化 NRZ-L 符号化 Manchester符号化
通信速度 最大 848 kbps 最大 848 kbps 212 kbps または 424 kbps
認証方式 UUID による認証 高度なセキュリティ認証方式 FeliCa 独自の暗号化認証方式
使用例 MIFAREカード、アクセスコントロール 銀行カード、電子パスポート Suica、PASMO、電子マネー(Edy、WAON)
メリット 広く普及、低コスト、簡便な通信 高度なセキュリティ、信頼性の高い通信 高速通信、優れたセキュリティ
デメリット セキュリティが比較的低い 認証処理が複雑、導入コストが高い 主に日本国内での利用、国際互換性が限定的
コスト 低コスト 導入コストは高め 高コスト(インフラ整備が必要な場合あり)
  • NFC-Aは、シンプルで低コスト、広く普及しているが、セキュリティは高くない。
  • NFC-Bは、金融サービスやパスポートのようにセキュリティが非常に重視される用途に使われる。
  • NFC-Fは、日本で開発された高速で安全な通信技術で、交通や電子マネーの分野で優れた性能を発揮。

それぞれの技術は、その特性に応じた適切な用途に使い分けられており、どの技術を選ぶかは利用するサービスの目的によって決まります。

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